TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「黒薔薇昇天」*神代辰巳監督作品



監督:神代辰巳
原作:藤本義一
脚本:神代辰巳
撮影:姫田真佐久
主題歌:「賣物ブギ」ダウンタウン・ブギウギ・バンド
出演:岸田森、谷ナオミ、芹明香、高橋明、庄司三郎、谷本一、山谷初男、東てる美

☆☆☆☆ 1975年/日活/73分

    ◇

 藤本義一の「浪花色事師~ブルータス・ぶるーす」を原作に、ブルーフィルム作りに奔走する男と女の哀歓をコミカルに描いた傑作。
 題材は今村昌平監督の『エロ事師たち~人類学入門』('66)に似ているが深刻さは皆無。活動屋へオマージュを捧げながら、実にバカバカしく、摩訶不思議に、裏映画のバックステージ物に仕上げているのが神代流か。


 大阪を根城にブルーフィルムの製作をしている十三(岸田森)は、カメラマンの安さん(高橋明)と照明や雑用係の石やん(庄司三郎)、専属女優のメイ子(芹明香)とメイ子のオトコで男優を務める一“はじめ”(谷本一)らを従え、和歌山の海辺の旅館の一室で撮影していたが、メイ子が一の子どもを妊娠したため、胎教に悪いので引退すると言い出した。仕方なくロケ隊は撮影を中断して大阪に引上げるのだった。
 メイ子への説得はつづく。
 「わいら撮ってるもんは、そこらのヤクザが資金稼ぎにやってるのとはわけが違うで。わいらのはゲージツなんや」と声を高める十三は、大島渚や今村昌平を敬愛する“活動屋”くずれ。安さんとふたりは独立系成人映画制作会社の残党だ。しかしメイ子の意志は固く諦めるしかない。

 副業でエロテープを作っている十三は、ある日、行きつけの歯科医院に仕掛けた盗聴テープの録音から、和服姿の美しい幾代(谷ナオミ)と歯科医(山谷初男)との関係を知る。そして十三は、録音テープを手に探偵だと偽り幾代に接近し、彼女が関西財界人のお妾さんと知る。淑やかな彼女の魅力に惹かれた十三は、浮気の証拠があると幾代を部屋に連れ込んだ。

 「ファックちゅうもんわですなぁ……………人間の行為のなかで一番崇高なもんなんですわぁ。人間の根源的な美の再確認ですわ」

 幾代を口説きおとし、抱く十三。たちまち絶頂に達するや、そこに機材を抱えた安さんと石やんが乱入し、撮影をはじめる。
 こうして幾代はブルーフィルムの主演女優になり、同時に十三の嫁になった。

 「焼きもちやきまへんな」
 「誰とファックしようと、これは仕事や。女優をヨメはんにしてる監督はんはいっぱい居てはるけど、焼きもちやく監督はんがいてはるか?」

 ふたたび和歌山の旅館の一室。幾代と一のセックスシーンに、お腹の大きくなったメイ子が嫉妬し、十三さえも幾代に焼きもちをやき、撮影はまたもや中断。
 せっかくのテープがフイになっておかんむりの安さんに対して、「焼きもちやいてしもうた。修行が足らんのや」と照れる十三なのであった……。

    ◇

 内田あかり主演の歌謡ポルノ『ロスト・ラブ~あぶら地獄』('74・小沼勝監督)に次ぐ、岸田森の2本目のロマンポルノ出演作となる本作。ヒロインを谷ナオミに据えているとしても、主人公は岸田森。なんてったって岸田森なのだ。
 岸田森の本作出演は多分、前年のテレビドラマ『傷だらけの天使』で神代辰巳が2話分のメガホンをとったことがきっかけであろう。特に第4話『港町に男涙のブルースを』で、荒砂ゆきに対しての岸田森のふざけっぶりは大ウケなのだが、こちらはもっと弾けてる。コテコテの大阪弁を捲し立て、胡散臭さと呆けた所作での怪演ぶりは絶妙。
 映画の後半では、谷ナオミとの濃厚なセックスを延々と繰り広げるのだから、クールな岸田森を知っているファンはビックリするであろう。
 ついでに記しておくと、岸田森が最初に出演した『ロスト・ラブ~あぶら地獄』は、荒砂ゆきが主演した神代辰巳監督の文芸ロマンポルノ『鍵』の併映作だった。

 映画芸術論、ワイセツ論を語らせ、映画撮影を撮る内省的手法は、どこまでも神代自身が私事を映し取っているかのよう。
 全編にユーモアと哀しみを漂わせ、唐突に、画面の繋がりなどお構いなくびっこを引きながら歩く岸田森の姿には、当然にして川島雄三をダブらせている。

 70年代の大阪の街の風情、そこに流れるダウンタウン・ブギウギ・バンドや奥村チヨなどの歌謡曲は見事にマッチし、愛染かつらから大正琴、果ては全裸でローラースケート・ファックをする岸田森と谷ナオミのBGMに結婚行進曲と、シュールな神代流遊び心が遺憾なく響き渡る。
 ダウンタウン・ブギウギ・バンドの「賣物ブギ」の冒頭となるグルーヴィーなブルーズ部分をテーマにしたのは、後の『赫い髪の女』('79)で絶妙な選曲となる憂歌団のブルーズに先立つ、会心の世界観だ。
 「カッコマン・ブギ」と「知らず知らずのうちに」も見事に画とマッチした選曲。
 タクシーの中で日傘を差す谷ナオミのテーマとして「終着駅」が流れるのも、貞淑さと豊満な女の匂いがブレンドされたかたちで妙に色っぽい。

 撮影は、今村昌平映画の時代から神代作品でもお馴染みの姫田真佐久。
 全裸の芹明香が赤いパラソルを持って入り江を歩くシーン、岸田森と谷ナオミが乗る松坂屋屋上の丸型ゴンドラ、岸田森と高橋明が釣舟屋の桟橋で掛け合うロングショット、岸田森が芹明香を説得する天王寺動物園ではキリンの檻の前を通り過ぎる幼稚園児の列、なんば駅前で岸田森と谷ナオミがタクシーに乗り込むシーンとか、ワンシーン・ワンカットの長回し多用は腰の据わった美しい構図を数々見せてくれる。

 そして見事なローアングルは、芹明香が階段ででんぐり返りして「産まれてしもうやないかぁ」のストップモーションで決まる。


[神代辰巳作品]
★赤線玉の井 ぬけられます★
★一条さゆり 濡れた欲情★
★恋人たちは濡れた★
★女地獄 森は濡れた★
★やくざ観音 情女仁義★

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Comment

根保孝栄・石塚邦男 says... "観るよりも・・"
v-8観るより体験ですね。
日活ポルノはほとんど観たことないですね。女性でも好きな人いて、「連れてって」なんてせがんだ方いましたが、「自分で行ってこい」と突き放しましたね。

この種のものは、観るのではなく、体験でしょう。
2014.06.24 02:29 | URL | #u3MRTyDc [edit]
mickmac says... "Re: 観るよりも・・"
>根保孝栄・石塚邦男さん

ロマン・ポルノは、ただ性の遊戯として観るのではなく、人間のもつあらゆる煩悩から生まれる悲哀や歓喜を覗きみる愉しみとして、他の一般映画を観ることと何ら変わりませんよ。
だって、体験できないことは山ほどにあるのですから………。
2014.06.24 14:38 | URL | #- [edit]

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