TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

銀幕に吠えた、田宮二郎「犬」シリーズ

 大映の大ヒット映画『悪名』で人気スターになった田宮二郎を単独主役として〈悪名〉シリーズと並行して製作された〈犬〉シリーズ。シリーズは1964年から1967年までに全部で9本製作され、脚本は全作とも藤本義一のオリジナル。第1作の監督は『悪名』の田中徳三が手掛けている。
 〈犬〉シリーズ以前には〈黒〉シリーズが製作されているが〈黒〉シリーズ・全11作はタイトルの総称であり主人公は異なっていたので、本格的シリーズの主役はこの鴨井大介が最初で最後。かの映画界追放さえなければもっと量産されたであろう。

 主人公の鴨井大介は、住所不定で無職ながら女にはモテモテの伊達男。
 だけど女好き以上に拳銃を愛するガンマニア。1作目こそ人を殺めてしまい刑務所送りとなるが(シリーズ化を想定していなかったのであろう)、以後は「人の体を傷つけるようなハジキは発射せんのや」(第3作「ごろつき犬」)を信条に、刀の峰打ちよろしくアクロバティックなガンプレイで相手を倒してみせるのである。

 後年、陰気くさくなる(クールも度が過ぎてゆく)田宮だが、『悪名』の清二と同じように河内弁をまくしたて、底抜けに明るいキャラクターこそ田宮二郎の持ち味であろう。気障なクールガイながら、口八丁手八丁のトッポイ色男の可笑しさがカッコいいのである。
 そしてガンさばき。第1作こそぎこちないがシリーズを重ねる毎に抜き撃ちの早さは増し、第5作『鉄砲犬』においては0.5秒を切っているとか……魅せる田宮二郎である。

 シリーズとして、“クールガイ”田宮二郎にしつこくつきまとう相手役となるのが“ニヒル”を代表する天知茂なのだが、本シリーズでの天知茂は無精髭にヨレヨレのコートを着た風采の上がらない役。
 「アイツの給料、上げたらなアカン」と鴨井に云わしめる木村刑事としてシリーズ6作に登場するが、田宮の河内弁に対して大阪弁で対抗する天知茂(天知茂は名古屋出身。高校の大先輩である)とのコンビネーションが見ものである。

 もう一人、全作通して出演している常連組がラテン・シンガーの坂本スミ子。ここではコメディエンヌぶり全開である。
 この〈犬〉シリーズが最初の映画出演で、全作役柄は違えど、いつも鴨井にメロメロになるポッチャリ玉子のグラマラスキャラで、とにかくよく喋る。立て板に水の如くペラペラ喋る田宮との掛け合いは漫才。この面白さもシリーズの見どころとなっている。

 田宮二郎のガンスピンを満喫できるコミカル・アクションの傑作シリーズは、アキラやジョーの無国籍アクション映画と違って、大坂一色の人と街を見事に取り入れた痛快娯楽映画なのである。

 さて今回は、第1作から第5作目までを一気に。

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宿無し犬
監督:田中徳三
脚本:藤本義一
音楽:塚原哲夫
出演:田宮二郎、天知茂、江波杏子、坂本スミ子、水島道太郎、須賀不二男、成田三樹夫
☆☆☆ 1964年/大映京都/91分/BW

 シリーズ第1作。
 鴨井が人目惚れするヒロインには江波杏子。

 母の墓参りで高松を訪れた鴨井大介(田宮二郎)は、神戸の大興組に墓地を潰されゴルフ場にされていることに憤慨していた。
 大阪に戻った鴨井は、大興組と対立する沼野観光の社長に雇われラブホテルの副支配人に納まり、従業員の柳子(坂本スミ子)とイチャつきながら暮らすのだが、この頃から、ショボクレた風采の上がらない小男(天知茂)に付きまとわれる。
 ある日、保険金目当てにホテルが全焼し、支配人の青井(水島道太郎)が保険金を持って神戸の大興組に逃げ込んでしまう。
 鴨井は、高知の金比羅参りで出会い人目惚れした麻子(江波杏子)を追って神戸に向うが……。

 江波杏子の素晴らしさ……モノクロの陰影のなかに浮かぶ彼女は、ヨーロッパ映画のヒロインのような美しさで輝いている。

 成田三樹夫は本作がデビュー2作目。当然出番は少ないが、存在感はピカいち。以後もシリーズの半分には登場してくる。

    ◇

喧嘩犬
監督:村山三男
脚本:藤本義一
音楽:土橋啓二
出演:田宮二郎、浜田ゆう子、坂本スミ子、山下洵一郎、成田三樹夫、遠藤辰雄、玉川良一、海野かつを
☆☆★ 1964年/大映京都/90分/BW

 シリーズ第2作。
 ヒロインはヴァンプな魅力の浜田ゆう子。

 『宿無し犬』の続編として、刑務所に収監された鴨井のムショ暮らしから映画ははじまる。
 刑務所のなかでも自由奔放な鴨井は、刑務所で顔を効かせているヤクザのボス小森(スキンヘッドの遠藤辰雄)にまで反抗。やがて出所した鴨井は、その度胸を買われ組が仕切る工事現場の現場監督に雇われる。しかし、飯場はタコ部屋状態で労務者からはピン撥ねを常習しており、ある日、刑務所で弟分として面倒をみていた小吉(海野かつを)が、組の幹部の蒲生(成田三樹夫)に殺されたことで鴨井は立ち上がる……。

