TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ヨコハマBJブルース」*工藤栄一監督作品

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監督:工藤栄一
原案:松田優作
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
音楽:クリエイション
主題歌:「ブラザーズ・ソング」松田優作
挿入歌:「灰色の街」「マリーズ・ララバイ」「YOKOHAMA HONKY TONK BLUES」松田優作
「Don't Look Back」宇崎竜童
出演:松田優作、辺見マリ、蟹江敬三、財津一郎、田中浩二、山西道広、鹿沼エリ、岡本麗、安岡力也、殿山泰司、山田辰夫、馬淵晴子、宇崎竜童(友情出演)、内田裕也

☆☆☆★ 1981年/東映セントラルフィルム/112分

    ◇

 全編ブルートーンの艶っぽい映像がスタイリッシュな和製ハードボイルド映画の傑作。

 ヨコハマ、うらぶれたブルース・バー“JOJO”で歌っているブルース・シンガーBJ(松田優作)は、食っていくために、裏では探偵の真似事をしている。
 その日、BJは依頼された16歳の家出少年のことで、裏社会を牛耳っているファミリーのボス・牛“ウシ” 宅麻(財津一郎)に呼び出された。BJが見つけだした少年・明“アキラ”(田中浩二)は、牛 宅麻の囲われ者として男色の相手をしていた。帰りたくないという明の言葉に、すごすごと帰ろうとしたBJが目にしたのは、パイソン357マグナム銃をショルダーからぶら下げた牛の片腕、蟻“アリ” 鉄雄(蟹江敬三)の不気味な姿だった。
 かつてNYのブロンクスに住んでいたBJ。その頃からの親友・椋“ムク” 圭介(内田裕也)は刑事になっている。その彼からゴルフ場に呼び出されたBJは「ファミリーに近づき過ぎた。俺は刑事を辞める」と告げられるのだが、その直後、突然銃声が響き、椋はあっけなく殺されてしまう。
 普段からBJを毛嫌いしていた椋の部下の紅屋“ベニヤ”(山西道広)が、BJに容疑をかけ執拗に追い回すなか、BJは蟻の周辺を調べ始める。蟻にもゲイの趣味があり、その仲間を締め上げると、蟻は椋の女房・民子(辺見マリ)と通じているという。民子は、かつてBJの恋人だった。民子は蟻に脅されているという。
 少しづつカラクリが読めてきたBJは、蟻が出入りする眼鏡屋“ガス燈”に探りをいれる。しかしそこは組織の巣窟で、BJは店の主人(殿山泰司)や用心棒の安永(安岡力也)らに捕らえられてしまう…………。
 
    ◇

 「横浜ホンキートンク・ブルース」を初めて聴いたのがこの映画だったと思う。
 とことんヨコハマの街を歩く優作の姿が印象的だ。

 ハードボイルド特有な気障なセリフを、日本人でも様になるよう仕立てた丸山昇一のシナリオと、横浜オール・ロケーションの仙元誠三のカメラワークを持ってすれば、工藤栄一監督最高のハードボイルド映画に仕上がった本作が、松田優作の映画としても一番好きな作品となる。

 原案は松田優作で、そのイメージはロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』('73)にインスパイアされたもの。筋立ての込み入り具合からラストの展開まで唖然とするくらい酷似している。しかし、前作『野獣死すべし』('80)の狂気に辟易した優作のナルシズムより、ぶっきらぼうな自然体で取り組んでいる本作の方が好感を持てる。残念なのはラストのタメが長過ぎることか。

 松田優作から指名を受けた工藤栄一監督。初めてタッグを組んだふたりの間で「アカぬけた作品を作る」が一致した意見だったと云う。
 “ヨコハマ”とカタカナ表記が似合う街の佇まいは、夜の黄金町のガード下や山手の“ドルフィン”の店内、ランドマークタワーが出来る以前の埋め立て地の寂れた雰囲気など、その絵作りに惹き込まれてしまう。
 大作主義に陥らない、いかにもプログラム・ピクチャー的展開は、後半、筋が粗く説明不足になるとは云え、奥行きのある縦の構図が多用され、その画面のなかで一筋縄ではいかない人間たちを蠢かすモノトーンの世界は、ため息が出るくらい素晴らしい。

 音楽担当はクリエイションのギタリスト竹田和夫で、クリエイションをバックに歌う松田優作のブルーズにも魅了される。原田芳雄風にブルーズを歌い、萩原健一ばりに街を彷徨う優作は、民子の前で披露する「YOKOHAMA HONKY TONK BLUES」が絶品。
 主題歌としてクレジットされている「ブラザーズ・ソング」は、BJと明が心を通わせるシーンに流れるが、タイトルバックでライヴ演奏する「灰色の街」の方が全編のテーマとして流れるので、主題歌としては「灰色の街」が相応しいだろう。
 ライヴシーンは、本作公開時にリリースされたアルバム『HARDEST DAY』のPVとしても充分な効果を発揮し、夏に行われたツアーがライヴアルバム『HARDEST NIGHT LIVE』として最高の出来に仕上がっている。
 松田優作の「YOKOHAMA HONKY TONK BLUES」は、エディ藩のギターがむせび泣くこのヴァージョンが最高。

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 さて優作以外の俳優たち、内田裕也をはじめ宇崎竜童、蟹江敬三、財津一郎、殿山泰司ら共演者のアクの強さには強く惹かれる。

 ♪カッコつけ~てヨコハマ……………稲葉喜美子の「はあばあぶるうす」ではないが、カッコつけたセリフが多い本作でカッコつけた宇崎竜童も、また格好いい。
 依頼人の馬淵晴子が“JOJO”にBJの報告を聞きに来る。我が子が如何わしいことに身を堕としていることを察知した母親が「もう探さないし、二度と会うこともないだろうけど、身体だけは気をつけるようにって」の言葉を残して出て行くと、それまで黄色いブランケットを肩に羽織りヘッドフォンを耳にしていた宇崎竜童が、アンプからヘッドフォンジャックを引き抜くと、竜童自身の歌「Don't Look Back」が大音量で流れる………決まり過ぎ。

 埠頭を歩き、街を彷徨う辺見マリの格好が、石井隆の『雨のエトランゼ』('79)土屋名美の姿を思い浮かべてしまう。

    ◇

★ロング・グッドバイ★
★稲葉喜美子★

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