TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ミスターグッドバーを探して」*リチャード・ブルックス

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LOOKING FOR MR.GOODBAR
監督:リチャード・ブルックス
原作:ジュディス・ロスナー
脚本:リチャード・ブルックス
主題歌:「Don't ask to stay until tomorrow」マリーナ・ショウ
出演:ダイアン・キートン、チューズデイ・ウェルド、ウィリアム・アザートン、リチャード・カイリー、リチャード・ギア、トム・ベレンジャー
☆☆☆☆ 1977年/アメリカ/135分

 〈愛なんて探しはしない〉
  シングル・バーの片隅で
  何を求め、待つ…………
  テレサはひとり…………

 70年代はウーマンリブによる性の解放の時代でもあった。
 1974年の『アリスの恋』から始まった“女性映画”と言われる作品にも、30代以上の女性の自立した生き方として、それまでタブーでもあった女性の“性”に踏み込んだ作品が数作られた。
 本作の原作は、マンハッタンで実際に起きた殺人事件を題材にしたジュディス・ロスナーのベストセラー『ミスターグッドバーを探して』(翻訳は推理作家の小泉喜美子)。大都会で孤独に生きる女性の赤裸々な性意識を扱ったもの小説で、映画も、女性の新しい倫理観を持ったヒロインが、さらに新しい性の倫理の前に哀しい運命を迎えるドラマだった。

 昼は聾唖学校に通い、夜は酒場で行きずりのセックスを求めるといった二重生活をするテレサ(ダイアン・キートン)。
 6歳のとき小児麻痺が原因で片足が不自由になったが、大手術により歩けるようになった。彼女は病気が遺伝性のものと感じ、いつ再発するかもしれないという不安にさいなまれている。
 短大に通っているとき、クラスで憧れの的だった妻子持ちの教授と付き合いヴァージンを捧げるが、ふたりの仲は長持ちはしなかった。
 テレサの姉キャサリン(チューズデイ・ウェルド)はドラッグや乱交パーティに明け暮れる奔放な女だったが、テレサは姉を理解しようと努めていた。姉の生き方に染まっていくテレサに対して厳格な父親は怒り、それをきっかけに家を出ることになったテレサは一人暮らしをはじめる。
 以来、昼は聾唖学校の教師になるための教習所、夜はシングルバーでの生活がつづいているのだった。何かを期待するでもなく、ただ孤独の中で過ごすテレサは、ある夜、トニー(リチャード・ギア)という若者と知り合い、ドラッグを使っての激しいセックスで初めてエクスタシーを味わう。粗暴で暴力的なトニーだが、彼から与えられるドラッグの虜となるテレサは、神学校に通う真面目な若者ジェームス(ウィリアム・アザートン)と知り合い、何とかトニーと別れることができた。
 しかし、テレサが得た性の倫理観は彼女の病気による不安から生まれたもので、自分と同じような子供を産む恐怖から不妊手術までして性の解放を体現しているなかで、トニーのような無軌道な男には共感できても、セックスにコンドームを使用するジェームスは古い倫理観の男にしか映らなかった。テレサの気持ちは冷める一方だった。(但し、これは未だHIVが発見される数年前の話だということ)
 ふたたび夜の街にくり出すテレサ。ゲーリー(トム・ベレンジャー)という男を誘うが、彼はホモの中年男の情夫。テレサはベッドでエレクトしないゲーリーを嘲笑う。侮辱され逆上したゲーリーは、テレサを血まみれになるほど殴りつづける。そして、暴力に興奮し、テレサを犯し、ナイフでテレサの胸を刺しつづけるのだが、テレサの顔には安息を得た笑みさえ浮かんで見えるのだった……。

    □

 『ゴッドファーザー I & II』『ボギー!俺も男だ』で注目され、アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した『アニー・ホール』で知的女性の代表格のようになったダイアン・キートン。『アニー・ホール』撮影後に主演したこの作品では、ヌードも厭わずセックス依存症の女性に挑んだわけで、なにもアカデミー賞を受賞する前だからと言うこともなかろうが、その体当たりの姿勢に感服する。

 監督のリチャード・ブルックスは、エド・マクベイン原作の『暴力教室』('55)で監督デビューをし、テネシー・ウィリアムズの『熱いトタン屋根の猫』('58)、トルーマン・カポーティの『冷血』('67)など、社会派の問題作を多く手がけた監督。
 この映画はリチャード・ブルックスが65歳の時の作品で、テレサのような女性のモラルを非難するのではなく、一生懸命に生き抜いた女の姿を見つめることで、不完全な人間だからこそ引き起こす人間模様や男と女の心理に注視している。それが、汚れ役ともなるダイアン・キートンから最高の演技を引き出すことに成功している。

 映画出演2作目のリチャード・ギアは翌年に出演した『天国の日々』('78)で注目され、『アメリカン・ジゴロ』('78)や『愛と青春の旅だち』('82)へと繋がっていく。
 トム・ベレンジャーは、残念ながらまだまだ長い下積み生活がつづく。

 映画のエンディングに流れるのは、メランコリックでありドラマティックな語り口で情感が盛り上がるマリーナ・ショウの名唱「Don't ask to stay until tomorrow」。ほかにも劇中にはボズ・スキャッグスの「Lowdown」や、ライオネル・リッチーが在籍していたコモドアーズのインスト曲「Machine Gun」、バリー・マニロウが作詞作曲したドナ・サマーの大ヒット曲「Could it be magic(恋はマジック)」などが流れ、1970年代の空気全開である。

 因に〈MR.GOODBAR〉とはスラングで男性性器のこと。
 キワモノ映画のような不当な扱いで、2012年現在DVD化もブルーレイ化もないのが寂しいのひと言である。(ビデオ化は一度された)


1978_03_ミスターグッドバー
★アリスの恋★
★結婚しない女★


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Comment

zebra says... "知らない人に ついていくのは やめましょう。"
ばかばかしいと 思われるかもしれませんが
この映画を見て見て思ったこと・・・

「知らない人には ついていかないこと・・・」。
子供のころ親や学校の先生から 生活指導の時間にうるさいほど言ってたのをハッキリとおぼえてますが・・

大人になっても 守ることだと断言しました。

たしかに大人になれば誘拐目的はないとしても 完全に安全だというワケではない・・・
大人になれば 自分で行動できるが その反面 みたくもない人間の心の闇や危険な状況も社会人になって次第にわかるようになってゆく・・・

このキートン演じたテレサも その危険な人間の闇というか危険があることに気づかず あまりにも無頓着すぎたといわざるを得ないですね。
2014.04.27 20:11 | URL | #ngCqAwRo [edit]
mickmac says... "Re: 知らない人に ついていくのは やめましょう。"
zebraさん
はじめまして

当時この映画を観たとき、シングルバーで男漁りをする奔放な女性の生き方には、倫理的に日本ではありえない女性の自立だなと、遠い国の出来事として捉えていましたが、何のことはないそれから10年経って湧き上がったバブルによって、日本も欧米に肩を並べるくらい性の解放が浸食してしまいました。

「知らない人についていかないこと」
テレサは確信犯的に行動していたでしょう。
快楽と危険の狭間で自分自身を見つけるための行動……それがテレサにとってのアイデンティティ。
たしかに、それは哀しい生き方だと承知できますが、底知れない不安と孤独を抱えた人間の姿として、ある意味尊い生き方だったのでしょう。
2014.04.28 12:34 | URL | #- [edit]

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