TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン

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 2012年度の『このミステリがすごい!』『週刊文春ミステリーベスト10』『ミステリが読みたい!』で、海外部門第1位の3冠を獲得したミステリ。


 ポルノ小説や、SF小説、ヴァンパイア小説、ハードボイルド小説などをそれぞれ別名義で書いている三文小説家ハリー・ブロックは、ある日、12年前に4人の女性を惨殺した連続殺人鬼で死刑執行を3ヶ月後に控えているダリアン・クレイから、自分の告白本を書いてくれと依頼させる。
 世紀の殺人鬼の自叙伝なら一気に有名になれる。しかし、そのためにはひとつ条件があった。ダリアンを崇拝する女たちを取材して、ダリアンが読むために彼女たちを主人公にしたポルノ小説を書けというものだった。
 さて、ハリーが取材を続ける最中、その相手が次々と殺害される事件が勃発する。それも、殺人の手口が12年前のダイアンとまったく同じものだったことから、ダリアンが無実だった可能性が示めされてしまった。もし過去の事件がダリアンの手によるものでなかったら、いったい真犯人は誰? 
 FBIから容疑者として扱われるハリーは真実を追いはじめるが、今度はハリーが何者から命を狙われるようになる………。


 ミステリとして二転三転する展開は面白い。ハリーのビジネス・パートナーとなる女子高生クレアや、ダリアンの弁護人の助手テレサのキャラクターも魅力的で(特にクレア!!)好きになれる。

 前半は、ハリーを取り巻く女たち(クレア、テレサのほかに、被害者の双子の妹でストリッパーのダニエラ、元恋人のジェイン、そして女弁護士のフロスキー)の人間関係にかなりの頁を費やし、事件までなかなか進まない。
 その間、本作作中にはハリーが書くポルノ小説、SF小説、ヴァンパイア小説、ハードボイルド小説がチャプターとして挿入され、さらに著者の文学論芸術論なるものが記される趣向だ。それが本書のキモなんだろうが、冗長な記述は鬱陶しく感じることしばしば。
 著者のデイヴィッド・ゴードン自身の投影だというが、別名義で二流・三流な分野で小説を書き分けている有名作家はいっぱいいる。この自虐的な趣向は、ただの経験のひけらかしみたいで鼻についてしまった。
 もちろん無意味な作中作ではなく、最後の最後の場面にはある余韻をもたらしてはいるのだが、これでなくてはならないものでもないので、効果は薄い。
 
 まぁ、我慢して読みつづければ光も射すってもので、中盤の急展開から加速度をつけて物語が大きく動いていくあたりは読み応え充分で、後半はグロテスクに残虐なシーンが盛りだくさんの物語になる。

 そしてまさか、本作が上川隆也主演で映画化されるとは!
 でも映画の方が、監督と出演者の魅力で楽しめるのではないかな。6月15日の公開をかなり期待しているのである。

 翻訳版映画「二流小説家~シリアリスト~」の公式サイト

    ◇


二流小説家/デイヴィッド・ゴードン
訳:青木千鶴
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
定価 1,050円(税込)

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