TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」*ボブ・ラフェルソン



THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE
監督:ボブ・ラフェルソン
原作:ジェームス・M・ケイン
脚本:デビッド・マメット
音楽:マイケル・スモール
出演:ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング、ジョン・コリコス、マイケル・ラーナー、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・P・ライアン

☆☆☆☆★ 1981年/アメリカ/122分

    ◇

 アメリカン・ニューシネマの傑作『ファイヴ・イージー・ピーセス』('70/ジャック・ニコルソン主演)で一躍有名になったボブ・ラフェルソン監督が、名コンビと云えるジャック・ニコルソンと組んだ最高傑作。

 原作は1934年に発表されたジェームス・M・ケインの実話を基にした犯罪小説で、これ以前に3度映画化されている(ヴィスコンティ監督のイタリア版以外は未見)が、不況下の30年代という時代設定や夫がギリシャ移民であることなど、過去の映像作品よりもかなり原作に忠実。そして、原作では当時描き入れなかった性描写に踏み込み、官能性豊かな作品に仕上がっている。
 たしかに公開当時の売りは“リアルな性描写”だった。原作にないキッチンテーブルでの濃厚なセックス・シーンや自動車事故の現場で欲情するコーラとフランクのファッキングは、ジェシカ・ラングは一切ヌードになることなく、ボブ・ラフェルソン創作の官能シーンとしてポルノ・フィルムの如き濃密な描き方を目にすることができる。
 しかし、たしかにジェシカ・ラングの内腿に惹きつけられること請け合いだが、露骨なセックス・シーンへの興味より、ありきたりな三角関係とはいえ人間の持つ欲望が濃密なラヴストーリーに昇華する展開が見事だ。


 職を求めてロスアンジェルスにヒッチハイクをしている流れ者のフランク(ジャック・ニコルソン)は、南カリフォルニアの辺鄙な町外れに建つガソリンスタンド兼簡易食堂“ツイン・オークス”に立ち寄り、口からでまかせの話で主人のニック・パパダキス(ジョン・コリコス)からタダ飯にありつく。人の良いニックは、フランクがメカニックの技術者だと聞いてここで働かないかと誘い、フランクは一度は断るがニックの若い妻コーラ(ジェシカ・ラング)の肢体に惹かれて戻ってくる。
 下働きをはじめて数日後、ニックが留守の間に調理場でフランクはコーラに襲いかかり、抵抗をしながらもコーラの躰は彼に反応していく。
 田舎町出身のコーラは、スターを夢見てハリウッドに趣いたがやがて夢破れ、生活のためにギリシャ人のパパダキスと結婚。しかし、みすぼらしい夫に支配される生活に嫌気がさしていたコーラ。情欲がフランクを受け入れるのだった。
 その後ニックの目を盗んで密会を重ねる二人は、ある日駆け落ちを決意。しかし、エゴなフランクとはうまくいかないと考えたコーラは駅からひとり帰宅することに。フランクもまた“ツイン・オークス”に戻り以前と同じ日々を送るが、互いを求める強い欲望の炎は消えることなく、遂にふたりの意識に亭主を殺害しようという衝動が湧き上がってくる……。

 1976年版『キングコング』のオーディションでヒロイン役を射止めデビューしたジェシカ・ラングだったが、映画は酷評され、彼女も“キングコングの恋人”と揶揄され始末で、しばらく映画界を去っている。79年の『オール・ザット・ジャズ』で復帰するが、これも役柄としては不満の残るものだったろう。しかし本作で見事“キングコング女優”の汚名を返上し、翌1982年には『トッツィー」と『女優フランシス』でアカデミー賞助演女優賞を獲得している。演技派女優の道が開けたのも、このコーラ役が足がかりだっと言っていいだろう。
 決して美人ではないが、うら寂しい生活感を漂わせながら、扇情的な女の性を多彩な表情で変化させていく演技が圧巻である。

 フランクが小さな鉄球を詰めた布袋をコーラに渡し、それでシャワールームでニックを殴り殺す計画はフランクの小心さがよく判る。表情の演技を抑えた小悪党ぶりを見せるジャック・ニコルソンである。

偶然に起こった停電で失敗するが、次は酔っぱらい運転にみせかけた自動車事故で遂にニックの殺害を果たす。
 気持ちが高揚しているコーラが内腿を開きフランクを誘うシーンがリアルだ。

