TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「アニー・ホール」*ウディ・アレン

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ANNIE HALL
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン、マーシャル・ブリックマン
撮影:ゴードン・ウィリス
出演:ウディ・アレン、ダイアン・キートン、トニー・ロバーツ、シェリー・デュヴァル、キャロル・ケイン、ポール・サイモン、クリストファー・ウォーケン、シガニー・ウィーバー、ジェフ・ゴールドブラム、トルーマン・カポーティ(ノンクレジット)

☆☆☆☆ 1977年/アメリカ/93分

    ◇

 それまでのウディ・アレンはスラップスティック・コメディ映画ばかりと見られたが、本作から、シニカルな大人の会話と長回しといった、現在のウディ・アレン映画のパターンが定められた。
 アカデミー賞の主要5部門を受賞したにもかかわらず、授賞式にアレンが出席しなかったことは有名。
 日本公開はこのアカデミー賞前の1978年1月に公開されたが話題にならなかったと思う。初見は4月の凱旋公開時だった。


 ユダヤ系のスタンダップ・コメディアンのアルヴィ・シンガー(ウディ・アレン)は、うだつの上がらない風采ながら女性関係に事欠かさない優雅な独身生活を送っている。
 ある日、アニー・ホール(ダイアン・キートン)という歌手志望の女性と出会い、いつも笑顔でファッションセンスもよく、気の利いた会話を話す彼女に興味を惹かれた。
 間もなくふたりはアルヴィのアパートで同棲。しかし、最初は快適だった生活も、新鮮さがなくなるにつれギクシャクし出し、セラピーに通ったりするがうまくいかない。
 そんな時、人気歌手トニー(ポール・サイモン)に褒められたアニーは、彼からLAに誘われる。取り残された気分になるアルヴィは、アニーと男友達の間を疑心暗鬼になってくる。
 アニーはLAに行ってしまい、彼女への愛が必要と感じたアルヴィもLAに飛ぶが、アニーはNYに戻る意思はなかった………。

    ◇

 屈折した自虐性に満ちた台詞の連発……愛に餓えた中年男の恋の行方。
 ウディ・アレン自身が幼い頃から抱えてきたコンプレックスが、中年になって女性関係にどう影響するのかを自虐的に描いたコメディで、都会に生きる男女の日常がカリカチュアされながらも、生き生きと描かれている。スノッブ層の知的遊戯感が強いのが鼻につくかもしれないけれど……。

 長回しのなかでずっと喋り続けるウディ・アレンの映画は、英語力のない日本人の字幕頼りには限界があるので、本当の面白さが伝わらないのだろうが(日本人にはユダヤ系のジョーク自体、本質を理解するには無理なところがある)、主人公がカメラ(観客)に向かって自己内面を語るところから映画がはじまり、幼年期、アニーとの馴れ初めなどの時間軸を前後しながら、ときにディズニー漫画の中に入ったり、街行く人に突然インタビューしながら自分の気持ちを観客に語ったり、子供のころの回想に現在の自分たちを登場させたりする語り口の面白さは堪能できる。

 映画術として、例えばアニーのアパートのベランダで語り合う会話に下心ある心の声を字幕で入れたり、ふたりがセックスをしようとするシーンでは、アニーの魂が身体から遊離し別の場所からそれを見つめていたり、意識の流れを自由に映像で表現している。

 アルヴィンとアニーがキッチンでロブスターと格闘する有名なシーンは、何度かの撮影で自然と笑いが止まらなくなったテイクを使用したということで、ダイアン・キートンが本当に楽しそうに素の笑顔を見せてくれる。
 馴れ初めとなるテニスクラブでの長回しも、シャレた会話が実にいい。ダイアン・キートンの可愛らしさに、男なら誰もが恋心を抱いてしまうだろう。


 映画は、ニューヨークに戻ったアルヴィがアニーとのことを戯曲にして、ふたたびふたりが結ばれると云ったハリウッド式ハッピーエンドのリハーサルシーンで終わる。
 「現実は上手くいかないんだから、せめて芝居くらい完璧を目指すんだ」

 その後NYに戻ったアニーと再会し、ロマンチックなシーンや出会った頃のシーンが回想的に映し出される。友達として語り合い、そして別れたこと。アルヴィは映画のはじまりと同じように、カメラに向い語りかける。
 「ぼくは、彼女がどれだけ素晴らしい女性だったのか、彼女と知り合えてどんなに楽しかったのか気付いた」と………。
 可愛らしく、インテリジェンスで、洗練されたダイアン・キートンの笑顔が素敵だからこそ、この苦い終わり方がとてもいい。


 ポール・サイモンが人気歌手の役で出演したり、シェリー・デュヴァルにローリング・ストーン誌の記者役でディラン論を言わせたり、また、当時は無名だったジェフ・ゴールドブラム(パーティの客)やシガニー・ウィーバー(フェリーニ批判をする男のデート相手)、公園を散歩するトルーマン・カポーティ本人など、今では豪華なキャスティングも興味深いだろう。

 ポール・サイモンのパーティ・シーンで「A HARD WAY TO GO」という曲が聴こえてくる。これは英国ブルーズ・ロック・バンドの雄サヴォイ・ブラウンの曲のはずなんだが、どう聴いてもフュージョンジャズ。後年、DVDでクレジットを探してみると、ティム・ワイズバーグというフュージョン系のフルート奏者の演奏だった。



1978-04_アニー・ホール


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Comment

蟷螂の斧 says... "恥ずかしながら・・・。"
初めて見ました。
>英語力のない日本人の字幕頼りには限界があるので
僕が良い例です。lifeと他の単語の洒落で二人の言葉に行き違い。DVDレコーダーで慌てて逆戻りする始末です・・・^^;)
>アニーの魂が身体から遊離し別の場所からそれを見つめていたり
これは斬新でした!
>シェリー・デュヴァルにローリング・ストーン誌の記者役でディラン論を言わせたり
驚くぐらい厳しい事を言ってませんでした?
>可愛らしく、インテリジェンスで、洗練されたダイアン・キートンの笑顔
中学生・高校生の頃、映画雑誌「ロードショー」「スクリーン」を古本屋で買ってよく見ました。ダイアン・キートンの写真をよく見ました。当時は何で人気があるのかがわかりませんでした。でも今日この映画を見てよくわかりました。
2014.03.09 19:49 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 恥ずかしながら・・・。"
>蟷螂の斧さん 
どーもです。

ウディ・アレンの映画は小難しいイメージで、たしかに日本人には判らないジョークやシニカルな台詞の氾濫には抵抗があるのですが、クセになるのもたしか。
ダイアン・キートンは「ゴッドファーザー」で初お目見えでしたが、この作品での自然な笑顔を見ていると和むのですよ。
2014.03.10 18:11 | URL | #- [edit]

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