TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「台風クラブ」*相米慎二監督作品

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監督:相米慎二
脚本:加藤祐司
音楽:三枝成彰
挿入歌:「暗闇でダンス」「翔んでみせろ」Barbee Boys
    「Feel No Way」「Children of the World」
     P.J & Runnings
出演:三上祐一、紅林茂、松永敏行、工藤夕貴、大西結花、会沢朋子、淵崎ゆり子、谷川龍子、三浦友和、尾美としのり、鶴見辰吾、寺田農、小林かおり、きたむらあきこ、石井富子、佐藤充、佐藤浩市(友情出演)

☆☆☆★ 1985年/ディレクターズ・カンパニー/東宝、ATG/115分

    ◇

 ディレクターズ・カンパニーが公募したオリジナル・シナリオを相米慎二が担当。
 『魚影の群れ』『ラブホテル』のあとに(『ラブホテル』は本作の後に撮影されたが公開はほんの少し前だった)またしても「ガキの映画」かと思いきや、本作は、大人への扉を開きかけた中学生の思春期における不安定な心理と、台風の通過により学校に閉じ込められ高揚する少年少女らのエネルギーの炸裂を活写した傑作である。



 東京近郊のある町。木曜日、真夜中の中学校のプール。ひとり男子が、時折ポシャと音をたてながら、ゆっくりゆっくり泳いでいる。

 静寂のなか突然、更衣室から数人の女子生徒が水着姿で乱入してくる。理恵(工藤夕貴)、泰子(会沢朋子)、由美(谷川龍子)、みどり(淵崎ゆり子)、美智子(大西結花)の5人だ。持ち込んだラジカセのスイッチを入れると、大音量でバービー・ボーイズの「暗闇でダンス」が流れてくる。音楽に合わせ身体をくねらせ踊る少女たち。
 理恵がプールの中にいる明(松永敏行)を見つけ、泰子の指示で明はパンツを脱がされ、コースロープで身体を巻かれて溺れてしまう。
 近くをランニングしていた恭一(三上祐一)と健(紅林茂)が人工呼吸をして明は正気に戻り、みどりに電話で呼び出された数学教師の梅宮(三浦友和)からは叱られはするが、その場の話だけで片付いた。

 金曜日
 団地に住んでいる理恵と、近所の幼馴染み恭一が手を繋いで登校。恭一は「泰子たちとはあんまり付き合うなよ」と理恵を嗜める。
 梅宮の授業中。生徒たちはみんな好き勝手な事をしている。頭が少し幼い明は、鼻の穴に何本もの鉛筆を詰め込み鼻血を出す。
 そんな時、教室に中年の男女が押し掛けてきて、梅宮が自分の娘に金を貢がせているのに何故結婚しないのかと迫る。
 自習になった教室では、泰子とみどりと由美がベランダに出て「やなもの見ちゃったな」と話し合っている。
 下校時間。理恵は勉強をしている恭一の側で「台風来ないかなぁ」と話しかけている。窓枠に頭を挟み「痛い痛い」とふざける理恵に、恭一は「お前、最近ヘンだな」と呆れる。黒板にタヌキの絵を描きながら「どこかに行こうよ」と恭一を誘う理恵。拒否する恭一は「お前ヘンだな…最近」と再び言いおいて教室を出て行く。
 
 帰宅した恭一は東大に通う兄(鶴見辰吾)に哲学を問い、その夜、ランニングのついでに健の家を尋ねる。アル中の父親(寺田農)がいるだけのバラック家。建築用の足場の上で健は明と煙草を吸っていた。明が、泰子と由美が夜の教室で抱き合っていたのを目撃したと言う。「レズってどうするんだ?」と恭一。「う~ん………指入れるだよ」と健。
 女の話は好きな女子生徒の話になる。明は美智子が好きだと言えば、健も「俺もだ」と答える。
 健は、化学の実験中に美智子の制服の背中に熱した銅の欠片を入れて火傷をさせ、謝る健を尻目に通りかかった恭一にすがりついて泣いていた美智子を思い出していた。
 「理恵といい、なんでお前だけモテるんだ?』

 土曜日
 理恵を迎えに来た恭一だが、何度ブザーを鳴らしても返事がなかった。
 寝坊に気づいた理恵は急いで制服に着替えるが、突然諦め、スカートを脱ぎ、母親の部屋の布団の中に入りマスターベーションをはじめる。
 そして、学校に向う理恵は突然、踵を返しどこかに向う。

 学校では、泰子とみどりと由美が梅宮の授業には出たくないとボイコット。部室を出て行く。優等生の美智子は梅宮に昨日の説明を求め、授業が中断することで他の生徒たちと喧嘩がはじまる。

