TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

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「哀しき獣」*ナ・ホンジン

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THE YELLOW SEA/黄海
監督・脚本:ナ・ホンジン
撮影:イ・ソンジェ
美術:イ・ウキョン
編集:キム・ソンミン
音楽:チャン・ヨンギュ、イ・ビョンフン
出演:ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ、イ・チョルミン、イム・イェウォン、タク・ソンウン、イ・エル

☆☆☆☆ 2010年/韓国/140分

    ◇

 世界を震撼させた『チェイサー』(’08)でデビューしたナ・ホンジン監督の長編第2作。日本公開は2012年。
 登場人物が朝鮮族という日本人には少し判りにくい社会性を持った一面もあるが、彼らを取り巻く背景や差別と暴力を生々しく描いたコリアン・ノワールを楽しむことができる。


 ロシア、北朝鮮に国境を接する中国延辺の朝鮮族自治州。貧しい生活を送る朝鮮族(韓国系中国人)の女たちは、不法入国で韓国へ出稼ぎにゆく……。

 タクシードライバーのグナム(ハ・ジョンウ)はドン底生活のなか、妻(タク・ソンウン)の出稼ぎのために多額の借金をしたが、妻からは仕送りもなく音信不通の状態。タクシーの仕事だけでは返済もままならず、麻雀賭博に入り浸っている毎日だ。
 そんなある日、行き詰まったグナムに犬商人で殺人請負業者のミョン(キム・ユンソク)から、借金の帳消しを条件に韓国にいるある人物の殺しを持ちかけられる。
 苦悩するグナムだが、借金返済と妻に会いたい一心で密航船に乗り黄海を渡った。
 帰国は10日後、そのまま逃げれば故郷の母親と娘に刺客を送ると脅されている。

 グナムが狙う相手は、表向きは大学教授を装う裏組織の一員キム・スンヒョン。
 ソウル市内の自宅を下見したグナムは、合間に妻の消息を尋ねてまわることにする。
 二日目、いつものようにアパート周辺にやってきたグナムは、一足先に二人組の男たちに教授を仕留められる。証拠品となる教授の親指を切断する現場で教授夫人(イム・イェウォン)に見られたグナムは警察に追われる羽目になってしまった。
 教授を襲ったのは、弟分のバス会社社長キム・テウォン(チョ・ソンハ)に依頼された男たちで、教授の運転手も襲撃者のひとりだった。テウォンは、自分の愛人(イ・エル)を教授に寝取られたことから殺害を決行したのだった。
果たして、教授殺しを依頼していたのは2組あったわけで、襲撃現場を見られたテウォンはグナムを追い、グナムを雇ったミョンのことをも探り出し殺害を企てるが、ミョンはテウォンの裏をかき反撃。代わりに、高額の報酬を条件にミョンにとっても邪魔者になったグナムの殺害を請け負う。

 ヤクザと警察に追われながら妻の行方を探るグナム。そんな中で、朝鮮族の女性の死体が上がる。死体置場に写真確認を頼んだ男から、死んだ女はグナムが探している女だと告げられ絶望したグナムは、ミョンとテウォンへの反撃を決意し、三つ巴の死闘がはじまった。
 そしてグナムを狙うもう一つの魔手……ミョンに教授殺しを依頼した人物は誰だったのか……。

    ◇

 後半に解かれる殺人動機は他愛ないのだが、事件の発端なんてこんなものだと承知できるレベル。警察の包囲網を簡単に突破するご都合主義も、追いつ追われるスリリングな展開とダイナミックでスピーディーな映像から生まれる緊張感の方が勝り、140分の長さもあっと云う間。
 圧倒的なカーチェイスにカークラッシュも見応え充分に、ノンストップ・アクションを存分に楽しめる。

 そして韓国映画特有の残酷描写。
 コリアン・ヴァイオレンスは拳銃でドンパチやるよりも、牛刀や斧を振り回しザクザクと肉片と血しぶきを飛び散らすスプラッタが多い。これは日本映画では出来ない残酷描写なのだが、このグロテクスなスプラッタが、やる方もやられる方も人間の生命力の強さを生々しく見せつけているのは確か。
 本作では、キム・ユンソク演じる犬商人ミョンの執拗で凶暴な行動が凄い。あまりのターミネーターぶりに失笑するとこもあるが、凄みのある不気味さは秀逸。敵は最強であればあるこそ面白い。

 事件自体は単純な話で、結末は謎を残す。
 結局ミョンに教授殺しを依頼した人物は、唐突に出てくることになる銀行員と判明するのだが、資料を探ると銀行員と教授夫人は不倫関係にあるらしい。ただ、最後の銀行内のシーンからは、教授夫人が共謀しているのかどうかは観客の想像に託される描き方だ。
 夫人を演じるイム・イェウォンの涙目がいい……この表情からは夫人と銀行員との不倫関係などはなく、ただただ銀行員の横恋慕だったのではないかと推理もできるのだが……。

 そしてクロージングのあとのワンシーンが、主人公の虚しさを一層無常にする。
 女のことで殺し合い意地と面子で闘いつづける男たちは哀しく、女はしたたかに生きていく生き物ということだろう。


 

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