TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「その後の仁義なき戦い」*工藤栄一監督作品



監督:工藤栄一
脚本:神波史男、松田寛夫
撮影:中島徹
音楽:柳ジョージ&レイニーウッド
出演:根津甚八、宇崎竜童、松崎しげる、原田美枝子、松方弘樹、成田三樹夫、金子信雄、松尾嘉代、絵沢萠子、山崎努、花紀京、ガッツ石松、小松方正、藤村富美男、小池朝雄、山城新伍、泉谷しげる、萩原健一(特別出演)

☆☆☆☆ 1979年/東映/128分

    ◇

 俺たちは曠野の閃光。
 炎の中からはじけ飛ぶ最後の凶弾。
 ダチよ、お前は何処まで走れるか!?


 大阪の大組織石黒組の若頭の座を巡って、傘下の朝倉組と花村組の対立が深まっていた。そんな中、朝倉組系列に所属する相羽年男(根津甚八)と、同じく朝倉組系列の九州の竜野組組員・根岸昇治(宇崎竜童)、水沼啓一(松崎しげる)の若いチンピラ3人は意気投合し、友情を深め、年男は昇治の妹・明子(原田美枝子)と婚約する。
 朝倉(金子信雄)と津川(成田三樹夫)は、竜野組と対立する弱小組織・藤岡組に目をつけ、竜野組をつぶし、そこの争いに花村組を巻き込もうと画策する。それは博多駅で藤岡組の組員が竜野(小松方正)を襲撃する計画。その手引きを、年男に命じる津川。こうして3人の友情は、上部組織の抗争に巻き込まれ脆くも壊されてしまう。
 殺害現場にいた年男を見た昇治と啓一は不信に思い年男をリンチにするが、明子と代貸の池永(松方弘樹)の口利きで命だけは助けられる。
 池永は花村組の高木(山崎努)の助けを借りて藤岡組に殴り込むが、竜野組は解散。組の再建を約束して逃亡生活に入る池永らだが、昇治は朝倉を射殺し自らも惨殺され、啓一は以前からスカウトされていた歌手の道を選び、水沼圭と名乗りデビューする。
 明子を伴い大阪へ逃げ帰っていた年男は、不自由な足の痛みを癒すためシャブに溺れていた。そんな年男のもとを訪ねてきた池永が、500万円を元手にシャブの売買で資金を集め組の再建話を持ちかける。スター歌手になった啓一を強請り金を集めるが、釜本(山城新伍)に騙され金を横取りされ、年男は釜本を殺してしまう。池永とともに津川をも殺し金を取り戻すが、池永は射殺され、辛うじて逃げた年男はその金を啓一や母親、そして明子宛に送金するのだった。
 年男の身体に沁みるのは、飲み屋のテレビで聴く友の歌声。気張った格好に身を包み、最後の金で手に入れた銃だけを味方にして、モーテルをあとにする。
 昭和54年5月、大阪大正区の路上にて相羽年男(二十六歳)射殺。
 明子の手には一丁の拳銃だけが残された…………。

    ◇

 70年代、TVの「必殺シリーズ」や「傷だらけの天使」などで時代を疾風するアナーキーな人間たちを、陰影に富んだ映像美と叙情性といったセンスで独自の美学を確立して活躍していた工藤栄一監督。本作は5年ぶりとなるスクリーン復帰初の作品で、“仁義なき戦い”の冠を付けた番外編的スタンスで公開されたのだが、実際はシリーズとはまったくの別物。
 工藤監督はやくざ映画の母屋を借り、若いチンピラたちの友情と裏切り、そして、生き様と死に様を鮮烈に描写。群像劇が優れた青春映画として記憶に残る作品となっているのは、当時まだ状況劇場在籍中の根津甚八、ミュージシャンの宇崎竜童、歌手の松崎しげる、そして原田美枝子ら、東映外部から招聘された彼らが等身大の若者像を瑞々しく演じているからだ。
 彼らを取り巻く金子信雄、成田三樹夫、松方弘樹、小池朝雄、山城新伍らお馴染み「仁義なき戦い」シリーズの面々は、ここでは狂言回しのような存在。工藤監督はシリーズの終焉を見せつけ、しいては実録やくざ映画へ引導を渡したのだ。

 とは云っても、これまでシリーズの屋台骨を背負ってきた東映俳優陣のこと、山城新伍の軽さや金子信雄の田舎芝居もあるし、小池朝雄の粗暴ぶりと小松方正の狼狽ぶりなど、ベテランの存在感は示してくれる。松方弘樹の情の厚さも格好良すぎるくらい決まっている。
 そして、最高なのが成田三樹夫。恫喝と猫なで声で、これまで以上の悪賢さとアクの強さ。賭場の控室で、組のために片足が不自由になった根津甚八を丸め込む狡猾ぶりは絶品の芝居である。
 そして、そのそばで黙々と寿司をつまみ、根津を無視しながらも「若いもんがイイ気になってんなや」と言いたげな岩尾正隆の存在感。台詞もなしに、ただ居るだけの芝居に東映ピラニア軍団の底力を感じるのだ。

 ほかにもガッツ石松や、「必殺シリーズ」同様の眼力で凄みを見せる元阪神タイガースの藤村富美男、気の弱い松方の弟役の花紀 京、銃の密売人の泉谷しげるなど門外漢の出演者が多いなか、場をさらったのは萩原健一。飲み屋でシャブ中になった根津甚八に絡む怪演である。
 ショーケンは根津甚八の役は自分が演るはずだったと『日本映画[監督・俳優]論』で語っているが、根津甚八のシャブ中姿もまんざらではなく『さらば愛しき大地』('82)で演じた迫真の芝居の下地を見たような気がする。

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 工藤監督の代名詞となった、光輝く濡れた道路のロングショットをはじめ、逆光の美しさは少し大人しめだが、原田美枝子が「ウチにもギラギラした思い出ば作って!」と叫ぶ船着き場シーンや、友情が崩壊する博多駅での殺しのシーン、霧雨煙るブルーグレーのトーンが美しい竜童の葬式シーン、モーテルの一室で死相を漂わせた根津が笑いながら自分のこめかみに銃を向けるシーンなど、その多くが若さゆえにくぐもる叫びと悲壮感漂う名シーンとなっている。
 根津が鏡に向かって銃を構える仕草は「タクシードライバー」('76)のデ・ニーロを連想させるが、トレンチコートに帽子を被った姿は松田優作が『野獣死すべし』('80)でそっくり真似をしている。
 このあと、工藤監督は松田優作と『ヨコハマBJブルース』('81)で見事なハードボイルド映画を作りあげ、続く『野獣刑事〈デカ〉』('82)では今回台詞のなかった泉谷しげるをサブキャラクターで活かしている。

 音楽は柳ジョージ&レイニーウッド。ショーケンからの推薦があったろうと想像できるマッチング。前年リリースのセカンド・アルバムに収録されていた「Heavy Days」が全編に流れるブルース・ロックの劇伴が、この作品のもうひとつの魅力でもある。

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★日本映画[監督・俳優]論★
★さらば愛しき大地★
★野獣刑事★

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