TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

再び「白昼の襲撃」、ジャズとの融合

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監督:西村潔
原案:菊村到「真昼の襲撃」
脚本:白坂依志夫、西村潔
撮影:黒田徳三
音楽:日野皓正
主題曲:「白昼の襲撃のテーマ」日野皓正クインテット
出演:黒沢年男、高橋紀子、出情児、岸田森、緑魔子、殿山泰司、石井くに子、桑山正一、若宮大祐、岩崎トヨコ

☆☆☆☆ 1970年/東宝/89分

2005年に書いたレヴューを大幅に改訂したものです。


 日野皓正の気怠いトランペットの音色が流れ、主人公たちの顔写真がカラー単色のモノクロでフラッシュされる洒落たタイトルが終わると、横浜の港や公園を風景に、岩崎トヨコの街頭インタビューが寺山修司の『初恋地獄篇』('69・羽仁進)や浅川マキのレコードのように挿入され、修とユリ子の出会いがスケッチされる。

 修(黒沢年男)はユリ子(高橋紀子)を街で見かけた。ユリ子の大きな黒い瞳と風になびく長い黒髪、ミニスカートから伸びた白い長い脚が、修に眩しい女性に映った。
 ユリ子は横浜のゴー・ゴークラブ“夜の海”の踊り子。小さな運送会社で働く修は、集金した一万円をポケットにユリ子の店に走った。
 少年院で兄弟分の約束を誓った左知夫(出情児)に“夜の海”で再会した修は、左知夫から一丁の拳銃をもらった。
 拳銃をちらつかせながら面白半分に恐喝をつづける三人。彼らにとって拳銃は、お伽噺に出てくる打ち出の小槌のようなものだ。
 ある日湘南の海に出かけた修とユリ子と左知夫は、2人の大学生が乗ってきた高級車を盗むことを考えたが、実行中に現れた2人に殴り掛かられ、咄嗟に修は拳銃の引き金を引いていた。格闘した際に大怪我をした修を担ぐ左知夫の前に、鳴海という男(岸田森)が通りかかり助けてくれた。
 鳴海は服役中の街の顔役佐伯(殿山泰司)の片腕だが、彼の妻・令子(緑魔子)と同様、やくざとは思えぬ知的な物腰と端正な生活に修は不思議な魅力を感じ、傷が癒えると鳴海の部下になった。
 やがて、刑期を終えた佐伯が出所してくる。佐伯を抹殺して後釜に座ろうとする一味は、鳴海に佐伯の殺しを承知させるが、鳴海はその裏をかき佐伯を救った。裏切り者を絶対に許さない佐伯は、裏切り者の殺しを修に命じ、修は佐伯商事の一員になった。

 しばらくして、街のどぶ川に鳴海の死体が上がった。インテリの鳴海は、実は政治的な暗殺を目的にしたアナーキストで、組を利用して資金を調達していたのだ。佐伯に腕を買われた修は、鳴海の後釜として外人バー“ライジング・サン”の経営を任され、ユリ子も踊り子を辞めバーのママとしての生活に有頂天の毎日である。
 大学生射殺事件を追及する刑事の動向に感づいて修は、逃亡を決意した。左知夫と彼の友人で父親のヨットを持ったジョニーに、サモアへの逃亡計画を打ち明け、その準備にとりかかった。
 修たちは佐伯を急襲して大金を奪い、ユリ子を迎えに行くと「左知夫と私とどっちを選ぶの」と詰め寄られる修。
 「佐知夫を捨てたら、俺の値打ちは無くなっちまうんだ」
 修は左知夫を選び、ユリ子を捨てた。
 「俺たちは逃げ出すんじゃない!戦いに行くんだ!新しい敵に向かって行くんだ!」
 夜明けの埠頭へ急ぐ3人。
 しかしそこには、愛する修に捨てられたユリ子の密告で捜査網が張られていた。捜査陣に向かって拳銃を乱射する三人だが、応戦する警官隊の無数の銃弾が彼らの躰を貫くのだった…………。

    ◇



 1970 年2月、加山雄三主演の『蝦夷館の決闘』(柴田錬三郎原作)の併映作として公開された「白昼の襲撃」は、東宝ニュー・アクション映画の担い手となった当時新進気鋭の西村潔監督が抜擢され、デビュー作「死ぬにはまだ早い」('69)に続いて黒沢年男と組んで(西村監督と黒沢年男の作品はこの2作品しかない)製作したハードボイルド映画の代表作だ。
 竹中直人が西村潔監督3作品(『死ぬには早すぎる』『白昼の襲撃』『豹《ジャガー》は走った』)を邦画のオールタイム・ベストテンに挙げているのだが、同い年として納得のいく選出。こんなにも惨めで、無様に死にゆく、それがまたカッコよく映る主人公たちの日本映画をそれまでに見たことがなかった。
 波止場で疾走する車を土管越しに見る横移動のカメラワークや、被写体トリミングのシャープな映像感覚は、低予算のなかで新人監督が好きなように撮った感じだ。
 スピーディーな展開も申し分なく、モダンジャズ愛好の西村監督が起用した日野皓正が奏でるジャズが、乾いた若者の心情を象徴するように倦怠と焦燥感を漂わせ、緊張感を高めながら見事に映像とマッチングしているから、当時高校生だったぼくらには堪らないほどインパクトのある映画だったのだ。

