TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「悪魔を見た」*キム・ジウン

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I SAW THE DEVIL
監督:キム・ジウン
脚本:パク・フンジョン
出演:イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ、チョン・ググァン、チョン・ホジン、チェ・ムソン、キム・インソ

☆☆☆ 2010年/韓国/144分

    ◇

 連続殺人犯によって最愛の婚約者を残虐な殺され方をした国家情報院捜査官とサイコパスとの常軌を逸した復讐譚。


 怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬよう心せよ
 お前が深淵を覗き込む時 深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ
            ~フリードリヒ・ニーチェ「善悪の彼岸」より~


 冬の夜道でパンクをしてレッカー車を待つジュヨン(オ・サ)は、通りかかった男に襲われ連れ去られた。「助けて!お腹に子どもがいるの」と懇願するジュヨンだったが、無残にも叩き殺され遺体はバラバラに切断されて川辺に遺棄された。
 ジュヨンは引退した重犯罪刑事チャン班長(チョン・ググァン)の娘で、一ヶ月前に国家情報院捜査官のスヒョン(イ・ビョンホン)と婚約したばかりだった。ジュヨンが襲われる間際まで電話で話をしていたスヒョンは、彼女を救えなかったことで自分を呪い、犯人を追いつめることを誓って復讐の道へと踏み出す。

 スヒョンは休暇を申し出、後輩からGPS機能のカプセルを手に入れ、チャンから入手した捜査資料から捜査線上に浮かんだ4人の容疑者をひとりずつ締め上げていく。
 3人目の男ギョンチョル(チェ・ミンシク)の一人息子から、離れて暮らす彼のネグラを聞き出し、そこで大量の女性用下着や装飾品を発見する。作業場は血の生臭さが漂い、排水溝からジュヨンの婚約指輪を見つけたスヒョンは、ギョンチョルこそが犯人と確信する。
 塾のスクールバスの運転手をしているギョンチョルは、その間にも若い女性を惨殺。別の日、塾の生徒をビニールハウスに連れ込んでいたところにスヒョンが襲撃する。ギョンチョルを血まみれになるほどに叩きのめし、失神したギョンチョルにGPSのカプセルを呑み込ませたスヒョンはその場を立ち去った。
 いつでも自分を殺せたはずなのに、あまつさえ金まで与えられたギョンチョルは訳がわからないままも、逃亡しながら殺しをくりかえしていく。飛び込んだ町医者の看護婦を強姦しようとしたところに、ふたたびスヒョンが現れた。
 「これからが始まりだ。ますます残酷になるぞ」と耳打ちするスヒョンは、ギョンチョルの片方のアキレス腱を切り裂き姿を消した。

 ギョンチョルは友人の殺人鬼テジュ(チェ・ムソン)の元に身を寄せる。
 「惚れられたな。俺たちと同類だ。狩りをして、捕まえて、痛めつけて、また放して、その繰り返しを楽しんでいる」と云われたギョンチョルは、テジュの女セジョン(キム・インソ)をキッチンで犯しながら「ゲームだったら負けやしない」と、俄然精気を取り戻す。
 復讐なのかゲームなのか、ふたりの死闘は更なる展開へと向っていく……。

    ◇

 生かしてやる代わりに痛みを覚えろ
 最愛のひとの借りは10倍返しでは効かない
 100倍、1000倍返しで味あわせてやる  ってところであろうか……

 徹底したデスマッチは、追う側も追われる側もその執念たるもの、まさに“悪魔”に魅せられた人間たちの極悪を曝け出した拷問ゲーム。後味の悪さも『セブン』など可愛いものぞ。

 GPSを仕込まれたことを知ったギョンチョルは、チャン班長の顔を潰し、ジュヨンの妹を強姦して殺害し、警察に自首をしに来る。
 スヒョンはギョンチョルを連れ去り監禁。「お前が一番苦しんでいる時に殺してやる」と言い放つ。
 「これだけ遊べば充分だろう? 俺は苦痛など知らん。お前が俺から得るものなどない」と嘲笑うギョンチョル。

 苦痛も反省もないギョンチョルは、食欲も性欲も旺盛な鬼畜であっても人間の生々しい欲望を体現している。反対にその鬼畜を冷静に拷問するスヒョンは、冷徹なだけに人間として狂っているのであろう。箍(たが)を外し怪物と化した復讐者は、紙一重のところで我々の心のなかにも棲む悪魔なのだと肝に命ずることだ。
 罪悪感も反省もない鬼畜をいくら罰しようが何の効果にもならないし、ましてや痛みも知らない奴を復讐の名の下に痛めつけても失うものはこちら側の方が多い。

 さて、鬼畜を演じたチェ・ミンシクは『オールドボーイ』しか知らないのだが、この半端ない凄みと不気味さには圧倒される。
 当初企画段階では、本作の企画持ち込み者のチェ・ミンシクが復讐者スヒョンの役を演じるつもりだったらしいが、キム・ジウン監督の説得でこの稀代の悪役が誕生したと云う。

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