TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「座頭市御用旅」*森一生監督作品



監督:森一生
脚本:直居欽哉
原作:子母沢寛
製作:勝新太郎
撮影:森田富士郎
音楽:村井邦彦
出演:勝新太郎、森繁久彌、大谷直子、三國連太郎、蟹江敬三、石橋蓮司、酒井修、高橋悦史

☆☆☆ 1972年/勝プロダクション・東宝/90分

    ◇

 シリーズ23作目は、大映の黄金期を支えてきた森一生監督にとって映画『座頭市』を監督した最後の作品。(後のTV版では十数本の監督作品がある)

 60年代の作品はテレビでしか観たことなく、リアルタイムで観るようになったのが70年代に入ってから。シリーズもこれだけ続けばマンネリになったり、ストーリーも凡庸になるのは致し方ないが、勝プロ作品となってからは、勝新がプロデューサーになり、監督になり、脚本も書くようになり、ある意味、異色作品に巡り会えることがある。

 冒頭、玉川勝太郎の浪曲(口演)と村井邦彦の音楽の不思議な幕開けが面白い。

 師走間近の荒野で、妊婦が斬られ金二十両を奪われた。居合わせた座頭市(勝新太郎)は、にわか産婆となり赤子を産み落とすが、妊婦は「父親は塩原の佐多郎」と言い残し絶命する。

 赤ん坊を抱えた市は父親のいるという塩原の宿場へと向かい、目明かしの藤兵衛(森繁久彌)から佐多郎の妹・八重(大谷直子)の居場所を教えてもらう。兄の佐多郎は旅に出ているとのことで、市は赤ん坊を見届けながらしばらく逗留することにした。
 この宿場は藤兵衛によってやくざ者たちを排除した平和な町だったが、その藤兵衛も今は老いていた。そこに目をつけ、藤兵衛の十手を狙い鳴神の鉄五郎(三國連太郎)一家が宿場にやって来た。
 そして、借金のかたで集めた娘たちで女郎屋を開き、祭りに集まる旅芸人らからは法外な興行料を巻き上げようとする。

 八重には借金があり、明日までに二十両なければ女郎に堕ちる運命だった。
 実はその二十両は、兄の佐多郎の女房すなわち亡くなった赤ん坊の母親がもっていたはずで、そのため市は女房を殺して金を奪ったと疑われる。
 市は金を用立てようと鉄五郎の賭場へ出向き、女賭博師のイカサマを見抜き金を工面するが、その帰り道に鉄五郎の子分達に襲われるが、佐多郎の息子が見ている前で人を斬ることが出来ず、捕われてしまう。
 市を助けてくれたのは、鉄五郎にわらじを脱いでいる浪人(高橋悦史)だった。彼は市の剣の腕前に惚れ込み、いつか一対一で勝負をしたいと思っている。

 藤兵衛のところに逃げ込んだ市は、藤兵衛に捕まることで自らの賞金二十両で八重を助け出して欲しいと頼み込むが、藤兵衛は市の首の代わりに息子の清次(酒井修)のために貯め込んだ金を渡し、市を逃がしてやる。
 その直後、藤兵衛は鉄五郎らに惨殺され、後から帰ってきた清次は父親を殺したのは市だと誤解し代官所に駆け込み、大勢の捕り手が宿場に向ってくることになる………。

    ◇

 全作品に通ずることだが、勝新太郎の殺陣はやはり凄い。中盤の居合い抜きシーンはもちろん、終幕の油を敷かれた櫓の上、炎のただ中に置かれた勝の両肩に火が点く凄まじい大立ち回りは痛快極まりない。

 敵役は「座頭市牢破り('67)以来2度目の出演となる三國連太郎。いかにも狡そうな濃いメーキャップで小悪党ぶりを楽しませてくれる。子分の蟹江敬三と石橋蓮司の腰巾着ぶりも見ものだ。
 そして、喜劇人である森繁久彌がコミカルな演技を抑え、味わい深い渋い演技で勝や三國に対抗している。
 
 見せ場はラスト、浪人高橋悦史との居合い対決の数秒。
 オープニングと同じように玉川勝太郎の声と村井邦彦の音楽が調和し合い、逆光のなか勝と高橋がすれ違う。途端に無音になり、あっという間の両者の居合いとストップモーション。音楽が再び鳴ったかと思うと、いきなり画面いっぱいに真っ赤な「完」の文字……暗転。
 この数分のみ勝自身が演出しており、後の勝監督作品『座頭市』('89)においてもこのラストを引用しているが、長いエンディングクレジットがある1989年版よりも、この唐突な終わり方がいい。斬新で記憶に残る作品となっている。


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