TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

姫川班最初の事件「女の敵」*誉田哲也



 現在『小説宝石』において最新作『ブルーマーダー』が連載中の姫川玲子シリーズ。
 先日発刊された誉田哲也の創り方本『All Works』に納められた書き下ろし短編『女の敵』は、『インビジブルレイン』の事件から7ヶ月経った現在の玲子と、「ストロベリーナイト事件」で殉職した大塚巡査と初めて出会った姫川班最初の事件の両方が描かれる。

 今泉係長と石倉巡査部長とともに大塚巡査の墓参りに来た玲子が、高校生のときに自分を救ってくれた佐田倫子や自分を庇うために刺された牧田勳に想いを馳せ、また、「インビジブルレイン事件」で解散した姫川班の菊田や湯田の姿がない一抹の淋しさと、あんなに毛嫌いしていた日下守が大塚の墓参りに来てくれたことに感謝の念を抱いたりする冒頭が、時系列通りに描かれる姫川玲子シリーズ(この『All Works』によると、他の誉田作品も同じ時間列上に展開するように書かれているという)らしくファンには堪らない。

 玲子が捜一殺人班十係の主任を拝命した5年前、所轄にいた大塚巡査と出会った事件を思い返す展開は、たった第1作で亡くなった大塚巡査がいかにインパクトの強いキャラクターだったかを証明しているようで、物語のなかにおいても、作者の思いにおいても大事な存在だったことがわかる。


 姫川玲子の着任3日目に変死体事案が起きた。橋田良という男が自宅ではないマンションで変死体で発見されたのだ。現場には女の足跡が2つ残されていた。
 帳場のたった野方署の大塚巡査とコンビを組んだ玲子は、早速現場に向かう。そこで玲子は、大塚のマメな性格を知る。
 橋田が死亡した当日に、マンションの近所の道路で通行人と車の接触事故が起きていたという管内記録を手帳に書き付けていたのだ。
 旅行代理店勤務の深町依子と名乗る被害者は、人身事故だというのに届け出を拒否していた。
 翌日、橋田の勤務先に出向いた玲子たちは、そこで社員旅行の話からこの会社を担当する旅行代理店が深町依子の勤め先と同じと知るが、橋田と面識のある担当者は深町依子ではなく安西恵美という女性だった…………。


 女の敵は……………オンナ
 トラウマを抱える玲子だからこそ、単なる当てずっぽうではない「確信的カン」で真実を明らかにするも、その先に自分の未熟さや危うさが潜んでいようと、玲子は進んでいくしかないと考える。
 ある意味口惜しい事件として玲子の心に残るこの事案が、「敵は容赦しない」という今の姫川玲子が形作られていく重要な一歩だったのだろう。

 大塚巡査の誠実な仕事ぶりを見抜いた玲子が、彼を一人前に扱うことでひとつの成果をあげ、以後、石倉や今泉をはじめ皆から可愛がられる存在になっていたことも伺い知れる。
 最後に石倉が語るエピソードからも大塚の人となりが見えてくるので、いつかまた、大塚巡査が絡んだ事案を掘り起こしてもらいたい。

    ◇

 さてこの『All Works』は、誉田哲也のファンブックであり、誉田氏自らの作家としてのキャリアと「姫川玲子誕生秘話」を語る、ファン必読の1冊となっている。

書き下ろし小説「女の敵」

Chapter1 姫川玲子 大解剖
スペシャルインタビュー「姫川玲子とそのキャラクターを語る:誉田哲也的 相関図」
姫川玲子シリーズ キャラクター図鑑
相関図
ブックレビュー

Chapter2 誉田哲也の創り方
作家・誉田哲也ができるまで
誉田作品黎明期とデビューへの軌跡
直伝! 誉田流警察小説の創り方
毎日の私生活のこと
作家としてのルーツとなったもの

Chapter3 全誉田作品ガイド
誉田哲也が徹底解説! シリーズ作品について
全誉田作品ブックレビュー ほか

Chapter3 メディアミックス作品ガイド
 ドラマ・映画レビュー 

All Works/誉田哲也
【宝島社】
定価 1,100円

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