 天知茂が出ていない分やはり喰い足りない感が大きいが、お綺麗な浜田ゆう子がいるからいいでしょ。
 夫を殺されたことも知らずに帰りを待つ小吉の女房・町子役の坂本スミ子が、♪チンタレーラリルーナと「月影のナポリ」を口ずさむシーンは哀愁いっぱいである。

    ◇

ごろつき犬
監督:村野鐵太郎
脚本:藤本義一
音楽:山内正
出演:田宮二郎、天知茂、江波杏子、水谷良重、坂本スミ子、山下洵一郎、根上淳、成田三樹夫、宮口精二、中田ダイマル・ラケット
☆☆☆ 1965年/大映東京/90分

 シリーズ第3作。
 水谷良重が謎の未亡人役で、江波杏子は濃いメーキャップで再び登場。

 オートバイの事故で出会ったスポーツカーの女・葉子(水谷良重)に誘われ、南紀白浜の温泉地に来た鴨井大介。宿の女中(仲居とは少し違う感じ)の玉子(坂本スミ子)相手に時間を持て余している鴨井は、葉子から夫の仇である3人の男(根上淳、山下洵一郎、成田三樹夫)を討ってくれと頼まれるが、気乗りがしないまま大坂へ戻った。大坂には鴨井に組を潰された残党が鴨井を狙っていたが、木村刑事(天知茂)から残党の件は処理をするから同僚の刑事殺しの事件の協力を頼まれる。
 木村が目星を付けた犯人は、葉子から聞いた男の名前だったが………。

 本作からカラー作品になった。それに伴いタイトルバックは、当時新進イラストレーターとして注目され、1964年の「平凡パンチ」創刊号より表紙を担当していた大橋歩のモダンなイラストが使われている(クレジットはない)。

 天知茂が登場すれば田宮二郎の気障っぷりも益々快調だし、江波杏子を田宮と張り合う成田三樹夫もいいポジショニングである。
 そして本作以降、坂本スミ子の役名は玉子で統一された。(『鉄砲犬』を除く)

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暴れ犬
監督:森一生
脚本:藤本義一
音楽:古谷充、大塚善章
出演:田宮二郎、草笛光子、金井克子、坂本スミ子、ミヤコ蝶々、大坂志郎、須賀不二男、芦屋小雁
☆☆ 1965年/大映京都/92分

 シリーズ第4作。
 謎めいた美女には、東宝から招かれた草笛光子。

 大坂西成界隈に戻ってきた鴨井大介は、木賃宿で知り合った男から一丁の拳銃を古物商に売ってきて欲しいと頼まれたが、鴨井が留守の間にその男が殺され、鴨井もまた得体の知れない男たちからその銃の行方を追及されるが自前のハジキで撃退する。鴨井は男の恋人で踊り子のミユキ(金井克子)の世話を焼くようになり、ミユキの勤めるナイトクラブのママ弘子(草笛光子)からは用心棒を頼まれる。
 このクラブは宍戸組という拳銃密売組織から狙われており、弘子は弟を殺した宍戸組相手に復讐を狙っていた………。

 ミヤコ蝶々や芦屋小雁との掛け合いは実に愉しいのだが、敵役に成田三樹夫のような執拗さもなく、草笛光子の雰囲気もここでは浮いた感じとなり、キャスティングに難ありといった感じ。ましてや、天知茂がいないのが致命的だ。

    ◇

鉄砲犬
監督:村野鐵太郎
脚本:藤本義一
音楽:菊池俊輔
出演:田宮二郎、天知茂、姿三千子、山下洵一郎、坂本スミ子、小沢昭一、安部徹、北林谷栄
☆☆☆ 1965年/大映東京/85分

 シリーズ第5作。
 本作も大橋歩のイラストをタイトルバックに使い、劇伴は大家菊池俊輔の粋なジャズテイストでモダンに幕を開ける。

 〈犬も歩けば落とし穴! よしゃ、新手でかましたれ!〉

 九州・博多の賭場で一文無しになった鴨井大介(田宮二郎)は、そこで知り合った小玉(山下洵一郎)という男から故郷の大坂にいる母親(北林谷栄)に送る金を託される。
 大坂に戻った鴨井は、食堂で置き引きに遭い愛用の自家製リヴォルバーを盗まれてしまう。
 小玉は大坂の暴力団一六組のボス塚本(安部徹)の手先として、以前、競輪選手の早川(小沢昭一)に罠を嵌め八百長試合をしていた。早川は身を持ち崩しアル中になっていたが、小玉の顔を見知っていたため、小玉は九州に飛ばされていたのだ。
しかし、小玉が母親と妹(姿三千子)恋しさに大阪に舞い戻ってきたことで、組は口封じのために小玉を消しにかかっていた。
 一方、盗まれた鴨井のリヴォルバーは巡り巡って塚本の手に渡り、その銃で証人となる早川に重傷を負わせ、小玉をも殺害してしまう。
 殺人の嫌疑をかけられた鴨井は、木村刑事(天知茂)の忠告を無視して塚本のもとへ…。

 田宮二郎の本格的なガンスタント(一部トリックはあるのだが)を見ることができる傑作。

 今回、小沢昭一が初登場し、終盤いい味を醸し出している。鴨井と意気投合し、トルコ風呂を去るシーンで女の子の胸を触っていくところなんかはアドリブだろうな。
ラスト、葉山のヨットハーバーでの銃撃戦後、鴨井大介の信条を評して小沢昭一が言う。
「はぁ~、あいつらみんなカスリ傷や。深手を負うたもんひとりもおらん。いっぺん、ゼロまるセヴンと対決させたいわぁ」
 殺す殺されの血なまぐさいストーリーが、カラっとしているのはこんなとこなんだなぁ。





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