 いつしか、窓の外は風が強まり雨が降り出す。
 演劇部の部室で、外から戻ったみどりがびしょ濡れになった制服を脱ぎレゲエ(「Feel No Way」)に合わせて踊りはじめ、泰子と由美はレズごっこをはじめる。

 校内は台風の接近を知らせる放送により生徒たちは下校。
 梅宮との話合いをひとり教室で待っている美智子。
 そこに健が現れ、美智子は逃げ回る。美智子に惚れている健は彼女を職員室に追いつめ、彼女の制服を引き裂くのだが、美智子の背中の火傷の跡を見た途端、急に青ざめ暴れ狂うのだった。

 いつの間にか学校は全て施錠されてしまい、美智子と健を取りなす恭一らと、泰子、みどり、由美の6人だけが校内に取り残されていた。
 
 その頃、理恵は東京の原宿にいた。
 街で声を掛けてきた青年(尾美としのり)のアパートについて行き、無邪気に自分のことを話しているのだった。
 「わたし嫌なんですっ。閉じ込められるの。閉じ込められたまま年をとり、それで土地の女になっちゃうなんて、耐えられないんですっ」
 そして突然「帰ります」と言い出し、「いろいろありがとうございました。声を掛けてくれて感謝しています。さようなら」と土砂降りの雨の中、駅へ走り出す。
 しかし電車は、土砂崩れで不通になっていた。

 学校ではみどりと恭一が梅宮の自宅に、自分たちが学校に閉じ込められているのでどうしたらいいでしょうかと電話を入れるが、酔っぱらっている梅宮には通じない。
 「先生、ぼくは一度、あなたと真剣に話してみたかった。あなたは悪い人じゃないけど、でも、もう終りだと思います。ぼくはあなたを認めません」と宣言する。
 梅宮が「いいか若造。今はおめぇ、どんなに偉いか知らんけど、15年経てばこの俺になるんだ。あと15年の命だ」と言い放つと、恭一は「ぼくは、先生のようには絶対になりません、絶対に」と電話を切る。

 体育館に移動した6人。壇上に上がった泰子とみどりと由美と美智子は、ラジカセのレゲエ(「Children of the World」)に合わせてストリップを始め、健も恭一も一緒になって服を脱ぎ下着姿で笑い興じる。
 一旦雨の上がったグランドに出た6人は「もしも明日が」を大合唱し、再び降り出した雨の中では下着も脱ぎ捨て全裸になって踊り狂うのだった。
 深夜、制服に着替えた皆は、「台風が過ぎ去ったらどこかへ行こう」と話し合い眠りに就く。
 ひとり、起きて夜明けを待つ恭一。

 日曜日 朝
 みんなを起こした恭一は、みんなの日常の無目的さを指摘し「俺たちには厳粛に生きるための、厳粛な死が与えられていない。みんなが生きるために、俺が死んでみせる」と、窓から身を投じる。

 月曜日 朝
 台風一過の青空の中、理恵が登校してくる。
 途中で会った明から「今日は学校は休み」と聞かされるが、プールに泳ぎに行くという明について理恵も学校に向う。

 校門からみる木造の校舎は、朝陽を受けて輝いている。
 「まるで金閣寺みたい」と叫ぶ理恵。
 水たまりに逆さに映る校舎が、ジャブジャブとぬかるみを渡る二人の姿を迎えて映画は終わる……。


    ◇


 必ず自分たちも大人になるのだと認識しながらも、それに抵抗する力と、妥協する力の配分が上手くいかなくてどうしようもなくなる気持ちが、台風のエネルギーによって次第に高まっていくのが生々しく伝わってくる。
 実際、台風が来るというとワクワクして、何でもいいからぶち壊せって気持ちの高ぶりを感じていた時代をノシタルジックに思う自分がいる。
 だから理恵がポツリと言う「台風、来ないかなぁ」の台詞は見事にツボに嵌る。

 大人でもなく、子供でもない身体の中から湧き出てくる“性”と“生”。芽生えは大人になれば他愛ないことも、本人たちにとって深刻な気持ちが、あるところで暴力になったり、自己愛になったりする。彼らのエネルギーが哀しみを潜め画面を漂っている。時折バックに聞こえる水の音とか、雨の匂いを感じさせる木造校舎とか、風の音さえ官能的な情景になっている。

 愛情と狂気の境を見失った“性”は、健が美智子に対する行動で表現される。
 美智子が閉じこもる職員室の木の扉をガンガンと蹴りつづける健。長回しによる執拗なカメラは、健のいる廊下側から美智子のいる室内に移り、蹴られて穴のあいた隙間をカメラが潜り、健の足元を再び撮る長いシーンとなる。「お帰りなさい。ただいま」と呟きながら延々と蹴る健の姿には、もはや自分自身では抑えることが出来なくなった気持ちが痛い程見てとれる。

