TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「「市井」より 本番」*西村昭五郎監督作品



監督:西村昭五郎
原作:藤本義一「市井」
脚本:熊谷禄朗
撮影:山崎善弘
音楽:高田信
出演:山口美也子、宮下順子、橘雪子、高橋明、庄司三郎、丹古母鬼馬二、椎谷健治、中西良太、雪丘恵介、松井康子

☆☆☆★ 1977年/日活/69分

    ◇

 流れ歩くドサ回りのストリッパーたちの生態を書いた藤本義一の小説「市井」の映像化で、男たちに踏みつけられ、泣かされ、それでも華やかなスポットライトの下で踊りつづけるストリッパーたちの日常と哀歓を淡々と描いた秀作。


 高知の施設で育ち、4歳の時に旅芸人一座の座頭の養女となり、18歳の時には義父に犯された過去を持つストリッパーのチェリー(山口美也子)。
 座員のケンちゃんと逃げるように上京したが、働きだしたストリップ小屋では織田(椎谷健治)というヒモがついたが、粗暴な織田は暴力沙汰で服役している。チェリーはその間、小屋の従業員で純朴な青年酒田(中西良太)と関係を持っていた。
 ある日突然、出所した織田が現れた。しばらくして、チェリーと酒田の関係を知った織田は、チェリーの肩をガラスの破片で突き刺し、裸で逃げる酒田を交番まで追いかけ、挙げ句にまた手錠をかけられる。
 当分戻っては来れない織田に、チェリーをはじめ姉貴分の万子(宮下順子)らはほっとするが、逆に酒田はすっかりチェリーのオトコ気取リ。果てはヤクザ相手のイカサマ麻雀のオトシマエにチェリーを男たちに差し出す始末。
 やけ酒を煽る酒田に、万子は「あんた、織田に似てきたね」と言い放つのだった……。
 

 「いまの若い子たちは、本当に飢えるってこと知らないわ。貧乏がどんなものか、ホント、分かっちゃいないのよ。だからサ、死ぬだの生きるだの、辛いとか………わたしはちがうわ。他のみんなが死んでも、わたしだけは絶対に生きてやる。死んだりなんかしてやるもんですか」

 男たちの間を漂いながら、不貞腐れるでもなく、男に従順になるでもなく、懸命に生きているチェリー。ルポライター(丹古母鬼馬二)に語るかたちでチェリーの生き様が見えてくるのだが、結局、捨て鉢になった酒田によって舞台の上で刺されて死んでしまう。

 山口美也子はこの作品が映画デビュー。チェリーの逞しさを見事に演じる彼女が、とにかく素晴らしい。自由劇場や黒テントを経てきた演技力は当然ながら、スタイルもよく、踊りも巧く、独特の雰囲気をもったその存在感。いっぺんに虜になった女優だ。
 彼女はこの後、つづけて西村昭五郎監督の『肉体の門』('77)と曽根中生監督の傑作『新宿乱れ街 いくまで待って』('77)に出演し際だつ魅力を見せつけ、根岸吉太郎監督のデビュー作『オリオンの殺意より 情事の方程式』('78)ではコメディエンヌの才能を見せたりと、70年代末のにっかつロマンポルノを支える存在になった。
 そして、80年代に一般映画『さらば愛しき大地』('82)でブルーリボン賞助演女優賞などを獲得している。

 姉貴分に扮した宮下順子は、脂の乗った時期だけに貫禄充分。
 その宮下が可愛がっていた犬が死んでしまったエピソードや、狂言自殺する橘雪子と庄司三郎の成り行きなど、踊り子とヒモたちの世界は可笑しくも哀しい。


[山口美也子出演作品]
★さらば愛しき大地★
★われに撃つ用意あり★
★新宿乱れ街 いくまで待って★
★おんなの細道/濡れた海峡★
★天使のはらわた 名美★
★ピンクサロン 好色五人女★

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Comment

コビット says... "オリオンの殺意"
この映画は見逃しました(…というより、映画化されたことを知りませんでした)が、原作の短編『オリオンの殺意』は熟読しました。実母と離婚して後に迎え入れた実父の後妻(=継母)に誘惑されて関係を持って以来、美しい継母の存在に悩まされ続けるというストーリーに衝撃を受けました。映画の中で亜湖が演じる主人公・敏彦のガールフレンドは原作になかった存在ですが、継母役は山口美也子よりも若くて肉体派の女優に演じてもらった方が…と感じました。それだったら、どこかでの再上映会にも駆け付けたのに…??
2015.09.29 11:46 | URL | #ntUR4DUs [edit]

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