TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「竜二」*川島透監督作品

ryuji.jpg

監督:川島透
脚本:鈴木明夫(金子正次)
撮影:川越道彦
助監督:坂本順治(阪本順治)
主題歌:「ララバイ」萩原健一
挿入歌:「プレイバックpart2」山口百恵
出演:金子正次、永島暎子、もも、北公次、佐藤金造(桜金造)、菊池健二、岩尾正隆、小川亜佐美、銀粉蝶、笹野高史、高橋明、泉アキ

☆☆☆★ 1983年/東映セントラルフィルム/92分

    ◇

 劇場公開の1週間後に、33歳の若さで癌のためにこの世を去った金子正次。
 癌と診断されてから何本かの脚本を書き上げ、苦難の末に自主制作で完成させた本作。死して名を残した無名の俳優は、この1本で伝説になってしまった。いまだに、この映画への高い評価はつづき、金子正次の魅力と輝きが失われる事もなく、それはまるで松田優作と同じように強い思いを持つファンは多い。

 名もなき役者金子正次と、大スター松田優作の因縁は有名な話。
 自主制作映画を劇場にかけるのは至難の業で、そこで奔走したのが同い年の朋友松田優作だった。東映セントラルフィルムで配給、公開を実現させ、映画の成功を見届けた金子を看取ったのも松田優作。そして、その命日11月6日が、奇しくも松田優作の命日になった偶然までもが伝説に凄みを加えている。
 映画に人生を賭けた金子の姿は、スクリーンの中でリアルに生きている。

 監督は、金子の朋友でこの作品がデビューとなる川島透。
 やくざの世界に生きる人間と堅気の世界に生きる人間たちを、小さなエピソードを積み重ねながら、きめ細やかに描いている。どの人間にも感情移入できるのが、この作品の魅力だろう。

    ◇

 花城竜二(金子正次)は新宿を縄張りにしている三東会の組員で、三年前暴力事件で逮捕された時、妻のまり子(永島暎子)は両親に泣きつき彼と別れることを条件で保釈金を出してもらった。以後、妻子と別居している竜二は、マンションでルーレットカジノを開き羽振りを良くしている。
 面倒を見る弟分と暮らしているが、バーゲン品を見繕い金を貯めることを楽しみにしている彼らが弄しく、組の兄弟分らの日常も小市民的だ。金ばかり貯まっても、充たされないものが身体の中を通り抜ける思いを感じていた。
 やくざから足を洗った先輩(岩尾正隆)の店で弱気な心情を吐露する竜二は、ついに自ら堅気の世界へ踏み込む決心をする。ピラニア軍団の岩尾正隆の渋さと、女房役の小川亜佐美の甲斐甲斐しさがいい。

 竜二は、九州の妻の実家に妻子を迎えに行き、東京で酒屋の店員として出直すことにした。
 ごくありふれた、ささやかな幸せに囲まれた、親子水入らずの生活。初めの頃はその日常に満足をしていたが、次第に、退屈な時間を満足しているかのように振る舞い努めだす。

 しかし、自分のシマを譲った舎弟のひろし(北公次)が当時の自分より羽振りよく訪ねて来たり、もうひとりの舎弟だった直(桜金造)がシャブ中になり堕ちていく姿を見たり、苦楽をともにした友(菊池健二)の落ちぶれた死に様を目にしているうちに、彼のなかの血が騒いでたまらない。

 家計簿を見て溜め息をつくまり子に怒鳴り声をあげる竜二。酒の配達の途中、トラックに同乗する中年のオヤジ(笹野高史)の昔の悪行状に、「どうしたんだよ!それがっ」と吸っていた煙草をオヤジの掌に押し付ける様といい、次第に竜二のなかの渇きがピークになってくる。

 そしてある日、商店街の肉屋の特売場の行列に並ぶまり子と娘のあや(もも・金子正次の実娘)の姿を見たとき、たまらない気持ちになり、ふたりに背を向けてしまう。
 竜二の顔を見てすべてを理解するまり子は、娘に「九州に帰ろうね」と言うことが精一杯だった………。


 男にしがみついていたくても、男に行きたい道があるのなら、行かせてやる女の潔さと哀れさ。
 映画の終幕、永島暎子の凍りつく笑顔は絶品だ。

 そのまま、新宿の雑踏を歩く竜二の姿のラストシーン。
 タイトルロールに被る萩原健一の歌声に痺れる。

 その無邪気な 澄んだ瞳
 夢見ている 幼ない子
  元気でいるかい
  友達 いるかい
  せめて お前に 
 My Baby Lulla-By

 1984年1月16日の栄東映パラス。映画館を占める中年のやくざ映画好きな客たちが、次々と煙草を吹かしながら席を立つ中、タイトルが終わっても場内は灯りも点かず、緞帳も降りてこない状態の真っ黒なスクリーンに、延々とフルコーラスでショーケンの声が響いた。あの時間の、なんとも切ない気持ちが思い出される。


