TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

昼下りの青春〜日活ロマンポルノ外伝



 月刊「シナリオ」に連載されていたプロデューサーで脚本家の山田耕大氏のエッセイを一冊にまとめた本が25日に発刊された。1978年名古屋から上京し日活に入社し、劇場勤務で『人妻暴行致死事件』『桃尻娘』『高校大パニック』等の上映に関わるところから、終焉を迎えようとするロマンポルノの制作現場で青春を過ごした日々の奔走を、熱く、ほろ苦く語るなかに血の通った映画制作の喜びが見て取れて、実に面白い読み物となっている。

 石井隆ファンには、ヒロイン降板劇で知られる因縁の2作『火の蛾』と『ルージュ』の話が興味深い。 
企画段階での『火の蛾』のキャスティングが明かされたのは初めてで、それまで、ただ単に女優が脱ぎたくないという理由で流れた企画と思っていたものの(石井隆自身が聞かされてきたことでの発言による)、少し思惑の違う理由がそこに存在していたというのだ。

 『火の蛾』で決まったキャストは、土屋名美を関根恵子、若い愛人の平野信を古尾谷雅人、殺される名美の夫・土屋英樹には伊丹十三だったという。監督は池田敏春。関根恵子の名美を想像するとゾクゾクしてくる恰好のキャスティング(関根恵子の抜擢は『ラブレター』繋がりだろう)だが、この時、同時に高橋伴明監督が『「TATTOO[刺青]あり』の企画を持ち込んできた事が運のつきってことか。
 しかし、『火の蛾』が後に『死んでもいい』として成就したことで、石井隆監督がメジャーな舞台に駆け上がったことを鑑みてみれば、すべて運命のもとに動かされていた出来事だったと思えるのだが…どうだろう?

 『ルージュ』も不憫な作品だった。
 1981年に制作発表されたときの陽子(名美)役は辺見マリ。辺見マリの降板も何も彼女の我儘などではなく、別の起因による残念至極な思いがあったことが判明。そして、1984年に新藤恵美のキャスティングで陽の目をみることになるのだが、それはとても石井ワールドとは言えないものだった。
 原作の「その後のあなた」が傑作だったのに、なぜ、あんなにも唖然とさせられるラストシーンの改変になったのか。企画を立てた著者の前に立ちはだかった大きな敵の存在を知り、納得する裏話ではあるが、やはり不憫な話である。

 石井隆は後々リベンジのための苦難の道を歩んで行くことを考えると、何とも辛抱強い作家だったのだと思う次第である。


日活へ行こう
愛と哀しみの社員研修
劇場狂時代
素晴らしき劇場野郎
俺たちに明日はない
仁義なき青春
僕の村は日活撮影所だった 

「おんなの寝室 好きくらべ」~「赫い髪の女」
「泉大八の女子大生の金曜日」~「クライマックスレイプ 剥ぐ」
「むちむちネオン街 私たべごろ」
「MR.ジレンマン 色情狂い」~「看護婦日記 いたずらな指」
「東京エロス千夜一夜」
「暴行儀式」~「朝はダメよ!」
「スケバンマフィア 肉刑」
「女子大生の告白 赤い誘惑者」
「ハードスキャンダル 性の漂流者」
「クライマックス 犯される花嫁」
「快楽学園 禁じられた遊び」
「後から前から」
「団鬼六 OL縄奴隷」
「女子大生の基礎知識 ANO・ANO」
「ひと夏の体験 青い珊瑚礁」
「モア・セクシー 獣のようにもう一度」
「レイプウーマン 淫らな日曜日」
「制服体験トリオ わたし熟れごろ」
にっかつ撮影所企画営業部の旅~「獲物」
「正四面体」
「小さな娼婦」
「火の蛾」
「その後のあなた」
「たかが友だち」
「無題」
「肉奴隷 悲しき玩具」
「ワイセツ家族 母と娘」
「家族ゲーム」
「セクシードール 阿部定3世」
「セーラー服百合族」
「ブルーレイン大阪」
「ダブルベッド」
「愛獣 猟る」
「女教師は二度犯される」
「縄姉妹 奇妙な果実」
「不純な関係」
「白衣物語 淫す」
「団鬼六 修道女縄地獄」
「女子大生 恥かしゼミナール」
「ひと夏の出来ごころ」
「OL百合族19歳」
「ルージュ」


[エピローグ・追悼]
三浦 朗
斎藤 博
神代辰巳
佐治 乾
奥村幸士
海野義幸
池田敏春
加藤 彰
高田 純

    ◇

昼下りの青春~日活ロマンポルノ外伝/山田耕大
【シナリオ11月号別冊・シナリオ作家協会】
定価1,680円(税込)

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Comment

トウジロ says... "これは読まないと!"
これは知りませんでした。目を通さないといけませんね!ご紹介、ありがとうございました!
2013.10.27 10:03 | URL | #SFo5/nok [edit]
mickmac says... "Re: これは読まないと!"
> トウジロさん

これは絶対に目を通さないといけませんよ。
これまで、我々石井隆ファンの胸のうちでモヤモヤとしていた事案に光明が射した感じです。
また、最後に記されている池田敏春監督への追悼文には、涙さえ浮かぶ思いです。
2013.10.27 17:32 | URL | #- [edit]
トウジロ says... "確かに必読の書ですね"
mickmacさん、こんにちは
ようやく入手して読みましたが、確かにモヤモヤが晴れたというか、邪魔な堤に穴があいて水がきらきら流れたというか、とても有り難い本ですね。
それに人物描写が簡潔でありながら、ありありと目の前に浮かんでくるようで実にたくみで、それでいて柔らかい。それだけで映画を見ているような楽しい本だなあ。

ショックを受けて映画をやめる、とまでつぶやいた石井先生が、なにくそと自分自身の創る映像の力を信じて奮起していった。その原点がよく見えて、わたしたちのようなファンにはなるほど必読の書でありますねえ。
ご紹介、ありがとうございました!
2014.03.08 10:15 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: 確かに必読の書ですね"
>トウジロさん どーもです。

製作される作品の何十倍もの企画話ってものは、本来表にでないまま成就もされずに消えてゆくのですが、こうして当事者がときどき、その優しさにおいて、生まれてこない作品の想いを綴ってくれることは有り難いことですよね。

特に石井隆氏の話となると、我々のようなファンにはいくつもの心を曇らす出来事に事欠かさないのですから、これは本当に驚きの書籍でした。
池田敏春監督の件も(因縁?)ある意味石井隆氏と同じで、作品を見返す毎に何か心を締め付けられることになりそうです。

さて、トウジロさんの『石井世界の涙』興味深く読ませてもらいました。
トウジロさんらしい視点と解読が、作品鑑賞に新たな発見を来しました。
面白いですよね、石井ワールドは……。

ところで、『甘い鞭』のディレクターズ・カット版ですが、追加シーンをチャプター付けして欲しかったと思いませんか?(笑)
それと個人的趣味として、壇蜜さんは剃毛せずに出演して欲しかった(爆)
2014.03.08 13:17 | URL | #- [edit]
says... "管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.03.09 12:42 | | # [edit]
mickmac says... "Re: ところで"
>トウジロさん ご配慮ありがとうございます(笑)

名美の件、云われてみればなるほどと……見慣れた絵でした(笑)

『映画芸術』は見逃しています。帰りに書店に寄ってみようと思います。
アリガトウございました。
2014.03.09 13:02 | URL | #- [edit]

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