TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「二流小説家 シリアリスト」*猪崎宣昭監督作品



監督:猪崎宣昭
原作:デイヴィッド・ゴードン
脚本:尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭
音楽:川井憲次
主題歌:「手紙」泉沙世子
出演:上川隆也、武田真治、片瀬那奈、平山あや、小池里奈、黒谷友香、賀来千香子、でんでん、高橋惠子、長島一茂、戸田恵子、中村嘉葎雄、佐々木すみ江、本田博太郎、伊武雅刀

☆☆☆ 2013年/東映/115分

    ◇

 映画初主演となる上川隆也の、ベストセラー海外ミステリを翻案したサスペンス映画。
 監督は『だます女だまされる女シリーズ』「女タクシードライバーの事件日誌シリーズ』などの2時間ドラマや、『ゴンゾウ~伝説の刑事』『相棒』『遺留捜査』など人気TVドラマを手掛ける猪崎宣昭が21年ぶりにメガホンをとった。


 エロ本の連載で食いつないでいる売れない小説家の赤羽一兵(上川隆也)のもとにある日、連続殺人犯の死刑囚呉井大悟(武田真治)から「告白本を書いて欲しい」という執筆依頼が舞い込む。この告白本を書けば一流の小説家になれるかもしれない、と欲望に駆られた赤羽は呉井に会いに行く。
 しかしこの話にはひとつ条件があった。
 それは、呉井を主人公にして彼を崇拝する女性たちとの官能小説を書くこと。しぶしぶ承諾した赤羽が女性たちの取材を始めたある日、頭部を切断され花をあしらわれた女性の死体と出くわす。しかも、その手口は12年前に呉井が起こした事件の殺害手口とまったく同じであった。 
 刑務所にいる呉井に犯行は無理。第一発見者として警察に容疑者として追われる赤羽は、身の純白を照明するために犯人を追うことになるが、果たして呉井は本当に12年前の事件の犯人だったのだろうか……。

    ◇
 
 二転三転する原作の面白さを知っているなかでは、原作にはないミスリードとか伏線の張り具合を楽しみながら、穿った見方ではあるが無邪気な平山あやや生意気で可愛い小池里奈をはじめ、美しい高橋惠子、ヒステリックな本田博太郎、不気味な伊武雅刀と個性的な俳優陣に注目していた。
 もちろん上川隆也と武田真治の数回ある面会シーンでの対決も、気迫あるふたりの演技は見応え充分であった。

 さて、ミステリの部分はほとんど原作に忠実に映像化されていたが、原作のキモである“文学論”“芸術論”など小説への強いリスペクトや作中小説は、当然ながらバッサリと省いてあった。表現のしようがないであろうから致し方ない。
 ただ、多様な登場人物と主人公との人間関係が充分に描かれていたかというと、残念ながらそうでもなかった。元婚約者(黒谷友香)や、原作で魅力的なキャラクターだった女子高生や弁護士助手と主人公のやりとり、母親(賀来千香子)へのマザコンぶりなど、描き足りない部分が多かった。
 多分、興行的に上映時間を2時間に納めたための弊害だろう。片瀬那奈と中村嘉葎雄の関係などはなかった方がよかったのではないか。脚本に4人もの名前が連記されているのだ、もっと練り込んで欲しかった。
 時系列の時間的配分や簡単に銃を手に入れるなどのご都合主義には目を瞑るとして、良きも悪しきもTVのサスペンスドラマ然となってしまっているのが至極残念なのである。
 クランクインが今年の1月で、ほぼ1ヶ月でアップし、公開が6月というのも問題あるのでは……?

 映像的には、斬首死体の残虐な殺人現場を真っ赤な薔薇の花びらに囲まれた美しき全裸の女性死体としてソフティケイトに映像処理がされ、曇天のモノクロームの中に浮かぶ真っ赤なマントや黒鍵と白鍵に飛び散る血しぶきなど、回想イメージの色彩処理は素晴らしく耽美だ。
 妖しく揺れる森、風に流される雲、自然現象に狂気を孕み、暗く重い真相に深みを持たせる巧みさが伺え、日本映画独特の情念と風土描写が施された辺りは、過去の名作ミステリ映画を想起させるとしても、美しい描写だった。


★「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン★

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Comment

トウジロ says... "質問です"
こんばんは、mickmacさん

この作品、ソールバス風のイラストが予告編やポスターに群舞して華やかなのですが、それはあくまで宣材に留まるのでしょうか、それとも本編のメインタイトルや中身においても、往年のミステリーや活劇のスタイルを継承して狂ったように駆け回っているものでしょうか。気になっているのですが、こういう事をお尋ねして答えていただける人、そうそういないのでお願いいたします!
2013.06.17 19:08 | URL | #JalddpaA [edit]
mickmac says... "Re: 質問です"
トウジロさん

「黄金の腕」を彷彿とさせるソール・バス風のイラストが気になるとは、流石です(笑)。

予告編やポスター、ちらしにと使われるこのスタイルですが、残念ながら、いやぁホントに残念ですが宣材使用のみです。
せめてオープニングタイトルで使われるのかと期待はしていたのですがね。
テレ朝特有の社会派サスペンス風の幕開けで、往年の洒落っ気ある翻案日本映画とも違った匂いで、こんなところも、今のテレビ屋の仕事かもしれません。


2013.06.17 19:54 | URL | #- [edit]
トウジロ says... "あららら…"
mickmacさん、ご快答感謝いたします!

それにしても、あららら…の展開ですねえ。あそこまで踏み込んだヴィジュアルイメージを組んだのなら、本編についても責任を取っていただきたいものですねw。でも、あれか、こうして好奇心や興味を煽られたわけですから、宣伝としては大勝利だったのかしらん。誰が思いつかれた知りませんが、大胆で面白い戦術ではありましたね。

お答えいただき、ありがとうございました!
2013.06.17 20:36 | URL | #JalddpaA [edit]

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