TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ラブレター」*東陽一監督作品

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監督:東陽一
原作:江森陽弘
脚本:田中陽造
撮影:川上皓市
音楽:田中未知
出演:関根恵子、中村嘉葎雄、加賀まりこ、仲谷昇

☆☆☆★ 1981年/にっかつ/83分

    ◇

 にっかつロマン・ポルノ10周年を記念して製作されたお盆興業のエロス大作で、関根恵子(現・高橋惠子)が失踪スキャンダルから復帰に賭けた作品でもあった。


 ダンサーの加納有子(関根恵子)は、詩人の小田都志春(中村)の作品をモチーフにした公演で小田と知り合った。小田は有子より30歳も年上の初老の男だが、彼の詩に惹かれた有子は父の形見の懐中時計を贈り、いつしかふたりは愛人関係になった。
 有子は「とし兄ちゃん」小田は「うさぎ」と呼び合い、有子は小田に身も心も捧げるのだが、小田は我がままな男。有子と情事に耽るのは長くて2日、そして何週間と連絡も取れない状態になる。来る日も来る日も待ちぼうけ。

 「うさぎは、いつも泣いて目が赤いです。それで、うさぎです」

 「新しい全集の校正で出版社に缶詰です」と担当編集員が言付けに来るが、淋しさは募り街をフラフラと歩く有子。

 「毎月、卵をキチンキチンと排卵させてさ、男を待ってるわけじゃない、女って。その繰り返し。嫌じゃない?」

 喫茶店の後ろの席の女たちの声を虚ろに聞く有子。ふと、編集部に電話を入れてみると、小田は奥さんの看病に付きっきりだと聞かされる。放心状態で街を彷徨い、近くの公園で倒れる有子。
 目が覚めたとき、ベットの横に小田がいた。汚れた有子の身体を行水で洗い、抱き合い、そしてまた小田はいなくなる。満たされない思いと小田の正妻への嫉妬から情緒不安定となり、睡眠薬がないと眠れない有子。

 隣には大学生が下宿するアパートがあり、庭に食べ物の残りかすを投げ入れられたりの嫌がらせを受ける。女主人のタヨ(加賀まりこ)からは、昼日中のネグリジェ姿の有子が悪いとウソぶかれる。

 「奥さんやってるよりも、愛人やってる方が辛いんです。百倍も、千倍も辛いのに…」

 タヨの夫・村井(仲谷昇)は愛人をつくり家を出ていたのだ。その夫が愛人と別れたあと、深夜、近くの公園のブランコに乗りに来ていることを有子は知っていた。
 ラストシーンを含め何度も出てくるブランコのギィギィという音が物悲しい。

 ある日突然、小田は有子を入籍する。戸籍謄本を見ながら喜ぶ有子。そんな有子に、小田はブランコの男・村井と浮気をしただろうと問いつめ、有子の内股に「とし」と入れ墨をいれてしまう。その痛みも歓喜に変わるなか、有子は妊娠していることを告げる。
 当然、堕胎手術。それでも耐えていた有子。また、小田がいつものように消えた。
 夜中に公園のブランコで村井を誘い、添い寝をする有子。
 村井に小田のことを聞かれると「あのひとは底抜けに優しくて、底なしに残酷なひとです」と答える。
 眠れないまま朝を迎えた有子の元に、有子の籍を抜いた戸籍の写しが小田の妻から届けられる。ギリギリだった有子の精神状態はついに異常をきたし、精神病院に入院することになった。

 月日は流れ、退院の日。迎えにきたタヨは小田が急逝したことを告げ、告別式に向かう有子。小田の死に顔も見せてもらえず、かつて小田に贈った懐中時計を突き返された。
 その時計を大木の下に埋め、有子は所在なげにブランコを漕ぐ。
 隣に座る村井に「これからどうする」と聞かれ、気怠く「さあ…」と答える有子だった。

    ◇

 原作は、反戦・反骨の詩人・金子光晴が、弟子でもある30歳年下の愛人・大河内令子に宛てた書簡と、大河内への聞き語りをもとにしたノンフィクション小説『金子光晴のラブレター』。過去にNHKでもドキュメンタリー放送されたことがある。
 
 監督は当時、『もう頬づえはつかない』('79)『四季・奈津子』('80)で若い女性に絶大の支持を得ていた東陽一。関根恵子の強い要望だったと云われる。

 他の出演者もロマン・ポルノとは縁のなかった中村嘉葎雄や加賀まりこ、仲谷昇を配し、成人映画ということを極力宣伝しないことなどで女性客を獲得し大ヒットした。にっかつロマン・ポルノ史上最高の興行収入を記録している。

 金子光晴が53歳、大河内令子23歳にはじまる愛人関係。嫉妬深く身勝手な金子と、一生縛り続けられ身も心もボロボロになった令子との、金子が亡くなるまでの26年間の愛欲生活が、どれだけ壮絶なことだったのかは伺い知れないが、「うさぎ」と愛称されたのも男の都合のいい「愛玩物」としてだろうが、それを受け入れた女の性もまた淫靡ではないか。本能で行動する女の性と、愛人に甘んじて生きる女のエゴが見え隠れする。

 女性でも観られるロマン・ポルノということで、いかにも東陽一らしい繊細さで愛人という日陰の身にある女の淋しさと苦しさをしっとりと描いてはいる。
 関根恵子の物憂い表情と、スラリとした肢体は素晴らしい。
 しかし、どうにも居心地が悪い。生々しい性がソフティケイトされてしまい、果たして女性の猥褻感ってどこにあるのか。ザワザワした日常の、欲情する女の猥雑さが消えてしまっていることが残念だ。

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