TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「アリスの恋」*マーチン・スコセッシ

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Alice Doesn't Live Here Anymore
監督:マーチン・スコセッシ
脚本:ロバート・ゲッチェル
主演:エレン・バースティン、アルフレッド・ルッター、
   クリス・クリストファーソン、
   ハーヴェイ・カイテル、ジョディ・フォスター

☆☆☆☆ 1974年/アメリカ/113分

    ◇

 この映画以前に、メロドラマでもなくラヴロマンスでもなく、女性の生き方にスポットを当てた映画を知らない。そして女のロード・ムーヴィーも初めてだと思う。

 主演女優のエレン・バースティンが監督にマーチン・スコセッシを選び、キャスティングにも助言をし、スタッフに多くの女性を参画させて創られた。女性の内面を描きながら、ひとりの女性の新しい人生への旅立ちを日常的にリアルに描いた新しいタイプの映画だった。

 歌手を夢みていたアリスは若くして結婚をして、いまでは12歳の息子がいる35歳の女性。生意気盛りの息子と喧嘩をしながらも仲のいい生活を送る彼女も、夫の顔色をうかがいながらの生活は楽しいはずもない。日本が男尊女卑だったように、ほんの三十数年前のアメリカだって決して女性の地位が高かったわけではない。
 しかしその夫の不慮の事故からアリスの生活が一転し、故郷のモントレーで歌手として人生を取り戻したいと一念発起する。

 前半は、母と息子のロード・ムーヴィー仕立てになっている。
 ピアノの弾き語りの仕事を探すくだりや、母性本能くすぐる年下の男性(ハーヴェイ・カイテル)とのひと悶着など、女性がひとりで生きていくための闘いは容易ではない。

 ハーヴェイ・カイテルは、デ・ニーロと並んでスコセッシ監督の第1作目からの常連になるのだが、この映画の後ニューヨークのアクターズ・スタジオに入学したという。

 後半、アリスは結局夢の仕事とは到底かけ離れた、小さなダイナーでのウェイトレスの仕事をすることになるのだが、店の主人や同僚のウェイトレスらの描き方がいい。いかにもアメリカの田舎町の、ダイナーでの客とのやりとりなんだなぁって思える。ウェイトレスの同僚フローの下品さはいかにもって感じで、アリスとは気が会わないが、思った通り人情には厚い女性だ。
 アリスとフローのこころが通うようになった後、日光浴をするシーンのアップとロングのカットは印象に残る。

 この町で出会うデイヴィット(クリス・クリストファーソン)との恋の行方は、第二の人生を目指すアリスにとって障害になりかけるが、ラストの描き方が女性の自立になるのかどうかは、見る人の受け取り方で違うかもしれない。男に頼らずひとりで生きていくことばかりが女性の自立ではない。
 「男が居ないと生きていけないのよ」と云うアリスでも、自分でしっかりと決めた生き方こそ、自立の一歩だ。だから、以前のアリスとは違う。

  ☆   ☆

 カントリー&ウェスタン歌手のクリス・クリストファーソンに対して、「カントリーミュージックなんてクソだっ」って投げつける台詞や、母子の到達地を連想させるラストカットの画面にはつい顔がほころんでしまう。
 これから観るひとは、ジョディ・フォスターの存在もしっかり見届けて欲しい。この映画のあと、あの『タクシードライバー』で注目されるのだから。
 

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Comment

蟷螂の斧 says... "田舎のレストラン"
この映画。大好きです!
あの田舎のレストラン。いいですね!
アリスはあそこでウェイトレスをして本当に良かったです。
常連客達は荒っぽいけど、気さくで憎めない。
フローも口は悪いけど、基本的には良い人。
二人で日光浴。今ではありえない場面ですね。夏でも紫外線を避ける為に帽子・長袖シャツの女性達。
アリスの息子の悪友は男の子かと思ったら実は・・・・。そして演じたのは・・・・。本当に驚きました!
2012.12.19 07:04 | URL | #71iaVudE [edit]
mickmac says... "Re: 田舎のレストラン"
>蟷螂の斧さん 

3人のウェイトレスのキャラがとても良かったですね。
ダイナーってものが,当時の日本ではいかにもアメリカらしく、リアルな場所を感じさせるところでした。

この映画と並んで当時話題になったのが、同じくロードムーヴィーの『ハリーとトント』でしたが、どうってことのないストーリーの中に、現実を一生懸命生きていくことの大切さと厳しさが伝わってくる名作でした。
2012.12.20 12:49 | URL | #- [edit]

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