TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「完全な遊戯」*舛田利雄監督作品

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THE TRAGEDY OF TODAY
監督:舛田利雄
原作:石原慎太郎
脚本:白坂依志夫
出演:小林旭、芦川いずみ、葉山良二、梅野泰靖、岡田真澄、白木マリ、高野由美

☆☆☆★ 1958年/日活/94分/B&W

    ◇

 石原慎太郎が仕掛けた〈太陽族〉。その末路をクールに描いた犯罪映画の傑作で、マイトガイとしてブレイクする前の小林旭のシリアスな演技が見もの。


 裕福な学生たちがゲーム感覚で始めた遊戯が発端だった…………

 東京学院大学の四年生・大木壮二(小林旭)ら4人が麻雀をしている。話はいつも金儲けの話だ。リーダー格の戸田(梅野泰靖)が、競輪のノミ屋を出し抜いて儲ける話を持ち出した。
 川崎の競輪場とノミ屋のある吉祥寺では距離があり、直通電話のない両間では、ノミ屋にレースの結果が知らされるまでに約5分のタイムラグができ、結果が出ている時点でもノミ屋では発券していると云う。直通電話を確保すれば吉祥寺でいち早く情報が入手でき、間違いなく勝てるから大金を賭けようという話だ。
 戸田たちは、必要な頭数として色男のカズ(岡田真澄)も引き入れ綿密な計画をたてる。そして、見事にノミ屋から高配当を奪い、場末のノミ屋を破産させる。

 その後、ノミ屋の松居鉄五郎(葉山良二)は残金をなかなか払う気配がなかった。そこで、残金のカタに鉄五郎の妹の京子(芦川いづみ)を誘拐しようと大木が言い出す。
 戸田の命令で大木がデパートに勤める京子を誘い出し、デート中に戸田たちが襲う計画で決行する。
 翌朝、戸田たちがたむろする屋敷から逃げ出そうとした京子を、留守番をしていたカズが犯してしまう。

 鉄太郎兄妹には寝たきりの母親がおり、金の都合に当てがなかった。そんな家庭環境を知った大木は、何か気になるものがあった。
 やがて追いつめられた鉄太郎は、ノミ屋の常連だった男の工場の給料を奪い逃走。戸田たちに金を振り込み警察に追われる身になってしまった。
 約束どうり京子は家に戻ったが、大木が戸田たちの仲間と知り「わたし、騙されていたのね……」とひと言去って行った。
 翌朝、アパートの一室で京子が母親と枕を並べ睡眠薬自殺を遂げていた。
 
 戸田の情婦ミエ子(白木マリ)がママのバー「モンシェリ」に集まる男たちが、京子や鉄五郎らのことなど何の気もかけずに金の分配をしている。あとから現れた大木は、京子への仕打ちを察知し仲間たちをなじるが、結局は自分も共犯者なのだと痛感……金はいらないと店を出て行く。
 数日後、戸田が大学の校門前で鉄太郎に刺殺された。逮捕された鉄太郎は、戸田以外の仲間のことは一切口にしなかった。

 入社試験を受ける大木。大手貿易会社の子息ということで何の心配もない身分の大木に、事件の共犯がバレないでホッとしたカズたち3人がノーテンキに寄って来る。
 その様子を見ていた大木は、近くの公衆電話から刺殺事件に関係する仲間たちの名前を新聞記者に告げ「大木壮二……大木壮二も忘れないように」と念を押すのだった…………

    ◇

 原作は石原慎太郎の極悪小説として有名な短編。不良学生たちが精神薄弱の女性を遊ぶために拉致・監禁し、来る日も来る日も弄ぶ。そして、売春婦に売り飛ばすが持て余し、挙げ句の果てに殺してしまうという話。20年後のロマン・ポルノならいざ知らず、当然、映画はまったく別のものになっている。


 前半45分はクールでありコミカルな展開。
 犯罪遊戯の手口は、電話を借りたり手旗信号や合い言葉の符号で情報を受け渡したりと、現代社会に鑑みれば実に幼稚で古くささを感じるはずなのだが、犯行をコンピュータ画面で簡単に操作したりするよりも、携帯電話もなくネット社会でないからこその面白さと、テンポの良さがサスペンスを生み出している。
 犯行手順を説明するシーンを白い覆面を被った人間で再現したり、タイトル文字の手書きのレタリングや、BGMのジャズなどにもセンスを感じながらどんどん惹き込まれてしまう。
 
 そして後半、虚無感にあふれた哀しい話になる。裕福で悪びれない若者と、貧しい家族の崩壊の対比はかなり残酷だ。若者と社会との在り方を考えさせるクライム感いっぱいの演出と構成が光る。

 小林旭が芦川いづみを誘い出し遊園地でデートする場面は、後半唯一のほのぼのした甘酸っぱい青春ムードを感じさせるシーン。
 勝気だが健気な京子を演じる麗しき芦川いづみは、本当に可愛い。バーのママ白木マリより年長だとは思えない。
 一貫してポニーテイル姿だった芦川は、岡田真澄に乱暴された後からは髪を下ろし悲劇性が強調されるが、小林旭が男たちの仲間と知った時の哀しい表情も目に焼き付く。
 

 冷徹なインテリを演じる梅野泰靖に注目。自分のしでかした事への後悔と、こころの葛藤をみせる小林旭も悪くない。


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