TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「暴行切り裂きジャック」*長谷部安春監督作品



監督:長谷部安春
脚本:桂千穂
撮影:森勝
音楽:月見里太一(鏑木創)
出演:桂たまき、林ゆたか、山科ゆり、八城夏子、岡本麗、丘奈保美、潤まり、高村ルナ、梓ようこ

☆☆☆★ 1976年/日活/71分

    ◇

 長谷部安春監督の作品ということで、公開初日(1976年7月7日)を楽しみにして見に行った作品。長谷部監督独特の乾いたタッチのシリアル・キラー物で、快楽殺人という当時では珍しい題材を扱った傑作である。

 ある土砂降りの雨の夜、パーラーの洋菓子職人ケン(林ゆたか)と同僚のウェイトレスのユリ(桂たまき)が車を走らせていると、青い拘束衣を着た美女(山科ゆり)が突然道路に飛び出してきた。ケンは彼女を後部座席に乗せるが、女は車内にあったケーキナイフで自らの手首を切り裂きだした。驚いたケンとユリは女を車外から引きずり出すが、薄ら笑いを浮かべる女は走り出す車体にしがみついたまま放り出されてしまう。この不意の出来事で女は死亡。ケンとユリは近くの廃車処理場に運び、裸にして遺棄する。

 ユリのアパートに帰りついたふたりは、興奮し、劣情し、激しく身体を求め合う。この殺人の後のセックスがふたりに特別な快楽をもたらし、次なる殺人への欲望となっていた。
 そそのかすのはユリ。まずは、パーラーの常連の女子大生(八城夏子)をテニスの帰りに拉致し、廃墟となったボーリング場跡地で惨殺する。死体を見ながらのセックスに酔うユリと、冷めた目で死体を眺めるケン。
 女房気取りのユリにとって性的興奮だった殺人行為が、次第にケンには女性を切り刻むことの虜になっていく。やがてある夜、ケンは看護婦寮を襲い4人の看護婦たちを惨殺し、後をつけて来たユリをも刺し殺すのだった……。
 
    ◇

 1976年2月に公開された八城夏子と蟹江敬三の傑作ハードボイルド・ポルノ『犯す!』において、ヴァイオレンス路線という興行的に新鮮な作品群を創り出した長谷部安春監督。
 気の強い女に引きずられた気の弱い男の共犯関係が、次第に逆転していくところがポルノというよりもやはりアクション主題の映画として成立しており、ワイセツ感が微塵もない作家性に優れたハードボイルド映画に仕上がっている。

 白茶けた日常の中に生まれた狂気に取り憑かれた男女の行動が、即物的に進むストーリー展開が異色。イライラした感情と悪意、無感情な人間のリアリズム。犯罪における犯人の生い立ちなり背景など一切の説明をしないし、感情移入もさせない、そして道徳的結末もなく、殺人者は野に放たれたまま唐突に終わる。

 それにしても、ロマン・ポルノ史上こんなにもブサイク(アフロヘアの容姿はもちろん、心根すべてにおいて)に主演を演じる桂たまきの不貞腐れぶりは秀逸。
 オープニングのパーラーの客への不機嫌さや、被害者の女たちへの悪意の表情が、生々しいインパクトで伝わってくる。
 そして、女に引きずられながら限界を超える無表情で孤独な若者を林ゆたかが好演。ヴィレッジ・シンガーズのドラマーだった彼の俳優作品として、翌年の『赤い花弁が濡れる』(ヤク中で孤独に死んでいくストリッパーのヒモ役)と共に代表作である。
 
 連続殺人の被害者には、作家夫人の岡本麗、娼婦の丘奈保美、結婚式場の巫女となる潤まり(この作品が最後の映画出演)、ブティックのデザイナー高村ルナ、看護婦の梓ようこと贅沢な女優陣たち。 

 日活ロマン・ポルノでは月見里太一名義の鏑木創の音楽も異彩を放ち、凄惨な場面に女性の声で流れるスキャットの効果が見事な異空間を創りだしている。

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