TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

帰ってきた紅次郎★ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う*石井隆監督作品

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A NIGHT IN NUDE 2
監督:石井隆
脚本:石井隆
音楽:安川午朗
撮影:柳田裕男、寺田緑郎
テーマ曲:「I'm A Fool To Want You ~ 恋は愚かというけれど」
挿入歌:「絹の靴下」
出演:竹中直人、佐藤寛子、井上晴美、東風万智子、津田寛治、宍戸錠/大竹しのぶ

☆☆☆☆ 2010年/角川映画・クロックワークス・ファムファタル/127分


  ◆以下、物語の細部に触れます。【その壱】



    ◇

 石井隆作品における永遠のミューズ“名美”が、13年という眠りから目覚めた『人が人を愛することのどうしようもなさ』では、相変わらず村木不在のままドラマは進行していった。そしてあれから3年、石井隆監督の新作は『ヌードの夜』からは実に17年ぶりに、紅次郎こと村木哲郎の“その後”が描かれる。これは、常に傍観者として存在した村木哲郎の物語である。

 東京近郊のとある街でバーを営むあゆみ(大竹しのぶ)、桃(井上晴美)、れん(佐藤寛子)の美しい母娘。
 その末娘れんが、ある日“なんでも代行屋”を営む紅次郎(くれないじろう/竹中直人)の事務所を訪ねてくる。「父の散骨時に一緒にばらまいてしまった形見のロレックスを探して欲しい」。
 いかにもウソ臭い依頼だったが、世捨て人のように生きて来た性善説男・紅次郎は、天使のように純粋なれんを放ってはおけず捜索を始める。
 しかし、これがきっかけとなり、 “3人の女たち”の欲望を纏った完全犯罪に巻き込まれてゆくことになる。そして、その完全犯罪の先にあったのは、れんの抱えるさらにおぞましい闇だった。次郎はれんを救うため、彼女の闇を抱き続けて来たある深い森へと導かれるように入ってゆく……。

    ◇

 前作『ヌードの夜』で名美(余貴美子)を失った紅次郎にとって、人生に何の意味を見いだし生きてきたのか。17年ぶりに我々の前に姿を現した紅次郎は、どうしようもない無常感しか漂っていなかった。
 当たり前の話だ。無頼を気取りながらも気弱で堅気なまっとうな紅次郎が、そんな簡単に名美の呪縛から逃れることなど出来ようもないだろう。失った時間を引きずることで、何とか生きている男だ。男はみんな未練たらしい。センチメンタルこそ石井作品の男たちにはお似合いだ。

 ぼくはこの作品を文句なく絶賛するが、もし一般的に評価を落とす箇所があるとすれば、それは紅次郎がなぜこんな小娘の手玉に乗ってしまうのかの一点であろう。

 紅次郎のだだっ広い事務所の壁際の棚の上には、名美にもらったクジラの置物がある。それも未練。しかし、写真立てのなかは空っぽだ。名美の姿を見るのが辛いか。苦しいか、紅次郎。

 名美を救えなかったことで呵責に苦しみ、すべてに絶望している紅次郎が救済を求めるとしたら、それは名美の面影や名残りを追うこと。
 そんな次郎だから、彼の前に現れた忌まわしき過去を背負い込んだ“れん”という少女に、素直に肩入れをする。それは、名美への贖罪を重ねるもの。どんなに凶暴な悪魔であっても、次郎にとって救済は己自身のアイデンティティに関わること。失っていくものこそ、生きていく道先案内となっていく男のどうしようもなさだ。

 竹中直人には失礼な発言だが、同年代の彼の首から腰にかけて見られる老いの時間が、名美を亡くした紅次郎の無常な日々の積み重ねと合致し、何ともリアルに感情移入させられてしまった。

 この映画、男の贖罪への道を前提にして観ていけば、後半、紅次郎が殺人教唆あるいは共謀加担する動機に納得がいくだろう。『ヌードの夜』の後日談として映画は成り立っているが、もちろん前作『ヌードの夜』を観ていないひとでも楽しめる。

 “紅次郎物語”と云えども、やはり石井隆作品はヒロイン至上主義。名美の切なさを反故するような強烈な女たちの集合で、無常の世界でただ生きてるだけのお人好しの紅次郎は、またも、どん底に引きずり込まれてしまうのだ……………。


★ヌードの夜★


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Comment

shimizukiriko says... ""
観てきましたよ!

最初の5分は会場をウロウロしてて、見落としてしまいましたが…。
殺されて、風呂場で解体するシーンから観ました(泣)
100名ほどの小さな会場で、前から二番目の席…
悪い条件でした…。

後日、DVDで観ましょう…。

石井監督も好きだし、知り合いのNさんもタイトルで関与してるのが、
分かりました…。

冒頭に出てる俳優Iさんも石井作品で一番好きだと言ってました…。
 
皆さん、体張って、いい芝居してるし,...。

力の入った作品である事には違いありません。

でも私は…
皆さんのパワフルな芝居に少々疲れました…。

ごめんなさい
2010.10.07 08:03 | URL | #- [edit]
mickmac says... "Re: タイトルなし"
kirikoさん

>最初の5分は会場をウロウロしてて、見落としてしまいましたが…。
………前から二番目の席…

最近の劇場って途中入場ができないとこが多いのですが、そんな悪いポジションだなんて、いくら小さな劇場でも満員だったのでしょうか。
まずは、それだけ朗報ですね。

>皆さんのパワフルな芝居に少々疲れました…。 ごめんなさい

鑑賞時の悪条件もあったのかも知れませんが、確かに、今回の作品は作る側も観る側も、力のいる映画でしょうネ。
2010.10.09 00:08 | URL | #- [edit]

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