TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「女タクシードライバーの事件日誌 2」

本文は、閉鎖中の余貴美子非公式応援サイト「Y's Passion」に綴ってきた余貴美子出演作品レヴューを再録・加筆修正したものです。敬称略。

~作られた目撃者~
脚本:瀧本智行
演出:猪崎宣昭
出演:余貴美子、美保純、大地康雄、北村総一郎、斉藤洋介、佐藤二朗、鶴田忍、中村育二、池内万作、村田雄浩、田中健

初回放映:2004年7月26日 TBS「月曜ミステリー劇場」


 タクシーは様々な客を乗せる。自分の身の上を話す者、ドライバーに八つ当たりする者、上司の悪口を言う者…………。女性タクシードライバーの春成衿子(余貴美子)は、今日もそんな客たちを乗せタクシーを走らせていた。
 深夜、衿子が車中で休憩をしていたとき、傍らを歩いていった男・遠藤(大地康雄)が交差点で車に撥ねられ、衿子は救急車とともに遠藤を近くの相川病院に運んだ。遠藤が検査と手当を受けている間に、衿子は覚えていた車のナンバーを警察官に伝えた。遠藤は息子の健太と二人暮らしで、幸い骨折のみで命に別状はないものの暫く入院しなければならず、成り行きのまま衿子は、健太の世話をすることになった。
 翌日衿子が相川病院を訪れると、遠藤が大騒動を起こしていた。自分の娘がこの病院の医療ミスで殺されたというのだ。しかし病院の相川院長(鶴田忍)は、既に和解しているのだからと取り合わない。別の病院に移った遠藤は、衿子に自分の家族のことを話し始めた。
 健太の生みの母は健太が3歳の時に亡くなり、遠藤は2年前に佳恵(美保純)と再婚したものの彼女とも1年で別れてしまったという。遠藤が「相川病院の医療ミスで殺された」という娘は佳恵の連れ子だった。40度近い熱を出した娘を相川病院に連れていったところ、さんざん待たされた挙げ句、簡単な診察をして座薬を投じただけで入院の必要はないと言われた。しかし娘の熱は下がらず再度病院へ運んだ時にはもう手後れだったという。売れない手品師だった遠藤は裁判を起こしたが、結局は僅かな和解金を手にしただけで仕事もなくなり、それがもとで佳恵とも別れてしまった……。
 一方、遠藤の事故当日に車の炎上事件が起きており、黒こげの焼死体が遠藤から医療ミスで訴えられた若い医師・熊井(池内万作)だっと判明。さらに、その車が遠藤を撥ねた車だったことから事態は急転、思いもかけない展開を見せていく…。

    ◇

 今回は、シリーズ1作目では語られなかった衿子の過去が明らかになる。
 疑獄事件の参考人だった夫(田中健)が赤城山山中で死体となって発見され、事件は自殺として片付けられたという過去を持つ衿子なのだが、ドラマとして、夫の後輩で当時社会部記者だった宮本(村田雄)とともに過去の事件の真相を少しづつ掘り起こしていくのかと思いきや、主人公のバックボーンのひとつとして描かれるのみで、このスタンスはシリーズ4作目まで貫かれ、今後も事件が明らかにはされないだろうと思われる。
 亡き夫との幸せだった日々の追想しか残されていない現実を受け入れた衿子の孤独は、彼女と関わる人間の業に悩み、哀しみや憤りをともに感じ、そして、一縷の希望と温もりを与え、自身に授かる喜びを丁寧に描いていく。その良質さで人気があるシリーズなのである。

 今回も、前作同様に決して幸せな結末は得られない。どちらかと言うと暗く重い終わり方だ。

 医療ミスによる子供の死によって、歯車が狂いだした夫婦の葛藤と悲劇。自分の子供を死なし憤りを夫の連れ子にあたる美保純の悔いが「一からやり直したい」という想いに詰められても、自らが犯罪に手を染めてしまうことで子供への贖罪を叶えることができなくなる。そんな元妻の想いを知る大地康雄もまた、息子をひとりぼっちにしてしまう。 
 遠くの親戚のもとに旅立つ健太の背中を押すものは、ひとりぼっち同志の衿子が授けた孤独を背負うことへの覚悟とやさしさ。
 坂本九の【上を向いて歩こう】が効果的に使用され、涙をこらえる衿子の眼差しでドラマは終わる。

 このシリーズに登場する刑事は、大声をあげたりがなり立てもせず地味に描かれるのだが、それでいてみんな印象に残っている。今回の刑事役は中村育二。

    ◇

★女タクシードライバーの事件日誌1/殺意の交差点★
★女タクシードライバーの事件日誌3/届かなかった手紙★
★女タクシードライバーの事件日誌4/殺意を運ぶ紙ヒコーキ★



 

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Comment

ちゃーすけ says... "都会の寂しさ"
これも良かったですね。
というか、このシリーズは名作なんですが。
都会の寂しさと孤独がひしと、伝わってきます。
2010.12.03 00:04 | URL | #a2H6GHBU [edit]
mickmac says... "Re: 都会の寂しさ"
ちゃーすけさん

余さんの2時間ドラマで子供との関わりが印象的だったのが、この作品のほかに、緒形拳さんの『名無しの探偵シリーズ』で哀しい女を演じていました。(「冬の駅」も名作でした)
この作品はビル・プロンジーニの〈名無しのオプ・シリーズ〉が元でしたが、これも都会の寂しさと孤独が滲む作品でしたが、当然ご覧になっていましたよね?
原作は、20冊近い翻訳が現在ではほとんど手に入れることができないのが残念です。
R・ブロックの〈マット・スカダー・シリーズ〉と共に好きなハードボイルド小説なのですがね。

2010.12.04 00:07 | URL | #- [edit]

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