TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」*大森立嗣監督作品



監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
音楽:大友良英
主題歌:「私たちの望むものは」阿部芙蓉美
出演:松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、宮崎将、新井浩文、柄本佑、洞口依子、美保純、多部未華子、山本政志、小林薫、柄本明

☆☆☆ 2010年/日本・リトルモア/131分

    ◇

 現代版『イージー・ライダー』だろうか?

 工事現場の壁を壊す解体屋で働く施設育ちのケンタ(松田翔太)と弟分・ジュン(高良健吾)。ロリコンを馬鹿にした先輩の裕也(新井浩文)をカッターナイフで傷つけ逮捕された兄のカズ(宮崎将)に会うために、収監されている網走刑務所に向って旅をする。
 出かけに、うっぷん晴らしに解体会社の事務所を荒らし、裕也の高級車を叩き壊していく。
 少し前にナンパして付き合っていたジュンの女カヨ(安藤サクラ)も連れ立って、カズに会えばこの行き詰まった毎日に風穴が空き、光を与えてくれるに違いないと車を走らせる。
 途中のドライブインでカヨを捨てて身軽になったケンタとジュンは、道中、闘犬を育てる男(小林薫)や、施設時代の仲間で母親に片目を潰された洋輔(柄本佑)や、絵空事の夢を語るキャバ嬢のゆみかチャン(多部未華子)らと出会いながら、盗んだオートバイで旅を続けていく。
 やがて辿り着いた網走刑務所でカズに再会するが、「希望」も何もなく壊れてしまった姿に絶望感を募らせるケンタは、自らも壊れていくのだった………。
 
    ◇

 嗚呼、なんて気が重くなる映画だ。作品的に悪くはないのだが、こうも気分を打ちのめしてくれる映画は久しぶりだな。
 どうしようもない社会のどんずまりで喘ぐ無知な若者たちが、その未来に何も明るいものがない憤りをボソボソと綴っていくだけのドラマだ。もったいぶったモノローグで淡々と進行していくから、131分はちょいと長かった。

 「壁」を壊した向こう側には、やっぱり希望なんて全然見えてこない展開と終幕。「希望」が失われたあとの「無力感」。何も変わらず、何も始まらないと思えるエンディングを迎える。が、しかし、何度も何度も捨てられては立ち上がる安藤サクラのクローズアップに「私たちの望むものは」が流れてきたときには、なぜだか凄く心が揺さぶられていた。
 何なんだ、この感動は。

 阿部芙蓉美というシンガーソングライターがカバーした「私たちの望むものは」は、岡林信康の『見る前に跳べ』に収録されていたメッセージソング。ぼくら世代には1970年の中津川フォークジャンボリーで、はっぴいえんどをバックに従えての熱唱が心に響いている。
 当時の若者のメンタリティを歌い、人が幸せを求めるときには、己の心が変わらなければ社会は変わらないと、岡林信康が自らの在り方をメッセージした名曲だ。

 「私たちの望むものは社会のための私ではなく 私たちの社会なのだ」と歌い
 「今ある不幸せにとどまってはいけない まだ見ぬ幸せに今跳び立つのだ」と“生きる歓び”と“あなたと生きる”ことを謳ったあと
 「私たちの望むものはあなたと生きることではなく あなたを殺すことなのだ」と、逆転する屈折感で締める歌詞は、そのまま映画のラストに反映される。

 “ブスでバカで誰とでも寝る”カヨちゃんの「愛されたい」という思いだけで行動する一途さと、捨てられても殴られても逃げないタフさを見せてくれた安藤サクラが、場をさらっていったな。

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