TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ストロベリーナイト」*佐藤祐市監督作品

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原作:誉田哲也「インビジブルレイン」
脚本:龍居由佳里 林誠人
監督:佐藤祐市
音楽:林ゆうき
出演:竹内結子、西島秀俊、渡辺いっけい、高嶋政宏、遠藤憲一、小出恵介、丸山隆平、 生瀬勝久、宇梶剛士、武田鉄矢、津川雅彦 / 大沢たかお、染谷将太、金子賢、鶴見辰吾、石橋蓮司、田中哲司、柴俊夫、今井雅之、伊吹吾郎、金子ノブアキ、三浦友和

☆☆☆★ 2013年/フジTV・東宝/127分

    ◇

 暴力によって地獄を見せつけられ、大きな闇を抱えた男女の物語。
 “姫川玲子シリーズ”待望の映画である。


 東中野にあるマンション一室にて男の惨殺死体が発見された。被害者は指定暴力団の下部組織構成員・小林充。数日前に見つかった別の2件の殺しと手口が似ていた。
 被害者たちが暴力団構成員だったころから組同士の抗争が疑われ、組織対策四課との合同捜査となるが、姫川(竹内結子)には何か違和感があった。
 そんななか、姫川は「小林殺しは柳井健斗」というタレ込み電話を受けた。入院中の今泉係長(高嶋政宏)に報告するものの、翌朝、橋爪管理官(渡辺いっけい)からは「柳井健斗には一切触れるな」と厳命を受けるが、納得のいかない姫川は単独捜査をはじめる。
 柳井健斗とは、9年前に起こった事件の被害女性・柳井千恵の弟。事件の重要参考人だった父親の柳井篤司が、警察署内で警官から拳銃を奪って自殺していた。最終的に検察と警察が選んだのは、被疑者死亡により不起訴という幕引き。今回殺された小林充は柳井千恵の元恋人だった。
 柳井健斗のアパートを張る姫川は、そこでマキタと名乗る男(大沢たかお)に出会う……。

    ◇


 全編に降りしきる雨が、映画ならではの映像美となり、時に甘く、時に狂気となり登場人物たちを包み込んでゆく。

 『インビジブルレイン』が本来映画のタイトルとなるのだろうが、本作はテレビ・ドラマシリーズに倣ったままに『インビジブルレイン』はエピソードタイトルとしている。
 劇場版だからといってダイナミズムを打ち出したりスケールアップすることなく、まずは好感をもてた。(『相棒/劇場版』の1作目で大きな失敗があったことを思えばである)
 良しも悪しきも、ドラマ『ストロベリーナイト』の世界が展開する。

 ドラマ&映画において『ストロベリーナイト』というタイトルで貫いているのは、何をおいても姫川玲子にとってのトラウマ、屈辱の夜と真っ赤な月を象徴していることだ。
 姫川自身、常に“ある殺意”を腹の底に沈め、心に烙印を押し、生きてゆくことの重しにしている。この姫川玲子の感情こそ、男社会の警察組織において自分を駆ることのできるエネルギーであり、闇を孕んだものへの共通観念となり犯罪者の暗部に近づくことができる源だ。

◆以下ネタバレあり

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 青年期に両親を自殺に追い込んだ男たちを殺した牧田(大沢たかお)は、同じように復讐の刃を持つ柳井(染谷将太)に共感し、姫川に対しても自分と同じ“ひと殺し“の匂いを嗅ぎとっている。姫川も、牧田の闇を理解することができる哀しい存在だけに、このあと禁断の関係に陥ることになるのだが、原作では牧田に身を任せながら指で弄られ感じてゆく姫川の様子が克明に記されるが、いざその瞬間に今泉からの電話でおあずけを喰って終わる。
 しかし映画は、車中でのセックスにまで及ぶことになる。これは、今後の警察官としての姫川の精神的感情にも及ぶだろう事柄なのだが、姫川が牧田に惹かれてゆく様が小説よりリアルに描かれるので、これはこれでアリかなと思う。

 このラブシーンにおいて姫川は、牧田に「殺して……」と囁く。
 ふたつの意味を成す最高の台詞と、竹内結子の妖しい表情にはゾクリとくる。
 お互いの心にある空白を埋めるかのような激しい愛は、地獄を知らない者として理解もできないであろう菊田にとっては辛い現実である。
 自分が堕ちていくのを何とか留まらせてくれるだろう菊田の手を払う姫川。
 菊田、切ないよなぁ。
 西島秀俊が原作よりいい感じなので、余計に哀しいショット。
 菊田は、精一杯に心の均整を保ちながらある決心をする。これは、この後の「ブルーマーダー事件」で新たな展開に繋がるのだが………。

 刃のように軀に突き刺さるシャワーを浴び苦悩する姫川玲子……体現する竹内結子の凄みある美しさに感嘆する。


 少し不満だったのは、橋爪管理官や今泉係長、ガンテツまでが一目おく和田課長(三浦友和)の存在が、原作よりかなり希薄になっていたことか。今泉係長が入院する病室のワンシーンだけで説明されても、何のこっちゃと思うのではないかな。
 和田課長と懇意にする新聞記者とのエピソードもなく、ラストシーンの悪しき警察官僚の長岡刑事部長(田中哲司)を道ずれにするカタルシスも大きく得られなかった。
 
 さて姫川班解散後のエピソードは、26日のスペシャル・ドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』においてオムニバスで描かれ順調。

 凛々しく、美しく、強く、哀しい女性、姫川玲子の魅力はまだまだ続く………

 今後は『ブルーマーダー』を軸に、姫川玲子の捜査一課復帰までの“シーズン2”を期待し、楽しみに待とう。


★Book Review「インビジブルレイン」★
★Book Review「ブルーマーダー」★



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