TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「続・激突カージャック」*スティーヴン・スピルバーグ

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THE SUGARLAND EXPRESS
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ハル・バーウッド、マシュー・ロビンス
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ゴールディ・ホーン、ウィリアム・アザートン、マイケル・サックス、ベン・ジョンソン

☆☆☆☆ 1974年/アメリカ/108分

    ◇

 スティーヴン・スピルバーグ監督の劇場映画第1作は、1969年5月にテキサス州で起こった実話がモチーフになった。若い男女が自分たちの赤ん坊を取り戻すために、なりゆきで罪を犯し、追われる身で赤ん坊のいるシュガーランドへ辿り着くまでのストーリーだ。
 興行的な失敗とは反対に評価は高く、アメリカン・ニューシネマの真っただ中に位置する作品として、当時は映画館に入り浸り二度三度と観ていた。小品だが、スピルバーグ作品のなかでは『未知との遭遇』とともに一番心に残っている作品だ。

 70年代に台頭したアメリカン・ニューシネマのなかには、反体制的な主人公たちの心情を綴り、決してハッピーエンドにならない映画群が多くあった。『俺たちに明日はない』『明日に向って撃て!』『イージーライダー』『バニシング・ポイント』などがその部類に入るが、この作品は、ただ子どもを取り戻したいだけの純粋な若者の軌跡だ。
 原題は『シュガーランド・エクスプレス』。テキサスに実際にある地名だが、甘ったるいタイトルが本国での失敗につながったのではとも言われる。邦題が『続・激突カージャック』なんていう厳めしいのは、当時、スピルバーグが認められたTV作品『激突!』(後に映画館公開)に倣ってのタイトル変えだが、作品のテーマから言えば「カージャック」よりは原題の方が良い気がする。

 アメリカ、テキサス州立刑務所の更生農場。チンケな窃盗で1年の懲役を受け、残すところあと4ヶ月で出所のクロービス・ポプリン(ウィリアム・アザートン)のところに、妻のルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)が面会にきた。共犯だった彼女は刑期が短く、一足さきに自由の身だった。
 彼女の話は、裁判所の命令で親の資格なしとして一人息子の赤ん坊が養子に出されてしまうという。
 「いますぐここを逃げ出して、息子を取り戻して!」
 乗り気でない夫に、感情を爆発させるルー・ジーン。押し切られた夫は、彼女が服の下に着込んできた自分の衣類に着替え、ふたりはまんまと面会人にまぎれて脱走を成功させる。
 老夫婦の車に同乗してハイウェイを走行中、後続のパトカーに脱獄がばれたものと早合点して、その車を奪い強引にパトカーとのカーチェイスとなってしまった。
 挙げ句の果て、若い巡査スライド(マイケル・サックス)を人質にパトカーを奪い、シュガーランドまで引き返せない旅がはじまる。

 主演はゴールディ・ホーン。
 映画初出演の『サボテンの花』でアカデミー助演女優賞を獲得したゴールディは、とにかく70~80年代は天下無敵のコメディエンヌだった。大好きな女優のひとり。
 本作は映画3作目で、里子に出された我が子を取り戻そうと、闇雲な母性愛だけで行動する若い母親の純粋さを、コメディエンヌぶりを抑えドラマチックに演じている。



 はじめのうちは対立するスライド巡査と若い夫婦の関係が、徐々に、同世代の感情が連帯意識として生まれてくるまでの描写が巧い。
 そして、それ以上に優れているのが、彼らを追跡するハイウェイ・パトロール隊長のタナー警部との心の交流。若い夫婦が凶悪犯ではないと見抜いた彼は、ルー・ジーンらの要求通りに事を進め、なんとか流血の事体にだけはならないように務める。

 警部に扮するのはベン・ジョンソン。
 スタントマン出身で、ジョン・フォードなどの西部劇ではお馴染みのカウボーイ俳優だったが、1971年に初めて西部劇以外の映画『ラスト・ショー』に出演し、アカデミー賞をはじめ数々の助演男優賞を受賞した名優だ。西部劇以外では『ゲッタウェイ』('72)『デリンジャー』('73)につづいての本作である。
 テキサスのハイウェイに、次々とパトカーが合流し連なり走る姿は、まるで西部劇の幌馬車隊のような景観。先頭で指揮するベン・ジョンソンの風格はさすがだ。

 退役軍人の二人組がまるで猟をするかのように3人に発砲してくるシーンでは、タナー警部を信頼するようになったルー・ジーンが助けを求めてくる。
 「18年間一度もひとを殺したことはない。これからもだ」と呟くタナー警部の怒りのこもった行動には、信念を持った気骨ある西部男の気迫が漲っている。

 行く町行く町で、ルー・ジーンらが盛大に歓迎される奇妙な旅。保守的なアメリカ南西部の住民たちが、犯罪者の罪とは別に、警察隊を混乱させる彼らの行動に拍手を送るのが可笑しい。

 黄昏のなかをパトカーの警戒灯が連なっていく光景が美しく、夕陽が光る川の煌めきに佇むスライド巡査のシルエットが印象的なラストシーン。
 スピルバーグ監督の人間に対する温かな眼差しを感じながら、映画は終わる。


★バニシング・ポイント★
★サボテンの花★
★ラスト・ショー★

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