TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

底辺叩けばみんなが泣く、「あるアングル・トライアングル」内藤やす子

内藤やす子_サタデークィーン
サタデークイーン

side A
01. 火のこ
02. あるアングル・トライアングル
03. 私のいい人
04. 酔ヶ浜
05. サタデー・クィーン

side B
01. ふるさと心中
02. 欲望
03. 主は変われど
04. 三番列車で
05. F#m



 全詞・曲を宇崎竜童&阿木燿子に委ねた1977年リリースの内藤やす子3枚目のアルバムは、前作『ないないづくし』を発展させた“カタカナ・エンカ”の本領を発揮し、4ビート・ジャズにはじまり、ワルツ、ボサノヴァ、ロック、フォーク・カントリー、スローブルーズ、そして、ビート歌謡から日本民歌調までヴァラエティに富んだ曲群が詰まっている。

 LP帯には笑えるほど死語となる「ナウでクールな世界に挑戦」の惹句。
 宇崎竜童と阿木燿子と内藤やす子のトライアングルが織りなす、弾きたかったメロディと、描きたかった詞と、歌いたかった歌。三人がその瞬間に創り出したかったものが、高い完成度を持って昇華している名アルバムである。
 阿木燿子の詞の世界は、暗く、哀しく、地を這うように奥深い。

 終電近くの電車の中で、よくある話のように男と女が知り合い、子供へのケーキを持った男と重い荷物を持った女が、冗談のつもりで深い仲になる。電話は困るよと云われても、もう手遅れ。
 男に降りかかる“火のこ”のような女の歌「火のこ」から、タフで、したたかで、しなやかな女たちの歌がつづいていく。

 山口百恵の「絶体絶命」('78)のような修羅場ではないが、トライアングルな相関世界を描く「あるアングル・トライアングル」は、「手のひらの中の地図」の構成を変形させた手法で主人公が時間軸を飛び越える。

 こういう時に 男はどうして黙るのだろう
 こういう時に 女はどうして泣き出すのだろう
 私と云えば 初めての煙草に火をつける

 夕暮れ間近のコーヒーショップの窓際の席。男と愛人を前に醒めた態度をとる女。その時ふと、女は幼かった日を思い出す。 
 小学校のときの音楽の時間。花形の楽器はみんなに取られ、いつも、人気のないトライアングルを叩いていた思い出。
 時間は過ぎ、「嗚呼、どうしてこうなっちゃったんだろ」とため息をつく。自分を俯瞰する女の孤独が浮かんでくる傑作だ。

 「私のいい人」では命燃やした宴の後は男と女の仲なんて長くはつづきはしないと歌い、「酔ヶ浜」は恋に酔いつぶれた女の火遊びを軽快なボサノヴァのメロディで歌う。

 酒には肴が要る 浜には魚が居る 
 銀の鱗を光らせて 波打ち際で跳ねるのさ
 今夜はどこの浜辺へ 泳いでゆこう

 美しく持て余した女の軀が、白いシーツの上で泳いでいる様が浮かんでくる阿木燿子の言葉遊びが光る名作。心地よく口ずさめる大好きな歌だ。

 三面記事に載るようなヤンチャをしてきた女が掴んだ小さな幸せも、どこか不安に揺れる「サタデー・クィーン」。そして、終電車に乗って来た女は「三番列車で」でどこかへ消えてしまう。

 ラスト曲の9分を超える「 F#m エフ・シャープ・マイナー」は、デビュー前の内藤やす子がビアガーデンで、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドと対バンでブルース・ロックを歌っていた姿に被せたスローブルース。JANIS JOPLIN の「BALL and CHAIN」のような余韻を持たせてくれる。

    ◇
内藤やす子×宇崎竜童
★ないないづくし★
★やさしさ尋ね人★
★One Last Night★

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