TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「フリックストーリー」*ジャック・ドレー

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FLIC STORY
監督:ジャック・ドレー
原作:ロジェ・ポルニッシュ
脚本:アルフォンス・ブーダール、ジャック・ドレー
撮影:ジャン・ジャック・タルベス
音楽:クロード・ボラン
出演:アラン・ドロン、ジャン=ルイ・トランティニャン、クローディーヌ・オージェ、レナート・サルバトーリ、モーリス・バリエ、アンドレ・ブッス、マルコ・ベラン、フランソワーズ・ドルネール、ポール・クローシェ、モーリス・ビロー

☆☆☆★ 1975年/フランス/108分

    ◇

 生涯に36件も殺人事件を起こしたフランス犯罪史上最も凶悪なギャングと、彼を追いつづけた敏腕刑事の3年間に渡って繰り広げられた死闘を綴った実録小説の映画化。
 原作者のロジェ・ポルニッシュは、国家警察に勤めた12年間に567人もの凶悪犯を逮捕し“スーパーデカ”の異名を持った刑事で、脱獄してパリ市内に潜伏した凶悪犯エミール・ビュイッソンの足取りを辿り、逮捕するまでを映画は描いている。
 派手なアクションはなく、追う者と追われる者との人間関係に重点をおいた犯罪ドラマである。
 直接ポルニッシェに会い、映画化権を獲得したアラン・ドロンが製作も兼ねている。


 1947年9月、フランス国家警察の刑事ロジェ・ポルニッシュ(アラン・ドロン)は、脱獄したエミール・ビュイッソン(ジャン=ルイ・トランティニャン)の逮捕を命じられた。主任のポストを狙っていたポルニッシュには絶好のチャンスである。ビュシェーヌ署長(マルコ・ベラン)には、ライバルのパリ警視庁との対抗意識むき出しで、自分の出世の糸口にしようとする魂胆があった。
 実兄(アンドレ・ブッス)らの手引きで脱獄したビュイッソンは、まず、かつて自分を密告したクラブのアコーディオン弾きを射殺するといった大胆な行動にでた。そして次には、高級レストランを襲いブルジョアたちの金品を奪い、逃亡の途中、追跡してきた白バイ警官を躊躇なく射殺した。
 仲間たちの隠れ家を転々として、大胆で冷酷な犯行を繰り広げるビュイッソン。捜査は難航し、国家警察全体に焦りが見えてきた。
 ポルニッシュは地道にビュイッソンの仲間たちを洗い出し、じりじりと捜査の輪を狭めていくのだが、上司からの圧力を受けながら後手後手になる捜査の責任を問われ捜査班から外されてしまう。
 ケチな犯罪の係を言い渡されたポルニッシュだったが、郊外の小さな殺人事件の死体がビュイッソンの手下のイタリア人マリオ(レナート・サルバトーリ)だったことから、それをきっかけに、マリオの仲間で小心で初老の男ポロ(ポール・クローシェ)に辿り着く。肺病で重症患者である妻をもつポロに密告者になることを要請するポルニッシュ。その巧みな取引が功を得、ついにビュイッソンの所在を掴むことができた。
 その日、1950年6月10日、ポルニッシュは恋人のカトリーヌ(クローディーヌ・オージェ)と同僚ふたりを連れて、ビュイッソンが隠れる郊外のB&B(シャンブル・ドット=旅館)に向かい、たまたま通りがかった気さくな4人連れを装い大芝居を打つ。
 ビュイッソンは逮捕され、1956年2月に死刑が執行された。

    ◇

 アラン・ドロンがプロデュースをする作品では、ドロン自身は常に一歩引いた感じで主演を務めている。
 始終タバコを口にくわえたドロンは、グリーンのコートを着て少し冴えない雰囲気をだし、逃げるビュイッソンを追って窓から飛び降りるも、あえなく屋根からもんどり落ちる格好悪さも見せたりする。
 上司に尻をひっぱたかれ、仲間の刑事には気をつかう役どころでありながら、どんな役を演じても存在感を醸し出すのが、やはり一流のスターであるアラン・ドロンだ。

 そのドロンの相手役が、『男と女』('66)で世界中に名を馳せた演技派ジャン=ルイ・トランティニャン。
 70年代に入っての作品『暗殺の森』('70)『流れ者』('70)『刑事キャレラ/10+1の追撃』('71)『狼は天使の匂い』('72)『離愁』('73)はどれも名作ばかりで、今作がアラン・ドロンとの初共演。渋いながらも演技巧者の役者だから、存在感ではドロンをも圧倒している。
 彼が演じるビュイッソンは、極貧の家庭に育った暗い過去を背負った男で、荒んだ心を抱えて生きている強烈なキャラクターとなる。だから、これまで温厚な役柄が多かったトランティニャンが演じる不気味さは強く印象に残る。とにかく冷血ぶりが圧巻なのである。
 一貫して無表情だったビュイッソンが、最後、カトリーヌがピアノで弾く「ラ・ヴィアン・ローズ」に聴き入り、ふと顔をほころばせるところは、ここ以前にもビュイッソンが部屋でエディット・ピアフの「ラ・ヴィアン・ローズ」のレコードを聴いているカットが挿入され、冷徹な男の唯一人間的ふるまいが見られるシーンとなっている。微笑の中に冷酷さが見え隠れするトランティニャンの芝居が光る。
 この最後のポルニッシュがビュイッソンを捕まえるシークエンスが、実際に行われたことなのかどうかはわからないが、息づまる緊張感が漂う名シーンであろう。

 ドロンの恋人役のクローディーヌ・オージェも男ふたりの間で堂々たる存在ぶり。
 なんと神秘的で、美しく、麗しいことよ。
 『007/サンダーボール作戦』('65)のボンドガール、ドミノで世界中が注目した女優だが、小学生時分に劇場で観た時にはすっかり虜になり部屋にピンナップをした女優のひとりだ。やはり好きな女優キム・ベイシンガーのデビューがリメイク版(『ネバーセイ・ネバーアゲイン』)のドミノ役だったが、上品な美しさという点でクローディーヌ・オージェには全然叶わないな。
 いまだ007全シリーズ中最高のボンドガールは、クローディーヌ・オージェだと思っている。

 さて、ビュイッソンの仲間を演じるレナート・サルバトーリや、ポール・クローシェ、モーリス・バリエら、70年代のアラン・ドロンの映画ではお馴染みの俳優たちが脇を固めているのも嬉しい作品なのだ。


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※「フリック」とはフランス語で「デカ=刑事」の意味

★狼は天使の匂い★

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