TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「いくつかの場面」沢田研二

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 別の場所で「いくつかの場面」の話が出て、思い出したかのように聴いている。

 沢田研二主演の伝説のドラマ『悪魔のようなあいつ』の主題歌で、大ヒットした「時の過ぎゆくままに」を収録した7枚目のオリジナル・アルバムとして1975年の年末にリリースされた。

 ヒット曲「時の過ぎゆくままに」以外、作家陣に及川恒平、加藤登紀子、西岡恭蔵、河島英五ら70年代フォークの世界観を持ち込んだアルバムは、ジャケットも内省的歌詞の雰囲気を充分に伝えている写真で素晴らしい。
 演奏は朋友井上堯之バンドの他に、ティン・パン・アレー(松任谷正隆、細野晴臣、鈴木茂、林立夫)とプレ・ゴダイゴのミッキー吉野グループといった面々を揃えている。

SIDE A
01. 時の過ぎゆくままに (作詞:阿久悠/作曲:大野克夫)
02. 外は吹雪 (作詞:及川恒平/作曲:大野克夫)
03. 燃えつきた二人 (作詞:松本隆/作曲:加瀬邦彦)
04. 人待ち顔 (作詞:及川恒平/作曲:大野克夫)
05. 遥かなるラグタイム (作詞:西岡恭蔵/作曲:東海林修)
06. U.F.O. (作詞:及川恒平/作曲:ミッキー吉野)

SIDE B
01. めぐり逢う日のために (作詞:藤公之介/作曲:沢田研二)
02. 黄昏のなかで (作詞/作曲:加藤登紀子)
03. あの娘に御用心 (作詞/作曲:大滝詠一)
04. 流転 (作詞:加藤登紀子/作曲:大野克夫)
05. いくつかの場面 (作詞/作曲:河島英五)


 3曲の詞を提供している及川恒平の世界って少し判りづらいが、ミッキー吉野がプログレ風の曲をつけた「U.F.O.」は壮大なお伽噺で面白い。

 ジュリーが作曲した「めぐり逢う日のために」は、叙情的なしなやかなメロディが心地よい切ない恋歌の名曲。

 加藤登紀子の2曲は、いまこの年で好きになれる歌。特に「流転」は七五調演歌の“ハードボイルドな世界”だから、ジュリーには「どうなの?」って感じなのだが、これ、耳につく。

 タイトル曲「いくつかの場面」は、この年のジュリーは結婚があったり、PYGの解散を引きずっていたり、仕事面でも海外進出など多忙を極めていたときで、河島英五の歌詞はまさに沢田自身に置き換えられるほど内省的な世界だ。


 日本のロック黎明期に、いたるところで行われたロック・コンサートでPYGは罵声を浴びた。悔しい思いを忘れないから、前に進んでこれたジュリーたちPYGのメンバー。これも日本ロックの歴史の足跡。
 この歌、ジュリーは2コーラス目のサビで涙声になってしまう。ディレクターの大野克夫はこの涙声のテイクをそのままアルバムに収録している。大野克夫にしても期するところがあったのだろう。
 
 泣きながらのレコーディングについては、山口百恵の制作ディレクター川瀬泰雄氏の回想記に「ラスト・ソング」の裏話として、谷村新司からの「泣きながら歌わせてください」の要求を頑として拒んだことが書かれている。川瀬氏にとっては〈以前に聞いた、泣きながら歌ったレコードに “あざとさ”を感じた 〉が理由なのだが、ディレクターもそれぞれだから面白い。因みに山口百恵の「ラスト・ソング」は、泣くギリギリの震えた声が収録されている。

 さて、名曲揃いのこのアルバムの中で異質なのが、大滝詠一作詞作曲の「あの娘に御用心」だろう。
 『キャラメルママ』でアルバムデビューしたばかりのティン・パン・アレーを従え、山下達郎と大滝詠一がコーラス参加をしている。大滝詠一もティン・パン・アレーと同時期に『NIAGARA MOON』をリリースしたばかりで、ポップス・ファンは別にして広く一般にはまだその名前は浸透していない時期。山下達郎もシュガーベイブ時代であって、ブレイク寸前の彼らを起用したことが目玉のひとつだったかもしれない。
 しかし残念なことに、軽く歌うジュリーの声はくぐもり歌詞がとても聞き取りにくく、他の曲とのバランスにとても奇異な感じを受けることだ。

 この変な感じは、アルバム・リリースから20数年後に判明した。
 驚くべきことにアルバムに収録されているテイクは、ミキシングした大滝詠一の大チョンボでリハーサル・テイクが使用されていたのである。道理で、デモテープをなぞって大滝詠一の歌唱を真似ているかのような歌唱だったのだ。
 その昔、ビートルズやストーンズなど60〜70年代のロック・アルバムでテイクミスの収録があったりするのは周知であっても、まさかジュリーのアルバムでそんなことが起きているなんてびっくりであろう。
 この「あの娘に御用心」は『GO! GO! NIAGARA』で大滝詠一自身がセルカヴァーし、ジュリーが歌う本テイクは後に、大滝詠一のミキシングにより『大滝詠一SONG BOOK 2』に収録されて陽の目をみている。


 このあとジュリーは、セルフ・プロデュースのアルバム制作を挟んで、阿久悠との派手な世界観へと翔んでゆくわけで、このアルバムは“スター”ジュリーの試行錯誤のなかで生まれた傑作と云えるだろう。


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