TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「1900年」*ベルナルド・ベルトルッチ

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NOVECENO
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
脚本:フランコ・アルカッリ、ジュゼッペ・ベルトリッチ、ベルナルド・ベルトルッチ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデュー、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ、ラウラ・ベッティ、スターリング・ヘイドン、アリダ・ヴァリ、ドナルド・サザーランド、バート・ランカスター

☆☆☆☆  1976年/イタリア・フランス・西ドイツ/316分

    ◇

 「第1部」(上映時間162分)と「第2部」(上映時間154分)に分かれた大作で、1900年生まれの地主と小作人ふたりの幼馴染みの男たちの生き様と、ファシズムが台頭する第二次世界大戦終了までのイタリア現代史を壮大に描いた大叙事詩映画となっている。
 監督は「ラストタンゴ・イン・パリ」('72)で世界を驚嘆させ「ラストエンペラー」(’87)でアカデミー賞9部門を制覇したベルナルド・ベルトルッチ。36歳にして最高傑作の誕生。「ラストエンペラー」より断然こちらの方が好きな作品だ。

 これだけの長尺作品、過去にレーザーディスクでソフト化もされてはいたが、発色も悪く絶版状態の埋もれた名作と云われていた。しかし、ついに2012年6月にDVD&ブルーレイで陽の目を見ることになった。それに伴い7月31日、WOWOWにて深夜ぶっ通しで放送もされた。
 二度と観ることができないだろうと思っていた作品の、実に30年ぶりの再見であった。



 1900年の夏、同じ日に、同じ農場の敷地内でふたりの男の子が生まれた。
 大農園の地主アルフレード・ベルリンギエリ(バート・ランカスター)の孫のアルフレード(ロバート・デ・ニーロ)と、この農園の小作人頭で大家族の長レオ・ダルコ(スターリング・ヘイドン)の孫オルモ(ジェラール・ドバルデュー)のふたりは、雇い主と雇われ人という身分違いではあるが、一緒に生まれた縁もあり子供の頃から兄弟のように育ち、鉄道線路に寝転んで通過する列車をやり過ごす度胸だめしを競ったりしながら友情を育んでいた。

 青年になったオルモは女性教師アニタ(ステファニア・サンドレッリ)に恋をして一緒に農民運動に参加するようになり、アルフレードは都会派の不思議な女性アダ(ドミニク・サンダ)に心を奪われ結婚、地主の跡を継いだ。

 アルフレードの農場の管理人アッティラ(ドナルド・サザーランド)は、主人に従順な一面を見せながらも、台頭してきたファシズム運動に自分の居場所を見つけ、次第に残忍な性格を現してくる。
 アッティラの妻でアルフレードの従姉妹レジーナ(ラウラ・ベッティ)は、アルフレードに失恋した女。ふたりとも人の幸福を堪らなく妬ましく思う人間だった。
 第二次世界大戦ともなるとアッティラの横暴さは増し、気に入らない人々への迫害と虐殺を始める。レジスタンスの闘士になったオルモは当然狙われ、アッティラに対して何も出来ないアルフレードはアダとの夫婦関係が壊れていく。

 そして、1945年4月25日、連合軍がやって来た〈解放の日〉。逃亡しようとしていたアッティラとレジーナは、農民たちに捕まり裁かれる。レジスタンスに捕まったアルフレードは人民裁判にかけられるが、村を解放しにきたオルモが「地主のアルフレードは死んだ」「生き証人としてアルフレードを生かす」と宣言。戦争は終わった。

 現代、夏。老人となったアルフレードとオルモは、線路の上に寝転んだりして昔と同じように喧嘩友達を楽しんでいた。

    ◇

 イタリア、フランスでは、ベルトルッチ監督の意向どおりに第1部と第2部が別々の劇場で公開され、アメリカではベルトルッチ監督と物議をかもしだした末に短縮版(4時間8分)で公開された。
 日本では1982年10月、一般興行としては世界で初めてオリジナル完全版の第1部・第2部が一挙に上映され、ぼくはその年の11月に劇場で鑑賞した。
 あけすけな性表現と目を覆うような暴力描写はあるものの、同じ年にイタリア語オリジナル版が日本初公開されたルキノ・ヴィスコンティの大作『山猫』('63)に匹敵するほどの一大ページェントに、時間を忘れるほどに惹き込まれ圧倒されていた。


 第1部は、1945年イタリアにおける〈春〉から幕開け、逆算して主人公ふたりの誕生と成長を〈夏〉から〈秋〉で描かれる。第2部は、イタリアの〈冬〉ファシズムの時代が描かれ、そして明るい〈夏〉で締めくくられる。

 貧困にあえぐ農民と地主との闘い、ファシストの暗躍など、イタリアの暗く重い歴史を5時間16分のオリジナルストーリーに凝縮して見せるベルトルッチの構成力と堅固な演出は、大長編とはいえ決して重厚で堅苦しいものではなく、メロドラマとかスリラーの要素と明るいイタリア映画の娯楽性も含まれている。
 メインテーマ「ロマンツォ」を〈1908年・夏〉〈1922年・秋〉〈1935年.冬〉〈1945年・春〉の4つのヴァージョンで奏でるエンニオ・モリコーネの音楽が大きな歴史の流れを優美に飾り、ヴィットリオ・ストラーロのカメラはイタリアのエミリア地方の広大な自然を美しく捉え、それだけでも見応えがある。
 息を呑むほど感嘆するその風景と、クセの強い実力派俳優と女優たちの演技に魅了される濃密な時間には、5時間あまりなどあっという間だ。まさに映画の力。


 ロバート・デ・ニーロは、この作品が日本公開された1982年には既に『タクシードライバー』('76)や『ディア・ハンター』('78)で大スターの仲間入りをしていたが、製作時点では『ゴッドファーザーPart II 』('74)でやっと注目されたとき。『1900年』撮影中に『ゴッドファーザーPart II 』でアカデミー賞助演男優賞を受賞している。
 ジェラール・ドパルデューは『バルスーズ』('75)で脚光を浴びたばかりの勢いで、ふたりとも若く生き生きとしていて眩しい。

 妖しいエロスを醸し出すミステリアスな女優ドミニク・サンダは、日本で初めて紹介されたベルトルッチ監督の『暗殺の森』('70)でスターになった。
 最初に登場するシーンのデカダンな雰囲気から、アッティラを嫌悪しアルフレードに幻滅、酒浸りになり狂っていく様など官能的美しさと悲劇性こそが、彼女が最高のヒロインたるところだろう。白馬に乗ったドミニク・サンダはまるで絵画のような美しさである。

 そのアニタとオルモが激しく対立するアッティラを演じるドナルド・サザーランドは空前の敵役。憎しみをまき散らす悪魔であり、圧倒的な冷血漢で怪優ぶりを示している。
 サザーランドとともに悪行を重ねるラウラ・ベッティも狂気の演技派。第2部のおどろおどろしい空気は、まさにこのふたりの存在感に尽きる。
 
 教養があり美しく強い女性アニタ役のステファニア・サンドレッリは前半で姿を消してしまう。もったいない配役。そして、バート・ランカスター、スターリング・ヘイドン、アリダ・ヴァリなどのキャスティングも贅沢なのである。


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