 ふたりの計算違いは、フランクが乗り込んだ車体がバランスを崩して落下。フランクが重傷を負ってしまったことだ。
 そのことから、フランクを知る地方検事がふたりをニック殺しで告発するが、コーラについた敏腕弁護士カッツ(マイケル・ラーナー)が保険会社と裏取引をして告訴を却下させる。
 釈放されたコーラとフランク。“ツイン・オークス”食堂は興味本位の客たちで大繁盛だ。コーラは商売に夢中になるが、フランクはそんなコーラに愛想をつかし、また放浪の旅に出てしまう。途中、サーカス一座の調教師マッジ(アンジェリカ・ヒューストン)のセックス相手を務める。
 
 祖父ウォルター・ヒューストン、父親ジョン・ヒューストンという名門一家に生まれたアンジェリカは、父親に無理矢理女優を強いられスクリーン・デビューしたが惨敗。モデルをしながら本格的演技を勉強し、本作が3作目の出演だが蛇足とも云えるこのシーン。当時実生活で恋人同士だったジャック・ニコルソンとの蜜月風景として流しておこう。ただし終幕に意味のあるエピソードになる。
 この後アンジェリカは、父ジョン・ヒューストンが監督した『女と男の名誉』('85/ジャック・ニコルソン、キャスリーン・ターナー)で再びジャック・ニコルソンと共演し、アカデミー助演女優賞を獲得している。(キャスリーン・ターナーはゴールデングローブ賞で主演女優賞を受賞)

 旅先でコーラを忘れられないフランク。
 やがて“ツイン・オークス”に戻り、そこで母親の葬儀から帰り昔のような優しさを取り戻したコーラと再会。ふたりの愛情は再び甦り、フランクはコーラにプロポーズするが………。

 このあと唐突なラストが訪れ、ジャック・ニコルソンの静かな演技が耳に残る。
 原作とは違う結末は、映画的でいいだろう。


    ◇

 原作タイトルの所以は、アメリカでは郵便配達人はベルを二度鳴らして自分は不審者ではないことを知らせる。すなわち、2度目に真実があるということ。
 ニック殺害は二度目に果たされ、二度目の法定で無実を勝ち取り、コーラの元を去るフランクは再度戻ってくる。そして、二度の自動車事故。



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Comment

蟷螂の斧 says... "あっけないラスト"
悲しいけど、あれで良かったのかなとも思いました。

それと弁護士がフランクの為にすごく頑張る。何だか良心的に思える。裁判で勝ったフランクが弁護士にお礼を言う。
弁護士は「気にする事はない。そのおかげで俺は報酬を貰うんだから。」と言う。
急にあの弁護士が悪い奴に思える。弁護士役の人。名演です!
2013.02.17 19:36 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: あっけないラスト"
蟷螂の斧さん 

>悲しいけど、あれで良かったのかなとも思いました。

小悪党の幸せのあっけなさがいいですね。


>弁護士は「気にする事はない。そのおかげで俺は報酬を貰うんだから。」と言う。
急にあの弁護士が悪い奴に思える。

そうですか……? ぼくとは全然ちがうなぁ(笑)
自動車保険会社と生命保険会社の利益を利用し、裁判の勝利とそれ相応の弁護料を捻出した弁護士カッツは有能な弁護士に見えました。

悪い奴は、この工作を利用した弁護士の助手の方ですよね。

2013.02.18 12:47 | URL | #- [edit]
蟷螂の斧 says... "無題"
>自動車保険会社と生命保険会社の利益を利用し、裁判の勝利とそれ相応の弁護料を捻出した弁護士カッツは有能な弁護士に見えました。

なるほど。勉強になりました。
僕もまだまだですね・・・(苦笑)。

僕がこの映画を見たのはテレビの日本語版。
ジャック・ニコルソンの吹き替えは中尾彬さん。イメージに合ってました。
2013.02.20 19:24 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 無題"
蟷螂の斧さん 

返事が遅くなりました。

> ジャック・ニコルソンの吹き替えは中尾彬さん。

内海賢二さんとか瑳川哲朗さんの吹替えもありますが

どちらにせよベテランで風格のある声がいいですよね。
2013.02.23 17:40 | URL | #- [edit]

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