TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ヴェロシティ」ディーン・クーンツ



 本国アメリカでは2005年に発表されたクーンツの日本最新刊(10月発刊)で、クーンツらしい不条理サスペンスの傑作だ。

 カリフォルニアのナパ・ヴァレー。
 主人公ビリー・ワイルズは、少年期に両親との間に起きた出来事をトラウマを克服しながら小説家として歩み始めたが、その矢先に、恋人のバーバラが事故により昏睡状態となってしまった。以来、ビリーは小説家の道を閉ざし、人とのコミュニケーションを極力避け、バーバラを見守りながらバーテンとしてひっそりと暮らしていた。
 静かに日常を過ごしていたある日、一通の不審なメモからビリーの生活は一変した。それは殺人予告。
 「おまえがこのメモを警察に届けないと、金髪美人の教師が死ぬ。おまえがこのメモを警察に届けたら、慈善活動に勤しんでいるばあさんを殺す。6時間以内に決断しろ。どちらを選ぶかは、おまえ次第だ」
 否応なく犠牲者を選ばせる脅迫状だった。そして正体不明の犯人の予告通りに、事件の容疑者をビリーに仕立て上げるような痕跡を残しながら連続殺人がはじまる……。

 自分が狙われるのではなく、自分の行動で必ず誰かが死ぬのだから、そこに生まれるのはビリーの良心の呵責。
 この正体不明で異常な殺人者に、絶体絶命のビリーはどう立ち向かうのか。

 また、4年もの軽い昏睡状態にある恋人が、時々口走る不可解な単語は何を意味するのか。
 不利な状況が速度〈ヴェロシティ〉を増し続ける恐怖に立ち向かうのも、逃げ場のない状態での孤軍奮闘も、この眠れる恋人の存在がある。
 主人公の行動は、進むか否かで悩むより、正義のために自分の存在理由を定め突き進む。
 後半、性急過ぎる終わりを迎えるが、ラストの数行はいいぞ。

    ◇

ヴェロシティ(上)(下)/ディーン・クーンツ
訳:田中一江
【講談社文庫】
定価 各838円(税別)

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