TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」*マーク・ライデル

0974-07_シンデレラ・リバティー
CINDERELLA LIBERTY
監督:マーク・ライデル
原作:ダリル・ポニックサン
脚本:ダリル・ポニックサン
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ジェームズ・カーン、マーシャ・メイソン、カーク・キャロウェイ、イーライ・ウォラック、バート・ヤング

☆☆☆☆ 1973年/アメリカ/118分

 誠実で真面目な水兵と刹那的に生きる娼婦との出会いと別れを描いた本作は、1973年製作のアメリカン・ニューシネマのひとつとして挙げてもいい作品ながら、あまり評価をされてこなかった不遇なる傑作である。

 原題の〈シンデレラ・リバティー〉とはアメリカ海軍の俗語で、真夜中までに帰還しなければならない休暇のことをいう。
 サブタイトルに〈かぎりなき愛〉などと余分な邦題をつけお涙頂戴的ニュアンスを感じさせているが、実際、心温まるヒューマンドラマではあるとして、この〈かぎりなき愛〉とは男の側の一方的な愛の奉仕でしかなく、女の側から言わせれば、どこか煩わしい愛に変化していることに男も気がつけよといっているような話なのだ。


 アメリカ海軍の甲板長ジョン・バッグス(ジェームズ・カーン)はシンデレラ休暇で上陸した港の酒場で、ビリヤードをしている女マギー(マーシャ・メイソン)と知り合い、彼女の部屋に泊まった。
 マギーは水兵相手の売春婦で、黒人兵との間に出来た11歳の息子ダグ(カーク・キャロウェイ)がおり、もうひとりお腹に赤ん坊を宿していた。
 煙草を吸い飛び出しナイフを持って荒れた日常を非行少年ダグと、その日その日を刹那的に生きているマギーらは民生委員の世話になっている。バッグスは、そんなふたりの境遇に同情し、なんとか助けにならないかと考えはじめる。
 不正が大嫌いで、汚い言葉は絶対に発せず、嘘をつかないまっとうで優しい男バッグス。17歳で海兵隊に入り、海軍こそが安住の地と信じてきたバッグス自身、温かい家庭に恵まれずに育ったことから、ひとの不幸を見過ごすことができないタチだった。
 そんな彼に、軍の健康テストで身体に疾患があることが判明し帰艦を止められ、当分の間は海軍憲兵〈SP〉に任命された。
 バッグスには仇敵がいた。昔、海軍キャンプで彼を散々いじめ、シゴイた隊長フォーシェイ(イーライ・ウォラック)をいつかどこかで巡り会い恨みを晴らしたいと思っていた。しかし偶然に再会したフォーシェイは、昔の面影もなく、ただみじめったらしい男になっていた。家族も身寄りなく、年金もなく酒場の呼び込みをするフォーシェイとバッグスは和解し、友達になった。
 そのうちにバッグスは、病院がバッグスの身分証明カードを紛失したことで給料を受け取ることが出来なくなり無一文にしまった。
 不運は重なり、バッグスがマギーの家に出入りすることから民生委員はバッグスを扶養者と見なし、救済を打ち切ってしまう。
 しかし今のバッグスには生き甲斐があった。マギーとダグ、そして産まれてくる赤ん坊がそれだ。
 マギーの出産の日、バッグスは彼女に立ち会い、無事に赤ん坊は産まれるのだが、やがて病院で死んでしまった。
 バッグスの辛抱強い善導によりダグは更生の道を歩み、深い愛情にほだされていたマギーは酒場の女から足を洗っていたが、赤ん坊の死のショックから、ふたたび元の生活に戻り出してしまった。
 ある日、マギーは置き手紙を残し家を出て行ってしまう。強がりをいうダグの姿を見て、バッグスはある決意をした。
 身分証明カードの再交付がされ、船への帰艦命令が下った日、バッグスはカードをフォーシェイに渡す。身分を交換したバッグスは、ダグと共にマギーを探すためにマギーの故郷ニューオーリンズへ向うのだった………。

    ◇

 心が通い合ったバッグスとダグが、手を繋いで去っていく港のラストシーンは、男の立場からすればハッピーエンドかもしれないけれど、マギーの立場からすれば、人生においての辛さや寂しさを救うのは与えられる愛情ではなく、同等の愛情だと男に知らしめるために去ったはず。
 マギーにとっては、かぐや姫の「神田川」の歌詞のような「あなたの優しさがこわかった」のだ。貧しい生活を強いられる自分たちへのバッグスの愛情は、女としてときに重い枷にもなる。男の優しさを愛情に置き換えたとき、それがいつまでつづくのかを信じられなくなる自分には、男からの自立こそ女の自由なのだと羽ばたいたマギーには、この先、バッグスとどこかで再会してもこの男と女の距離感は埋まらないように思える。


 デビュー作の『不意打ち』('64)の悪辣さといい、『ゴッドファーザーⅠ&Ⅱ』(’72・’74)での血の気の多いソニー役のように、乱暴者のイメージが強かったジェームズ・カーンが本作では、「下品な言葉は使わない。嘘はつかない。女は殴らない」をモットーにする真面目で誠実な男を好演している。優しい表情が何ともいい。

 娼婦マギーを演じるマーシャン・メイソンは、初出演映画だった本作でゴールデン・グローブ賞[ドラマ部門]主演女優賞を受賞しており、この輝かしい経歴でこれからを期待されるも、劇作家のニール・サイモンとの結婚で彼のふたりの子どもたちのためにあっさり休業してしまった。
 復帰作は1977年に夫ニール・サイモンが書き下ろした『グッバイガール』。この作品でふたたびゴールデン・グローブ賞[ミュージカル・コメディ部門]の主演女優賞を獲得している演技派。決して美人ではないのだが色っぽい。ちょっと鼻先が上を向いたところがチャーミングで、大好きな女優になった。

 監督は俳優出身のマーク・ライデル監督。これ以前の作品としては、スティーヴ・マックィーンの『華麗なる週末』(’69/大ヒットした『華麗なる賭け』にあやかっての邦題が紛らわしい)、ジョン・ウェインの『11人のカウボーイ』(’71/これも同時期に公開されたピーター・フォンダが監督した傑作『さすらいのカウボーイ』と間違えやすかった)があり、俳優としてはロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』(’73)において印象的なギャングのボスを演じていた。

 撮影監督のヴィルモス・ジグモンドは、先の『さすらいのカウボーイ』『ロング・グッドバイ』をはじめ、『スケアクロウ』『続・激突カージャック』など、70年代のアメリカン・ニューシネマの屋台骨を支えてきたハンガリー出身の名映画キャメラマンだ。本作では、雨の多いシアトルでのオール・ロケにおいて曇りの微妙な光をリアルなトーンで映しとり、物悲しい心象風景を生み出している。 
 ライデル&ジグモンドのコンビネーションはこの後、1979年の『ローズ』(ベッド・ミドラーのジャニス・ジョプリンぶりは必見)においても素晴らしい傑作を生んでいる。

    ◇

★ロング・グッドバイ★
★続・激突カージャック★
★スケアクロウ★

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