TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「夜の終焉」堂場瞬一

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 警察小説が流行っている昨今、少し食傷気味もあり読むのを避けてきた作家のひとりでもあったのだが、ノアール小説ということとタイトルに惹き付けられ、初めて読んだ堂場瞬一作品。
 《汐灘サーガ》の第3作ということで、架空の街“汐灘”を舞台にしたハードボイルド風ミステリだ。

 20年前、東京から車で2時間ほどの地方都市“汐灘”で、建設会社の社長夫妻が殺された。
 被害者の息子真野亮介はいわれなき中傷と跡継ぎの重圧から故郷“汐灘”を捨て、厚木で深夜営業の喫茶店を営んでいた。
 加害者の息子川上譲は、検事になる夢を諦め東京で弁護士として仕事に邁進していた。
 ある日の早朝、真野の店を訪れた少女が店の前でひき逃げ事故に遭い、昏睡状態に陥る。彼女が携えていた地図を頼りに、真野は20年ぶりに“汐灘”に向かうことになる。
 一方川上も、“汐灘”で起こった一家放火殺人事件の容疑者の弁護を頼まれ、20年ぶりに“汐灘”に向った。

    ◇

 20年間引きずりつづける被害者家族と加害者家族となるふたりの男の鬱屈した感情を、現在進行形のストーリーに過去の事案をオーバーラップさせながら描かれる。
 少女の身元探しとか、川上が担当する事件の顛末とか、複雑な人間ドラマの合間を縫うミステリの構成は読み応えがあり、深い味わいが生まれた大作になっている。
 前半のハードボイルドの雰囲気がいい調子だ。

 ただ、犯罪に巻き込まれた家族たちの後遺症がいかなるものかといった社会派の味付けが濃い作品に、周りの登場人物のおせっかいが過ぎたり説教くさい発言が目立つのは気になる。

 そしてもうひとつ気に掛かったのは、ハードボイルド小説に相応しくするためのディテールとして、やたらと出てくるバイク・マシーンと料理と珈琲の話。
 世間と隔絶して隠遁暮らしをしている男が、それも、かなり屈折した性格の男がやたらとグルメを気取るのには鼻白む次第で、作者自身の趣味なのだろうと思いながらもスパイスの加減が気に入らない。
 
 ラスト、それまでのもどかしさを忘れさせるくらいの展開に驚きながら、「夜の終焉」と題された通りにふたりの男の先に光明が射すのが救いだろう。

    ◇

The End of Thousands of Nights
夜の終焉/堂場瞬一
【中央公論新社】
定価:上下各1,600円(税別)

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