 主人公の修を演じる黒沢年男は当時26歳。キャバレーのボーイやトラック運転手を経て東宝ニューフェイスに合格した苦労人は、その体躯も面構えもハードな男ぶりで、ギラギラと満たされない若者像を奔放に演じている。
 ヒロイン的存在の高橋紀子は当時24歳。黒沢とは同期でデビュー作も同じ。大きな瞳と愛らしさがキュートで、当時、東宝の女優では酒井和歌子とともに好きな女優だったが、人気絶頂のこの年に、俳優寺田農と結婚して引退してしまったんだな。惜しいかったな。
 オカマの左知夫役の出(いで)情児は、この後俳優を辞め、井出情児と改名しロック・ミュージシャンの写真や映像を撮るカメラマンに転向。「村八分」や「RCサクセション」など、代表作のすべてが有名なロック写真家だ。
 岸田森と緑魔子のふたりは、これ以上にない絶妙な配役。

 サントラ盤は映画公開の前年の1969年11月にリリースされていて、定かな記憶ではないのだが映画を観る前にこのシングル盤を買っていたと思う。60年代は日野皓正が絶大な人気を誇っていた時期で、スイング・ジャーナル誌の人気投票では常にトップに位置し、ロックしか聞かなかった高校生でもヒノテルはカッコイイ存在だった。

 ロック感覚のダイナミックな「スネイク・ヒップ」は、オープニングのゴー・ゴー喫茶で当時の日野皓正クインテット(tp:日野皓正、ts:村松健、b:稲葉国光、p:鈴木宏昌、ds:日野元彦)のステージ演奏で聴くことができる貴重な映像。
 B面の「白昼の襲撃のテーマ」は、修たちが拳銃をちらつけさせながら暴走しているシーンに、疾走感をほとばしりながら豪快に奏でられるのだが、本編ではこのワンシーンでしか聴けない。感覚としては何度も流れていたような気がするのだが。
 シングル盤には効果音として、エンディングに銃声音と修の咆哮が挿入されていたのが強い印象としてあるので、実は2005年に再見するまで、ラストの銃撃戦にもこのテーマ曲が流れていたと思っていたのだ。実際は違った。
 修がユリ子に別れを告げるシーンからラストまでの約8分間、バックグラウンドには日野皓正クインテットによるインプロヴィゼーションが繰り広げられる。これが凄い。

 CD化(『GO! CINEMA REEL3 ワイルド・サイケを歩け』)において、銃声の効果音はそのまま入っているのだが、修の息づかいと叫び声がカットされていた。効果音など演奏を聴くに何の意味もないなんてどこかに書かれていたことがあるが、サントラ盤として聴き慣れ親しんできたものには、この絶望感のカットアウトがないとどうにも不自然さを感じるのだが……。



hakuchunoshugeki_cd.jpg ★オリジナル・サウンドトラック

 11月23日に『白昼の襲撃』のサウンドトラックCDが発売される。これまで「スネイク・ヒップcw白昼の襲撃のテーマ」のシングル盤しかリリースされていなかったので、全編日野皓正クインテットの劇伴がマスターテープから商品化されることは、快挙だ。
 ただし、多分「テーマ」のエンディングの効果音はカットされているだろうな。代りに未使用曲とか、ノーカット演奏のレア音源が収録されていることを楽しみにしよう。


★死ぬには早すぎる★
★白昼の襲撃★
★豹《ジャガー》は走った★


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Comment

路傍の石 says... "サントラ買いました"
今日、サントラのCD買いました。シングルの2曲は別テイクのものが収録されていて、これが荒々しくもライヴさながらの凄い演奏になってます。しかも「スネイク・ヒップ」(CDのタイトル・クレジットは「オン・ザ・コーナー」)は6分38秒のロング・バージョン。「白昼の襲撃テーマ」(タイトル・クレジットは「スーパーマーケット」)もヴァリトーンというエフェクターを使った電化トランペットが炸裂します。ほかにも聴きどころ満載で、当時のヒノテルがいかに非凡であったかを証明する出来です。
最近思うのですが、洋楽ロック大物の高額BOXに手を出すくらいなら、個人的には和モノのレア音源をしこしこ買い集めていた方が(こっちだって数が多くなれば決して安い買い物ではないのですが)ずっと有益な気がしますねぇ。
2011.11.27 22:10 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: サントラ買いました"
>路傍の石さん

早速のご報告ありがとうございます。
タワーやHMVに置いていないようなので今だ手に入れていない状況ですが、41年も封印されてきた当時の音、シングル別テイクの2曲以外にも是が非でも聴かなくちゃならないですね。
amazonで購入だな。

>洋楽ロック大物の高額BOXに手を出すくらいなら、個人的には和モノのレア音源をしこしこ買い集めていた方がずっと有益な気がしますねぇ。

同感です!
ストーンズの「EXIL」「Some Girls」のSuper Deluxe Editionなんぞには、まったく興味の湧かない昨今です。
『狂気:Deluxe Edition』も安い輸入盤しか買わなかったしぃ(笑)

2011.11.28 00:51 | URL | #- [edit]

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