 オリジナルのシナリオと比べてみると、かなりの箇所を端折っている。特に東京に行った理恵のシーンは、シナリオでは電車が不通で帰れなくなったことで、ふたたびナンパ青年の部屋に戻ってくる。そこで恭一の話を詳しくすることで、恭一の自殺に意味付けがなされるのだが、相米監督は説明は不要として全面カットしている。
 自殺って本人以外には絶対に理解できるものではない。判らないからわからないようにした演出はこれでいいと思う。美化するわけでもなく、誰にだってある不可解で実感できない心象は、説明できるものではないのだから……。
 シナリオにおいては、グランドに落ちた恭一を泰子が抱きかかえるのだが、相米監督は『犬神家の一族」のパロディのように恭一の身体を逆さの両足屹立にし、ブラックユーモアで死をも吹き飛ばしてしまった。

 それまで真面目な好青年の役しか演じてこなかった三浦友和が、この作品では生徒たちから信頼と反発を得る無責任な教師役を演じている。
 恋人が台所で料理をしている手前の部屋で寝転がってクダ巻いている三浦友和が、近よってきた恋人に足を絡ませ倒して抱きつく長回しシーン。ほとんど大人が出てこない本編において、模範にもならない大人のダメさ加減がいい。

 中学生の男子女子の喫煙シーンが何度もあったり、少女同士のキスやオナニーとレイプ紛いのシーン、果ては少年少女たちが裸になったりと、そういった騒乱をリアルな中学生として14歳から17歳の子役・俳優たちが見せてくれる。今ではこの年代の子供たちには演じさせられない規制があるだろうが、この時代のこの魅力は何にも代えられない個性と瑞々しさとして輝きを放っている。
 因みに、恭一役でデビューした三上祐一は鶴見辰吾の実弟で、兄弟での共演シーンはリアルそのものだったのだろう。

 友情出演とクレジットされた佐藤浩市は、駅員としてワンシーンに映るだけである。




[相米慎二作品]
★ションベン・ライダー★
★魚影の群れ★
★ラブホテル★

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Comment

蟷螂の斧 says... "三浦友和"
リアルタイムで映画館で見ました。

>ほとんど大人が出てこない本編において、模範にもならない大人のダメさ加減がいい。

そうなんですよ!
百恵・友和コンビの恋愛映画なんてどうでもいい!
彼はこの映画で躍進しました。

>それまで真面目な好青年の役しか演じてこなかった三浦友和が、この作品では生徒たちから信頼と反発を得る無責任な教師役を演じている。

相米監督に感謝!
2013.03.09 18:30 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 三浦友和"
蟷螂の斧さん  ドーモです。

>それまで真面目な好青年の役しか演じてこなかった三浦友和

ひとつ忘れていた作品がありました。
1981年公開の『獣たちの熱い眠り』という作品です。
この作品は勝目梓原作のハードボイルドで、冒頭から激しいベッドシーンあり、ヴァイオレンスありの三浦友和最初のイメージチェンジとなる東映での映画で、スタッフは監督村川透、脚本永原秀一、撮影仙元誠三といった、一連の松田優作映画の陣営で撮影された意欲作でした。
しかし、イメチェンが性急過ぎたのか、東映の水になじんでいなかったのが惜しい作品でした。
それ以前にも、爽やかな顔とそれに隠れた影のある男を演じていた『黄金のパートナー』('79/東宝)って映画もありましたが、やはり、この『台風クラブ』のような日常のなかで幻滅されるような大人を演じたことこそ、三浦友和にとってのターニングポイントでしょうね。

2013.03.10 17:32 | URL | #- [edit]
蟷螂の斧 says... "『獣たちの熱い眠り』"
テレビで見ました。プロテニスプレイヤー役。

>イメチェンが性急過ぎたのか、東映の水になじんでいなかったのが惜しい作品でした。

そうですよね。台風クラブの4年後。東映の「悲しきヒットマン」でも頑張っていたのですが、作品自体が・・・・。

>冒頭から激しいベッドシーンあり、ヴァイオレンスあり

三浦友和も頑張っていたのですが・・・・。

>『黄金のパートナー』

一度見たいと思っているのですが、残念ながら未見です。

「アウトレイジ ビヨンド」で彼は良い演技をしていました。栄枯盛衰・・・・。
2013.03.10 20:21 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 『獣たちの熱い眠り』"
蟷螂の斧さん 

『黄金のパートナー』は、藤竜也と紺野美沙子と三浦友和の日本版『冒険者たち』でしたが、この作品を探すより西村潔監督を見るべきとして『死ぬにはまだ早い』と『白昼の襲撃』のDVD化を望んでください。
2013.03.11 15:48 | URL | #- [edit]

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