TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「グロリア」*シドニー・ルメット



GLORIA
監督:シドニー・ルメット
脚本:スティーブ・アンティン
撮影:デビッド・ワトキン
音楽:ハワード・ショア
衣装:ドナ・グラナータ
出演:シャロン・ストーン、ジェレミー・ノーザム、ジーン・ルーク・フィゲロア、ジョージ・C・スコット、キャシー・モリアーティ、マイク・スター

☆☆☆ 1998年/アメリカ/107分

    ◇

 名匠シドニー・ルメット監督が、セクシーで知的な美女シャロン・ストーン主演でジョン・カサベテス監督の最高傑作ハードボイルドをリメイクした作品。

 フロリダで3年の刑期を終えたグロリア(シャロン・ストーン)はニューヨークの恋人の元に帰るが、彼女には組織の冷酷な裏切りが待っていた。男たちに銃口を向け、部屋に居合わせた少年ニッキー(ジーン・ルーク・フィゲロア)を人質にして脱出するグロリア。
 少年の父親はマフィアの会計士で、組織の秘密を握るフロッピーディスクを持ち出したことで家族全員が惨殺されていた。父親からディスクを託されたニッキーも彼らに捕まっていたところで、グロリアに少年を連れ去られた組織の連中は血眼になってふたりを追うことになる。
 絶望の渕に始まる奇妙なふたりの逃避行。安ホテルの身を隠した平穏な時も束の間、雑踏のなかでグロリアとはぐれたニッキーは敵の手に落ちてしまった。
 「あの子の命は私が守る」意を決したグロリアは、女友達のダイアン(キャシー・モリアーティ)の協力を得て、組織の大ボスであるルビー(ジョージ・C・スコット)に面会。ニッキーとフロッピーの交換を持ちかける………。

    ◇

 名作・傑作にもどこかしらに不満点や欠点があり、リメイク作品はそれらを補充する解釈を加えたり素材に新しい味付けをしたりする。1980年のオリジナル『グロリア』を、男女逆転で変型リメイクしたのがリュック・ベンソン監督の傑作『レオン』('94)だったが、ルメット監督は基本プロットはそのままに、別の表現で新しい個性を創り出そうとした。

 オリジナルの『グロリア』はこれまでに何度も何度も観ているマイ・フェバリット・ムーヴィーの1本だから、当時、シドニー・ルメットとシャロン・ストーンの組み合わせには大いに期待した映画だったのだが、さすがに初見時、期待した分の反動は大きく、ここ何十年と忘却に曝した作品だった。
 それでも当時の鑑賞ノートを見ると☆は3つだし、初めてDVD化されたときにはソフトを購入しているのだから、まんざらでもなかったのかもしれない。あらためて新鮮な気持ちで観てみると、結構面白く観ることができる。

 映画の冒頭、グロリアがフロリダの刑務所から出所するシーンから始まる。保護観察処分のためフロリダから出ることは再び刑務所に戻ることを意味するのだが、グロリアは恋人と縁を切ることと分け前を貰うためにニューヨークに行かなければならなかった。
 このバックボーンで、グロリアが少年を連れ回すことのリスクと逃亡の時間的リミットが設定されたことになる。これはオリジナルより緊迫感を生んでいる。

 ジーナ・ローランズが演じたオリジナルの“グロリア”は、かつてはマフィアのボスの情婦でありショーガールとして輝いていた女で、今はやさぐれて隠遁生活に入ろうとしていた中年女。そんな彼女が少年を守ることで“おんな”を取り戻していくヒロインだった。それに対して、若くて美人のヒロインにアレンジした本作は、“女の生き方”の重さがまったく異なるものになり、雰囲気がガラリと変わるストーリーになってしまっている。(ラストは大甘)
 しかし逆に、人間不信になった女が無鉄砲な牝猫ぶりを見せつけることで、シャロン・ストーンの輝きが増していくようにも見える。真っ正直に自分の道を築いていく女の姿は美しい。
 大きく胸が開き長いスリットの入ったドレス姿で登場するオープニングで「まるでドラッグ・クイーン(女装したゲイ)ね」と自嘲気味に云うのが面白い。
 今回のグロリアの設定が若いとはいっても、当時のシャロン・ストーンは40歳。ジーナ・ローランズは当時46歳だったのだから、さほど若返ったわけでもなく脂の乗ってきた頃である。

 もうひとり女優に関して記しておくと、本作にはオリジナルにはない女友達が登場する。シャロン“グロリア”ストーンが慕うモデル斡旋業(多分、裏の商売を兼ねている)のダイアンだ。この憧れの存在になっているダイアンを演じるのがキャシー・モリアーティ。彼女はシャロンストーンより2歳年下だが、オリジナルのグロリアのイメージを重ねたくなるくらいの貫禄ある女っぷりだ。
 キャシー・モリアーティは絶世の美女として『レイジングブル』に19歳で出演して、いきなりアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた女優。生粋のニューヨークっ子のキャシー・モリアーティの『グロリア』だったら、ジーナ・ローランズに近い完全リメイクになったかもしれない……?


★グロリア*ジョン・カサベテス★


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