 

スポンサーサイト

Comment

visha says... "竜二"
竜二に関しては、特別な思い入れがあります。
ショーケンのララバイ、泣けます。
何回見ても飽きない名作です。
劇場で見たかったです。
2011.03.04 21:26 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: 竜二"
vishaさん

主人公の職業が「やくざ」だというだけで、ドンパチした抗争も暴力もない作品だから「やくざ映画」というカテゴリーでは語れない作品。
熱烈なファンが多い映画ですね。

「ララバイ」が、こんなに切なくなる歌だなんて、ホント、泣けます。
「Don Juan」聴いている時はそれほどでもなかったんですけどね(笑)
2011.03.05 15:32 | URL | #- [edit]
和歌山マル子ラーメン says... "はじめましてお邪魔します!"
竜二…川島透監督の初期代表作!!

内容のコメントとそれた話ですが…竜二の先輩役…

俳優『岩尾正隆』さん

和歌山県海南市出身の俳優さんで、東映『ピラニア軍団』の主要メンバーでした。僕の父親(家族みんな)で昭和35年頃より和歌山市の築地浜通りと呼ばれる歓楽街で『スナック』を営み、店主兼バーテンダーでありました。その時代のバーテンダーのひとりが『岩尾正隆』さん。
『仁義なき戦い』シリーズ、深作作品にも鮮烈な脇役のイメージが残ります!
『竜二』のヒット後、川島監督による
『チンピラ』の傑作誕生!!
金子&川島の集大成とも云えるヒット作!!
主演は柴田恭平&ジョニー大倉~…僕は『ジョニー大倉』さんの大ファンで何度か本人に会う機会を与えて頂きました。

ちなみに『北 公次』さんも和歌山県田辺市出身の方です!

きちんとした書き込みにならず、失礼しました。
貴殿の映画評論や同じく好きな作品が重なる為、拝見しております。今後もよろしくお願いいたします。

和歌山県岩出市(JR岩出駅前)で拉麺店営んでいます。
2011.03.22 14:09 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: はじめましてお邪魔します!"
和歌山マル子ラーメンさん はじめまして。
レスが遅くなり申し訳ありませんでした。

ピラニア軍団のなかにあって岩尾正隆氏は、いろいろな武勇伝を持っているそうですが、俳優になる前はバーテンダーをされていたのですか……。

深作作品や中島作品での暴れぶりは強い印象を残していますが、『その後の仁義なき戦い』(レヴュー済)での、成田三樹夫氏と根津甚八氏と3人の空間のなかで黙々と寿司を喰うっているだけの、まったく台詞のないところでの存在感も凄いですよね。

そして、この『竜二』での飲み屋のおやじ……堅気になった男ぶりは最高に良かったです。

『チ・ン・ピ・ラ』も、あの時代らしい空気感漂う作品で好きでしたが、ぼくは『野蛮人のように』を1985年度ベストテンに入れていますよ(笑)。

好きな作品しか書いていませんが、お好みの作品があったらまたおいでください。
2011.03.24 19:42 | URL | #- [edit]
村石太レディ&ザットマン says... "映画同好会(名前検討中 金子正次を語る会"
はじめまして
竜二 チンピラ(2作品) ちょうちん 見ました
悲しい話ですね。若い頃 20代前半の頃 この映画を見て いろんなこと 思いました。あの頃 ツッパリブームあった時代でした。まだ 1作品 見ていないです。この作品 私にとって 最高作品です
金子さんは この映画を 通して 私に何かを 教えてくれたんだと思います。
金子さん ご冥福を お祈り申し上げます。
2011.10.02 20:23 | URL | #X1MNd4ZE [edit]
mickmac says... "Re: 映画同好会(名前検討中 金子正次を語る会"
>村石太レディ&ザットマンさん 
 はじめまして

先に記述しましたが、金子氏は松田優作氏と同じように伝説の俳優とされていますが、神格化されるより1本でも多くの作品を創りつづけて欲しかったひとりです。
彼の姿を見ることが出来る作品が、たった1本というのは寂しすぎますよね。
2011.10.03 09:54 | URL | #- [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/718-7580ca63