TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

エンカ×ブルースの兆し、「手のひらの中の地図」内藤やす子

 
ないないづくし

side A
01. ないないづくし
02. とまり木
03. 想い出ぼろぼろ
04. 手のひらの中の地図
side B
01. 心はどしゃ降り
02. 淋しい街に風が吹く
03. ジントニックをもう一杯
04. ぬけがら
05. いくじなし
06. さよならの町


 1976年リリースの内藤やす子セカンド・アルバムは、3枚目のシングルで大ヒットした「想い出ぼろぼろ」がLPの帯タイトルになっているが、アルバムタイトルは『ないないづくし』。
 A 面の4曲が宇崎竜童/阿木燿子とのコンビネーションで、収録曲の中で秀逸なのが7分以上に及ぶ「手のひらの中の地図」だろう。

 冬の道玄坂でふらりと手相を見てもらうと「男運が悪い」と告げられる女。
 酒場で真面目そうな男と知り合って、同棲するも男は勤めを辞めてギャンブル通い。女の蓄えも底をつき「今に楽させてやる」とうそぶく男は、どこかに消えた。
 ひとり頭の中だけで地中海、サンフランシスコ、シャンゼリゼ、ロンドン・ブリッジ、サハラ砂漠にシベリア、世界を旅する空想に耽る。
 夜の仕事に就いた彼女が、疲れた躰でふと手のひらを見てみると、そこには「男運の悪い」命の地図が見える………。

 空想の旅紀行を軽快に歌いながら、合間の語りでは人生の行き止まりに佇む女のやさぐれ具合を孤独感込めて独白する。
 まさに〈カタカナ・エンカ×ブルース〉の兆しでもあるトーキング・ブルースだ。

 70年代の宇崎竜童/阿木燿子の世界観は、人生のどん底と荒んだ生活を送る者たちの喪失感と居直り。ひとりぼっちでは生きていけないが、タフにひとりぼっちでも生きるしかないと言っている。
 軽佻浮薄な80年代と違ってこの時代をリアルに、歌に体現したのが内藤やす子であろう。
 1976年6月にリリースされた山口百恵の『横須賀ストーリー』と、10月に発売された内藤の『想い出ぼろぼろ』。宇崎竜童/阿木燿子コンビにとって最強の歌い手ふたりであった。


 内藤やす子が脳内出血で倒れ、後遺症のリハビリのために音楽活動を休止にしてから6年以上が経つ。
 演歌、歌謡曲、ブルーズ、ロックと何でも歌える内藤やす子のCDを探してみると、ベスト盤ばかりで少し寂しくなる。それも80年代以降のものばかりだ。
 80年代以降「こころ乱して運命かえて」や「ラヴ・イズ・オーヴァー」「六本木ララバイ」などヒット曲も多いので不満はないものの、「弟よ」「想い出ぼろぼろ」は80年代以降に吹き込み直したヴァージョン。
 やはり初期のコロムビア時代の傑作にもっと陽の目に当てて欲しいよ。伸びのあるハスキーヴォイスは、後年のシブさにも勝る魅力なのだから。

 この「手のひらの中の地図」をはじめ、コロムビア盤の曲はCD『エッセンシャル・ベスト』で聴くことができるが、1970年代のオリジナルLP『すきま風』『ないないづくし』『サタデー・クィーン』『ONE LAST NIGHT』『やさしさ尋ね人』はすべて名作、傑作なのだから、ぜひともオリジナル形態で復刻してもらいたい。

    ◇
内藤やす子×宇崎竜童
★サタデークィーン★
★やさしさ尋ね人★
★One Last Night★

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Comment

路傍の石 says... "無題"
内藤やす子のオリジナルLPを手に入れたとき、拙の勤務先は倒産寸前で気持ちが荒んでいたことを思い出しました(笑)。今からちょうど6年前の年の瀬が迫る師走でした。あの頃は何もかもがうまくいかなくて。そのときの記事が拙ブログに残っていて、そこにはmickmacさんからいただいたコメントもあります。

http://blog.livedoor.jp/mickbanzai/archives/50722339.html

今、アルバム『ないないずくし』を聴いています。初期の内藤やす子には木枯らしが吹く寒空が似合う。切なさも悲しみもすべてを丸呑みにして、それでもなおタフに生き抜く女のイメージかな。こんな音楽が21世紀の時代に流行るわけないのかも(笑)。

時代に埋もれさせないためにも、内藤やす子の完全リイシューをぜひ望みたいものです。
2012.12.16 00:30 | URL | #kwT5Bze. [edit]
mickmac says... "Re: 無題"
>路傍の石さん お久しぶりです。

>気持ちが荒んでいたことを思い出しました(笑)。あの頃は何もかもがうまくいかなくて。

宇崎竜童×内藤やす子の記事、よく覚えています。
ブログ記事の荒みかたも半端なかったですよね(笑・失礼)。
翌年に、某オフ会でお会いしたのも思い出しました。
あの時、もっとお話ができればよかったんですが……。ぼくも自分のことしか考えていなかったし。

>初期の内藤やす子には木枯らしが吹く寒空が似合う。切なさも悲しみもすべてを丸呑みにして、それでもなおタフに生き抜く女のイメージかな。こんな音楽が21世紀の時代に流行るわけないのかも(笑)。

歌が時代に包まった言霊として、凄みと哀しみを投げつけてくるような音楽は、もう流行らないですよね。
でも、だからこそ、いま内藤やす子の歌が沁みてきます。
復活も期待したいです。

2012.12.16 19:16 | URL | #- [edit]

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