TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ションベン・ライダー」*相米慎二監督作品



監督:相米慎二
原案:レナード・シュレイダー
脚本:西岡琢也、チエコ・シュレイダー
音楽:星勝
主題歌:「わたし・多感な頃」河合美智子
挿入歌:「スクール・デイズ」永瀬正敏
出演:藤竜也、河合美智子、永瀬正敏、坂上忍、鈴木吉和、原日出子、桑名将大(正博)、木之元亮、財津一郎、村上弘明、寺田農、宮内志麻、伊武雅刀、きたむらあきこ、倍賞美津子

☆☆☆★ 1983年/東宝、キティ・フィルム/118分

    ◇

 『翔んだカップル』『セーラー服と機関銃』につづく、相米慎二監督の〈ガキ映画3部作〉の第3作。
 生来の喰わず嫌いから、先の『翔んだカップル』『セーラー服と機関銃』をスルーしていた当時、リアルタイムで初めて相米作品を観たのがこの映画だった。
 冒頭から「えっ?ナニ,何?』と目を疑う感覚になり、不可解でありなんとも魅力に富んだ映画なのである。


 ジョジョ(永瀬正敏)、辞書(坂上忍)、ブルース(河合美智子)の3人は、日頃イジメられているガキ大将のデブナガ(鈴木吉和)に仕返しをしようと考えていた。ところが、デブナガが3人の面前で暴力団に誘拐されてしまった。
 「デブナガへの仕返しを諦めるかって?」「冗談じゃない!」
 3人はデブナガとの決着をつけるために奪還作戦を決めた。
 横浜へ行った3人は、派出所の田中巡査(伊武雅刀)と知り合い、デブナガのオヤジが覚醒剤の精製をやっていていたために、組み同士の争いにデブナガが誘拐されたことなどを知る。巡査の誤解から3人は覚醒剤中毒の中年ヤクザを紹介される。巌兵(藤竜也)という名のそのヤクザは、組長(財津一郎)からの命令でデブナガを誘拐した山(桑名将大)と政(木之元亮)を追っていた。
 ブルースと辞書は、担任のアラレ先生(原日出子)が研究会で滞在する熱海を経て名古屋へ。ジョジョも別行動で巌兵を追って名古屋へ。
 熱田神宮近くの運河の貯木場に集結した5人は山と政を追いつめるが、逃げられる。
 怪我をした巌兵を含め組長の世話になるジョジョとブルースと辞書とアラレ先生だったが、デブナガの居所の情報を得たアラレ先生までが山と政に拉致されてしまった。3人は虚しく横浜へ戻る。
 覚醒剤中毒になった田中巡査と再会した3人は、山と政らが隠れている覚醒剤精製所を教えられ、乗り込むことに。デブナガとアラレ先生を救出するために大立ち回りを繰り広げ、果ては巌兵の再出現から銃撃戦に。山と政が死ぬなか、警察隊がやって来る……。

    ◇

 全編、ほとんどをワンシーン・ワンカットの長回しに徹した作法で、河合美智子、永瀬正敏、坂上忍らが、走り、跳び、踊り、歌い、弾む。すべてのシーンがドキュメンタリーのように嘘のつけない“画(絵)”となり、3人の少年少女たちの肉体が躍動する。ひとつの、アクション映画と云えよう。

 開巻から釘付けになるのが、約8分間のワンカットシーン。桑名将大と木之元亮がいる駐車場から道路へ、道路から学校のプールへ。辞書らをプールに沈めていたデブナガを捉えたカメラはそのまま校庭へ。校庭で爆音を鳴らし走り回る少年たちを追っかけているアラレ先生の原日出子。そこに水着から着替えた河合美智子、永瀬正敏、坂上忍が現れ、校門でデブナガたちと争いになる。桑名将大と木之元亮が再び登場し、別の車がデブナガをさらって行く。学校の外に走り出した河合美智子と永瀬正敏と坂上忍の背中をパンしたカメラが、校門に手書きされた「ションベン・ライダー」のタイトルを映し出す。
 興奮する以外にないこのシーンで、〈ストーリーを見るな、映画を感じろ〉と挑発する相米監督の気概が伝わってくるのである。
 まあ、ワンシーン・ワンカットにこだわり過ぎる監督の作品ははっきりと好き嫌いが別れるだろうが……。

