TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「雨の訪問者」*ルネ・クレマン



LE PASSAGER DE LA PLUIE
監督:ルネ・クレマン
脚本:セバスチャン・ジャプリゾ
撮影:アンドレア・ヴァンダン
音楽:フランシス・レイ
出演:チャールズ・ブロンソン、マルレーヌ・ジョベール、ジル・アイアランド、コリンヌ・マルシャン、ガブリエレ・テンティ、ジャン・ガヴァン

☆☆☆☆ 1970年/フランス=イタリア/118分

    ◇

 『太陽がいっぱい』('59)以降、サスペンスを多く手掛けるようになったルネ・クレマン監督。晩年の70年代は叙情サスペンスを得意としており、本作はそのきっかけとなる作品。
 『さらば友よ』('68)でチャールズ・ブロンソンを気に入ったセバスチャン・ジャプリゾが、ブロンソンのために書き下ろしたミステリアスな脚本と、流麗なフランシス・レイのテーマが耳に残る傑作である。


 地中海に面した避暑地。夏が過ぎたある雨の日、グレイのレインコート姿でトランス・ワールド航空の赤いバッグを下げた男がバスから降りてきた。

 母親が経営するボウリング場の窓から、メリーことメランコリー(マルレーヌ・ジョベール)がバスを眺めている。
 雨に濡れる窓ガラスごしに見えるマルレーヌ・ジョベールの顔が、とてもコケティッシュで好きなシーンだ。物憂げに言う「雨が連れてきたのよ」も印象的で、雨の中を歩く男を映し出していくタイトルバックがとても不気味となる。

 夕方、友人のニコール(ジル・アイアランド)のブティックで、今度はその男が自分を見つめているのに気づくメランコリー。
 その日の夜、フライト中のパイロットの夫トニー(ガブリエレ・テンティ)の帰宅を待つメランコリーは、自宅に押し入ってきたレインコートの男に暴行されてしまう。そして、目が覚め地下室に潜んでいた男を見つけ猟銃で射殺してしまう。放心状態のまま一時は警察に電話をするメランコリーだったが、思いとどまり男をワゴン車に乗せ、崖の上から海へ捨てるのだった。

 翌日、夫と共に友人の結婚式に出席したメランコリーは、夫が見る新聞記事から海岸で死体が発見されたことを知る。そこに見知らぬアメリカ人が現れ、メランコリーに「なぜ男を殺した」と声をかけてきた。
 男の名前はドブス(チャールズ・ブロンソン)。
 この男は何者? 赤いバッグの男は誰? 「私は何も知らない」
 こうして、決して男のことを認めないメランコリーとドブスの駆け引きがはじまる………。
 
    ◇

  よほど井戸が深いのか 落ちるのが遅いのか
  彼女には 周囲を見渡し 
  我が身を案じる時間がたっぷりあった
      
 1972年の『狼は天使の匂い』でルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を引用したジャプリゾだったが、それに先駆けた本作の冒頭にも「不思議の国のアリス」の一節が引用されている。

 アリスの不思議な体験と同じように、メランコリーという名のヒロインが突然、暴力と殺人の世界に放り込まれ、怪しげな人物たちに翻弄されながら自分のトラウマと闘う5日間は、メルヘンで味付けられたミステリーとして不思議な雰囲気を醸し出している。

 ブロンソンがメランコリーを追いつめていく過程で、彼女の夫や親友への不審が浮き彫りになっていくのだが、ニタニタ笑いのブロンソンのユーモアは、謎解きミステリーと絶妙のバランスをとりあっている。
 たとえば、ガラス窓めがけて投げるクルミ。
 ガラスが割れれば「君は恋をしている。恋している証拠だ」という、一種占いのようなゲーム。
 ジャプリゾの脚本には『さらば友よ』のコインや、『狼は天使の匂い』の煙草をディテールにした“大人のゲーム”が出てくるのだが、本作ではクルミが洒落っ気あるアイテムとして使われる。
 メランコリーとドブスが心を通わせたラストには、ブロンソンの苦笑いへ粋な味付けとなっているのだ。

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 ミステリアスな雰囲気を盛り上げる主題曲(テーマ)と、友人の結婚式シーンに流れる魅惑的なワルツ。日本ではこの「雨の訪問者~ワルツ」が大ヒットしている。
 この作品をとても気に入り印象深いものにしているのは、フランシス・レイの音楽によるところが大きい。

 セバスチャン・ジャプリゾが作詞したテーマ曲は、当時新進だったシャンソン歌手セヴェリーヌの歌声でクロージングに流れる。

  雨のもとで思い出す 海の色の空 
  あの憂鬱(メランコリー)が一番好きとしたら
  ひとは何て言うだろう
  あなたを知るのが遅すぎた 
  得がたい夜 雨と一緒にやって来た

    

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