TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「Aサインデイズ」*崔洋一監督作品

Aサインデイズ_pst

監督:崔洋一
脚本:崔洋一、斎藤博
原作:利根川裕「喜屋武マリーの青春」
出演:中川安奈、石橋凌、大地康雄、余貴美子、広田玲央名、SHY、中尾ミエ、川平慈英、亀渕友香、伊藤淳史(子役)

☆☆☆☆ 1989年/日本・大映/111分

    ◇

 アメリカの占領下にあった沖縄を舞台に、Aサインバーと呼ばれる米軍から風俗営業の許可をもらったバーでロックを歌う若者たちの青春群像劇で、沖縄に在住するロックヴォーカリスト喜屋武マリーの半生を描いた利根川裕の「喜屋武マリーの青春」を原作とし、『血と骨』の崔洋一監督が演出した音楽映画。

 1968年、定時制高校に通うハーフのエリー(中川安奈)は、Aサインバー「NEW STAR」のバンド“バスターズ”のリーダーのサチオ(石橋凌)に惹かれている。母親(中尾ミエ)は父親の国“ステイツ”に行こうと誘うが、エリーは自分の意志で沖縄に残る。一年後にサチオと結婚し男の子が産まれるが、女と金にだらしないサチオとの生活は苦しい。ある日大喧嘩をするふたり。サチオはエリーをたしなめ、彼女をバスターズのステージに上げることにする。

 血ヘドを吐き喉を潰しながらリハーサルをするシーンの緊張感が、エリーがヴォーカリストらしくなっていく様とともに心に残る。何度もくり返し歌われる『スージーQ』は最も印象深いだろう。

 エリーのヴォーカルで人気も上々になるバスターズだが、時代はロックンロールだけでは満足できないところに来ていた。新しい音楽の追究を目指すミュージシャン。メジャーを目指す仲間たち。そんな波に乗れないサチオはひとり孤立してゆき、いつしかバンドは解散。
 沖縄が本土に返還されることでいたるところで開発工事が始まり、サチオはそんな現場で肉体労働に従事するが、昔の仲間が尋ねてきたり、エリーが子どものために音楽を始めるたびに苛立つ。
 そしてある日、ダンプカーの交通事故でサチオが入院。
 
 ドラムのミッキーがもう一度バンドを再開させようと持ちかけるのは、サチオが元気な姿になってからのこと。エリーは承諾。しかしサチオには、錆びついてしまった自分の指先しかなかった。
 ベトナム戦争が終結した年。バンド活動の再開の場には、優秀なプロデューサーでマネージャーとなるサチオの姿があった。

 ウッドストックが過ぎたあたりからは、バンドマンのスタイルも長髪となり音楽はニュー・ロックへと変貌していく。時代の息吹きの只中にいる男と女の生々しい姿が、音楽に陶酔する姿として画面のなかに十二分に映し出され、観る者にも熱いパッションが伝わってくる映画だ。

 石橋凌と中川安奈の熱演も伝わる。そしてバンドのメンバー以外にも印象深い登場人物が多い。
 Aサインバーのオーナーの大地康雄は見事なイントネーションでウチナンを演じていたし、ネーサンと呼ばれる余貴美子も、イントネーションうまく低く掠れた声で貫禄あるサチオの愛人役を演じる。彼女はこれ以後何本もの沖縄を舞台にした作品に出ることになり、自身も大の沖縄好きになっている。これが最初の沖縄作品ということだ。
 中尾ミエの、エリーと別れるシーンの笑顔。チンピラから一人前のミュージシャンになるハーフのサブには川平慈英が扮する。
 
 そんな俳優陣を配置してもっとも凄いのが、Aサインバーの雰囲気だ。その騒然たる内部は、ベトナムという死地へ飛び立とうとする若い兵士たちでいっぱいだ。罵声、歓声、喧嘩、泥酔、金と女と薬漬けの中で、修羅場を生き抜くバンドマンたちの迫力は、まさにオキナワンロッカーたちの真の姿だったのだろう。
 沖縄の光と闇を、少しは感じることができるだろう映画だ。

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