 相米監督は公開当時のインタビューで「オトナが見たって意味ないこと。映画っても、子供が楽しめばいいんだから……」みたいなことを言っていた。アニメ『うる星やつら~オンリー・ユー』の併映作だという意識。だから好きなように撮るというスタンス。自由奔放に“遊んだ”映画ってことだ。だからって子供の映画なんかじゃない。
 現場では、大人が辛くなるような過酷な演出を、素人の中学生(永瀬正敏は当時高校1年)の4人にも強いる相米監督の執拗ぶり。すべてスタントマンなしだ。

 女の子がイヤでイヤでしょうがない少女役を1万数千人のオーディションで勝ち取った河合美智子(ブルースの本名がそのまま芸名になった)は、運河に架かる吊り橋の上から飛び降り、まだまだ可憐でお嬢様タイプの原日出子もワンピース姿のまま橋の欄干を跨いで飛び降りる。
 そして、語り種となっている貯木場での追っかけに繋がってゆく。
 舟からのカメラがゆっくり横移動していくなか、貯木場を河合美智子、永瀬正敏、坂上忍、原日出子、桑名将大、木之元亮ら主要人物たちが走り、何度も何度も川に落ちる。みんな本気で演っている。遊んでいる。付き合わされるのが大変と、藤竜也だけは悠々と歩いているのが面白い。
 穀潰しのような中年アウトローは『野良猫ロック』の成れの果てか。

 原日出子と村上弘明が桑名&木之元のアジトに乗り込むシーンの長回しは、低い位置からのカメラが真夜中から朝方までの時間をワンカットで見せる。相米監督の師匠でもある曽根中生監督の『天使のはらわた 赤い教室』での安旅館シーンを彷彿とさせてくれる。

 「手柄たてたと思うなよ」
 刑事に向かってデブナガが叫ぶラスト。画面の右端にポツンと置かれた「、」のエンドマーク。映画は、歪んだ大人の世界に迷い込んだ少年少女が、冒険の末に得た変貌と感傷と哀切で終わる。

 先のインタビューで相米監督は「これでガキの映画はお終い」と語り、この年の暮れ、骨太な人間ドラマ『魚影の群れ』を発表した。

    ◇
 
★天使のはらわた 赤い教室★

[相米慎二作品]
★魚影の群れ★
★ラブホテル★

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Comment

蟷螂の斧 says... "長回し!"
とにかく役者さんにとってもスタッフにとっても体力勝負です!
吊り橋の場面だけではないですね。
役者さん達の演技力が試される。
失敗が許されない舞台演劇のようです。

僕は独身時代、名古屋市大須の七ツ寺共同スタジオで演劇をよく見ました!熱かったです!
2013.02.25 21:29 | URL | #AU7zw/Lo [edit]
mickmac says... "Re: 長回し〜ショー・マスト・ゴーズ・オン"
蟷螂の斧さん 

> 失敗が許されない舞台演劇のようです。

一度上がった幕は、どんなことがあっても芝居を止めるな………
「ショー・マスト・ゴーズ・オン」です。

子役からドラマを演っていた坂上忍は後年、相米監督から「台詞を忘れても止めるな」を身体をもって教えられたと言ってますし………河合美智子は、違うシーンの台詞を喋っていた箇所もあったと告白していますね。(それが使われたかどうかは不明ですが……笑)
2013.02.26 12:38 | URL | #- [edit]
蟷螂の斧 says... "吊り橋の場面"
「危ない!落ちたら、どうするんだ!」と思ったら、どんどん飛び降りる。

>運河に架かる吊り橋の上から飛び降り、まだまだ可憐でお嬢様タイプの原日出子もワンピース姿のまま橋の欄干を跨いで飛び降りる。

驚いたような、ホッとしたような・・・・。

>相米監督

やっぱり「台風クラブ」が一番好きです!
映画館で見て、本当に良かった!
見た数日後に大失恋・・・・。
2013.02.27 22:03 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 吊り橋の場面"
蟷螂の斧 さん

> やっぱり「台風クラブ」が一番好きです! 映画館で見て、本当に良かった!

中学生というと思春期を一番実感する時期。この映画をリアルに感じるか、中学生がガキ過ぎると一蹴するかは、観る側の年齢にもよるのでしょうか。
あの時代の大人が顧みた中学生の姿に普遍性を感じたものですが………。
2013.03.01 00:19 | URL | #- [edit]

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