TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「橘京子の調査報告書」

本文は、閉鎖中の余貴美子非公式応援サイト「Y's Passion」に綴ってきた余貴美子出演作品レヴューを再録・加筆修正したものです。敬称略。

~盗聴撃退!完全マニュアル~
脚本:高橋 美幸
監督:猪崎 宣昭
出演:余貴美子、石橋蓮司、岸田今日子、本田博太郎、小倉一郎、川越美和、長谷川朝晴、岸本裕二、平淑恵、十軒寺梅軒、大西麻恵

初回放映:2005年10月15日 テレビ朝日「土曜ワイド劇場」


 情報社会に埋もれている我々は、知りたいことは何でも手に入れることができるのと同じだけ、自分たちのプライバシーをいとも簡単に手放している。
 ドラマの中でラブホテルの盗聴・盗撮のことが描かれていたが、これらは昔から裏の世界のプロの仕業だった。しかし今では、個人がその世界を自由に行き来できる時代のようだ。ここ10年ぐらいの間に盗聴器に類する機器の販売台数が大幅に増えており、素人でも簡単にこの卑劣な盗聴・盗撮行為が出来る社会になっている。そこで現れたのが盗聴駆除(盗聴バスター)といった仕事。大きな探偵社では盗聴駆除専門の部署もあるし、それ専門の会社も多数出来ている。このドラマで行われていることが、単に絵空事ではない現実がある。

    ◇

 橘京子(余貴美子)は元演歌歌手で盗聴駆除会社「サイレンス&ピース」の代表者。チームは探偵の久保田(有福正志)の依頼で岩蔵建設の創立50周年記念パーティー会場に仕かけられた盗聴器を駆除する。するとその夜、岩蔵建設の社長が殺され、さらに京子と妹で弁護士の加奈子(川越美和)と共同で仕事をしている事務所が荒らされ盗聴器まで見つかった。そして、依頼者の久保田までが死体で発見される。

 京子は高校の同級生の園子(平淑恵)と再会。娘の亜紀(大西麻恵)と市の職員との結婚が間近な彼女だが、市役所の建設課課長だった夫の勇次(十軒寺梅軒)が一年前に自殺しており、今でも夫の死を乗り越えることができず、霊媒師・山崎法天(本田博太郎)に夫の霊を降臨してもらい話をしている。心配する亜紀の依頼で、京子は園子に付き添い法天のもとを訪れるが、そこでは奇声を上げる法天が「私にはやり残したことがある……」と勇次の言葉を京子らに授けるのだった。勇次の自殺には市庁舎の耐震工事の不正落札が絡んでいると噂されていたが、勇次と同期の木島(小倉一郎)はそれを否定していた。
 京子と仲間の鯨岡(石橋蓮司)らは、法天の透視力のトリックを信者らの家に仕掛けた盗聴器だと見抜き、園子の家からもいくつかの盗聴器を発見する。園子は夫の死の真相を探るために、保険外交員として岩蔵建設に入り込んでいて、岩蔵建設の創立50周年記念パーティー会場に盗聴器を仕掛けたのは園子だった。勇次の遺品からはマイクロテープが見つかり、やがて、岩蔵と久保田の殺人事件と一年前の勇次の自殺との関わりが浮かんでくる………。

    ◇

 余貴美子を筆頭に、元音効マンの石橋蓮司、元自衛隊通信部で盗聴探知のエキスパートの岸本祐二、そして元盗聴マニアのオタク長谷川朝晴の3人の仲間を有したこのチーム構成が巧く出来上がっている。そのため、京子の妹の女弁護士や故・岸田今日子演じる母親との描き方も含め、探偵とは違う技術のプロフェッショナルとして、各人の個性をもっと膨らませることで十分にシリーズ化も出来ただろうが、残念ながらこの作品のみで終わってしまった。

 ドラマに流れるテイストは、同じく余貴美子主演ドラマ『女タクシードライバー・シリーズ』と同じくハードボイルド。当然、春成衿子とは違ったアプローチで、都会に住む人間の闇と孤独をクールなタッチで描いている。

 「人に頼ることも、ひとつの勇気よ」

 春成衿子がたったひとりの都会の傍観者であるのとは違って、橘京子には仲間と家族がいる。見つめる先が人間の闇であっても、彼女の人への優しさで光明が見い出されるのは、頼れる仲間たちの心強さがあるからだ。

 「アンタたちさぁ~、なにヌルいこと云ってるの。売られたケンカは買うのよ!」

 スタイリッシュでハードボイルドな余貴美子はカッコいい。
 今回は短かめな髪に、衿が大きく開いたブラウスに濃い色のジャケットとデニムパンツ姿。要所要所でアップになる眼光の鋭さに魅力が集約し、クールである。

 強面の人物像からコメディタッチの軽さまで持ち備えた石橋蓮司と、同じように演技の幅が広い余貴美子とのコンビネーションが見どころである。
 石橋蓮司扮するクジさんが演歌歌手時代からの橘京子の大ファンで、彼女を仄かに慕っている様が何とも可愛いらしく、中でも、夕刻の桟橋を歩くシーンの京子とクジさんのシルエットは情感があっていい。
 オレンジ色のトーンに逆光線の中、クールな話しぶりのあとに「お守り頂いていますから…」と表情を崩してステップを踏む石橋蓮司の姿と、それに応える余貴美子の照れた仕草が何とも可愛いふたりなのだ。
 ドラマ内で余貴美子の衣装チェンジが多い本作では、小道具として出てくる京子の演歌歌手時代のポスターやカセットのジャケット写真がご愛嬌だ。

 インチキ霊媒師の法天役の本田博太郎の怪演ぶりも楽しい。
 オーヴァーアクションの祈祷には大笑いさせられるし、そのあと、インチキを見破られ京子とクジさんに問いつめられるシーンでの小悪党ぶりも見ものだ。

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