TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「黒い賭博師」*中平康監督作品



THE BLACK GAMBLER
監督:中平康
原作:野村敏雄
脚本: 小川英、中西隆三
撮影: 山崎善弘
音楽: 伊部晴美
主題歌:「賭博唱歌」小林旭
挿入歌:「遠い旅」小林旭
出演: 小林旭、冨士真奈美、小池朝雄、益田喜頓、横山道代、谷村昌彦、榎木兵衛、野呂圭介、玉川伊佐男、高橋昌也

☆☆☆ 1965年/日活/86分

    ◇

 1964年の『さすらいの賭博師』から始まった“ギャンブラー氷室浩次シリーズ〈全8作〉”の第6作目で、映像のモダニスト中平康が監督したコミック・アクションの快作。


 何年ぶりかに東京に舞い戻った氷室浩次(小林旭)は、某国大使歓迎レセプションでギャンブラー犬丸(小池朝雄)と情婦の玲子(冨士真奈美)をセブンブリッジの大勝負で打ち勝った。腹の虫が納まらない犬丸は、玲子に氷室を誘惑して彼のテクニック(イカサマ)を見破ってこいと命じる。

 玲子に付きまとわれる氷室だが、ある日、命を狙われているという白人女性ニーナを助けるべく、中国人ギャンブラーのモノクルの楊(高橋昌也)とポーカー対決をするのだが、楊のイカサマを見破ることが出来ず大敗してしまう。
 氷室は資金集めに奔走する一方、相棒の一六(榎木兵衛)に楊の身元を探らせる。しかし数日後、馴染みの刑事花田(谷村昌彦)から一六の死を知らされる。
 バーのママ時子(横山道代)のベッドの中で楊のトリックのヒントを見つけた氷室は、楊と再戦し見事にイカサマを看破し雪辱を果たす。
 楊は国際賭博団[マルコム]のひとりで、実はニーナも賭博団の仲間で一六は彼女に殺されたのだった。

 [マルコム]が日本の市場を荒らすためにやって来た。
 世界一のギャンブラーになるチャンスと発奮する犬丸は、敵視する氷室の左手を痛めつけるが、氷室は痛めつけられた左手を克服し[マルコム]が仕切る秘密パーティーに乗り込むのだった……。

    ◇

 本作以前のシリーズ(渡り鳥シリーズを引きずった孤高のヒーロー)とはうって変わって、当時花盛りだったスパイ・アクション映画を下敷きに、中平監督の洒落っ気の効いたドライな感覚で創りあげたスーパー・ギャンブラーの登場である。

 首都高速での追跡シーンでは、オープンカーから大量のパチンコ玉をこぼしながら敵の車をかわすアクションとか、冨士真奈美や横山道代らがボンドガール的存在でアキラに絡んだりと、まさに『007』からのアイデア拝借が楽しく、中平監督のスピーディなテンポとカッティングも冴え、スタイリッシュでコミカルな作品に仕上がっている。

 本作で撮影中に落下事故を起こし生死を彷徨う大怪我を負ったアキラであるが、以後もスタントなしのアクションでマイトガイは健在。
 翌年、長谷部安春監督のデビュー作「俺にさわると危ないぜ」でのオシャレ感覚といい、アキラは何をやっても超然としてスマートだ。

 洒落っ気で言えば、オープニング・タイトルの主題歌「賭博唱歌」が「自動車ショー歌」の歌詞をもじったもので、聴きもの。

  スマートボールでハンサムで    
  チョボイチけんかにスゴロクで
  コイコイ嫌いの色嫌い     
  サイコロリングとしゃれこんで 
  ダイスきダイスの一人旅 
  これぞ男の手本引き

  ブリッジヒップでグラマーで
  ペースはスロット遅いけど
  コイコイ狂いの色狂い
  オイチョカブった猫かぶり
  バッタバッタの男狩り
  これぞ女の手本引き

 レコードにはならなかったが、2005年リリースのCD『小林旭マイトガイトラックス 日本クラウンイヤーズ1964〜1970』に初収録されている珍品である。

AKIRA_mightyguytracksvol3.jpg


 元伯爵の益田喜頓が博打で身を崩し、借金のカタに娘の冨士真奈美を小池朝雄に差し出した謂れから、必至にギャンブルに打ち込む冨士真奈美は次第にアキラの虜になる。
 敵になったり味方になったり、妖艶なヒロイン冨士真奈美が美しい。

 コメディリリーフの横山道代も絶妙だし、モノクル(片眼鏡)を嵌めた高橋昌也の胡散臭さもいい。
 テンション高い小池朝雄は敵役ながら憎めない存在。最後、益田喜頓からのリベンジに負けて娘を親に返すも、やっぱりギャンブラーは素人になんか負けないのだ。ステキな勝負師である。

 映画のクライマックスは「ダイス・スタッキング」と「カードシャッフル」。
 「ダイス・スタッキング」とは、5個のダイスを机の上に置き、それをダイスカップで広いながらシャッフルし、カップを持ち上げた時、5個のダイスが積み重なっているというテクニック。
 最上なのはダイスの目が全部揃うことだが、ホントにそんなことできるのかって?
 昔はバーなどで見かけたテクニックで、子供の頃繁華街に住んでいたぼくは、父親が馴染みにしていた近所のバーで見たことがある。カードマジックさながらに子供でも虜になる遊びだ。

 アキラたちがイカサマ勝負をする「カードシャッフル」は、マジシャンたちの必須のテクニック。バラバラのカードを何度もシャッフルしながら、キングからエースまで順番に揃えるものだ。どれもテクニックの問題で、ギャンブラーとマジシャンは紙一重である。

 本編でのアキラのダイス・テクニックはカット割があるので実際に本人が演っているのかどうか定かではないが、昔、TVで「ダイス・スタッキング」を披露したところを見たような記憶があるのだが……。

★俺にさわると危ないぜ★

[中平康監督作品]
★月曜日のユカ★
★泥だらけの純情★
★猟人日記★
★砂の上の植物群★

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Comment

ひまわり says... ""
こんばんは。突然ですが、最新の映画芸術に石井監督の二本の新作の事が載ってました!寺脇研さんと角川のプロデューサー大森氏勝さんの対談です。記事を読むと益々期待が高まります!
2012.11.06 02:37 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
>ひまわりさん

『映画芸術』は「脱ロマンポルノ幻想」の対談のところしか読んでいなかったのですが………。
石井映画のこと、少し語っていますね。
2本とも角川映画なんだ。

石井隆が強い倫理観で構築し直したという大石圭原作が、どんな風になっているのか楽しみです。
そして、ヒロイン。
原作者が語るには「綺麗で、スタイルのいい、人気のあの人」とのこと。
キャスティング発表が待たれますね。
2012.11.06 17:30 | URL | #- [edit]

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