TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

新・座頭市「人情まわり舞台」

監督:黒木和雄
脚本:中村努
原作:子母沢寛
撮影:森田富士郎
音楽:村井邦彦
製作:勝プロダクション/フジテレビ
出演:勝新太郎、原田芳雄、稲川順子、田武謙三

初回放映:1979年7月9日 フジテレビ「新・座頭市」第3シーズン第11話

    ◇

 1974年にはじまり1979年までに100本の作品が作られたTV版の座頭市。この最終シーズンともなると白髪まじりとなった座頭市だが、市井の人々とのふれあいで人生の哀歓をしみじみ感じさせるにはお似合いな風貌となっている。

 このTV作品では勝新太郎の監督作品が一番多いのは当然として、お馴染みの森一生や田中徳三、三隅研二ら旧大映の監督陣が大いに腕を振るったなか、『竜馬暗殺』『祭りの準備』の黒木和雄監督がメガホンを取った作品に目がいった。気心知れた原田芳雄とのタッグは、実に興味をそそられた一作である。(ほかにもふたりの作品が1本あるようだが未見)



 賭場からふらふらと千鳥足で出てくる男。通りを歩きながらすれ違う女たちを触りまくる。船大工の息子だった新三(しんざ・原田芳雄)だ。
 新三は博打と女で身を持ち崩し、惚れた女おつね(稲川順子)を足抜けさせるためにヒモの男を殺して、ふたりで郷里の潮来を捨ててこの宿場に流れ着いていた。
 おつねは町の顔役・卯三郎(田武謙三)に借金のかたで囲われものになり、新三はおつねのヒモに成り下がっていた。

 そんな新三が飲み屋で市と出会う。「市さんには世話になった恩返しだ」と自分が住んでいるボロボロの掘建て小屋に招き入れ、こっそりとおつねを呼出し酌をさせ、精一杯の歓待で酒を酌み交わすのだった。
 新三にとって市は、おつねと逃げたあと新三の父親が土地のモンにいたぶられたとき、毎年潮来の菖蒲を見に訪れていた市に助けてもらった恩義があるのだった。

 新三のもとに座頭市が居ることを知った卯三郎は、新三の殺しをネタに、おつねを自由にしてやってもいい代わりに市を殺せと脅してきた。
 乞食同然に身を堕している新三は、そばでおつねが軽蔑の眼差しを向けているのを知りながらも「市さんは酒に弱いから、強い酒を飲ませ酔ったところを襲えば簡単」と請け負うのだった。

 そしてその夜、新三のボロ家に集まった卯三郎一家とおつね。新三は市に地酒を飲ませ、酔っぱらった市が小便をしに外に出るのに肩を貸す。そのあとを追うやくざたち。
 残ったおつねは、死んじまいたい気持ちで毒が入っているという地酒をあおるのだが、その中身は水だった。
 新三の芝居を見抜いていた市は、新三を仕込み杖で眠らせ、襲いかかる敵を始末するのだった。

 驚愕しているおつねに、市は「今までの新三さんは死んじまったよ」と言い残し去っていく。

 倒れている新三に泣きつくおつねに、目を開けた新三は「死んでいたら喋れねえ。市さんにまた助けられちゃったなぁ。今度は……違う恩返しを考えないとなぁ」と呟くのだった………。

    ◇

 ボロ屋に連れてきた市を、二間しかない家の中で手を引きながらぐるぐると連れ回し、大きな家だと見栄を張る新三の滑稽さが、まさしく精一杯のまわり舞台。
 自分の着物を脱いで、新しい丹前だと言いながら市の着替えをする人の良さも、惚れた女に軽蔑されながらひと芝居打つ哀れさも、全部ひっくるめて、女にだらしなく野良犬のように生きている姿が様になる原田芳雄である。

 無様な男の風貌と、怯えと戸惑い、腹を括った決意など眼光で心情を見せる振る舞いは秀逸。『祭りの準備』のトシちゃんを思い出す。
 この10年後、黒木監督の『浪人街』で共演した勝新太郎と原田芳雄の芝居も、見逃してはならない傑作である。


★祭りの準備★
★浪人街 RONINGAI★


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