TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「シシリアン」*アンリ・ヴェルヌイユ



LE CLAN DES SICILIENS
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
原作:オーギュスト・ル・ブルトン
脚本:ジョゼ・ジョバンニ、アンリ・ヴェルヌイユ、ピエール・ペレグリ
撮影:アンリ・ドカエ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、イリナ・デミック、アメデオ・ナザリ、シドニー・チャップリン、エリーゼ・チェガニ、カレン・ブランゲルノン、マーク・ポレル、イヴ・ルフェーブル

☆☆☆☆ 1969年/フランス=アメリカ/123分

    ◇

 監督は『ヘッドライト』('55/ジャン・ギャバン)『地下室のメロディ』('63/ジャン・ギャバン、アラン・ドロン)の名匠アンリ・ヴェルヌイユ。
 フランス映画界を代表する3大スター、ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラが共演したことで大きな話題を獲ったクライム・サスペンスだ。

 現代。パリ在住のヴィットリオ・マナレーゼ(ジャン・ギャバン)はシシリア出身のマフィアの顔役で、妻と二人の息子アルド(イヴ・ルフェーブル)とセルジオ(マーク・ポレル)、娘夫婦と孫、そしてアルドの妻でフランス人のジャンヌ(イリナ・デミック)らと暮らし、故郷シシリア島の土地を買い占め一家で帰郷する計画を立てていた。

 ロジェ・サルテ(アラン・ドロン)は、強盗と警官殺しの罪で刑務所に拘置中だが、今なお余罪を追求され裁判所と刑務所の往復を繰り返している。その彼が、20万ドル以上にもなる切手コレクションを報酬にしてマナレーゼ一家に脱獄を依頼し、移動中の護送車からまんまと逃亡することに成功した。

 サルテは、ヴィットリオに匿われている間に獄中で入手したある話を持ちかける。パリ一流の宝石店がローマで展示中の5000万ドルもの宝石を奪う話だ。
 大仕事のためヴィットリオは、ニューヨークのマフィアの顔役で友人のトニー・ニコシア(アメデオ・ナザリ)に協力をあおぎ、ふたりでローマに下見に出かけるが、あまりの厳重な警備のため展示場に忍び込むことを断念し、宝石がパリからニューヨークの展示場に移送される間に強奪する計画を練ることにした。

 一方、サルテ逮捕に執念を燃やすパリ警察のル・ゴフ警部(リノ・ヴァンチュラ)は、彼の足取りをひとつひとつ地道に追いかけていた………。

    ◇

 初見は1970年4月。当時アラン・ドロンの人気が多かったなか、ぼくはリノ・ヴァンチュラがとにかく渋くて大好きで、この3大スターの共演といったことだけでワクワクしたもので、日本公開初日に駆けつけている。

 アラン・ドロンは当然二枚目の役柄だが、『サムライ』での殺し屋ジェフ・コステロのようなクールでカッコいいヒーローではなく、残虐で冷酷な女好きの若者で、売春宿から髪振り乱しながら逃げるアクションもひとつの見せ場。
 ジャン・ギャバンは老練で沈着冷静な老人だが、その重厚な存在感はやはり凄い。
 リノ・ヴァンチュラは、フラストレーションの塊みたいな中年男だ。彼がディテールとして使う煙草のエピソードは、この後、邦画洋画を問わずに真似をした作品がいくつも登場している。

 アメリカ資本が注入された本作は、フレンチ・フィルム・ノワールをハリウッド流の娯楽作品へアプローチしたことでも注目された作品だ。
 そのため、これまでのフレンチ・フィルム・ノワールに見られたような個人のヒロイズムが薄められ、組織の団結力とアクションの創造性に力が入れられたものとなっている。
 大作主義への危惧は免れなかったが、出来上がりはまったくもって素晴らしくエンターテインメントな作品として面白く、3大スターの三者三様の個性という糸が、ドラマの流れのなかで縺れあい組合わされ、クライム・ムーヴィーの彩りを創造している。

 サスペンス色が濃いのは、冒頭の脱獄シーンからスリルに富んでいる。
 見せ場はハイジャック。各人がDC-8旅客機に乗り込むまでにもスリルあるシーンを混ぜ、猟犬リノ・ヴァンチュラへの伏線を張りながら、ハイジャックしたDC-8旅客機をどうするのか予測させないスリル。そして、スリリングな逃亡計画。いかにもアメリカ映画が好む大掛かりなアクションだが、冷静な行動でハイジャックするジャン・ギャバンやアラン・ドロンが無言でコックピット内に立つ姿こそが、フィルム・ノワールの香り。アメリカ風にアレンジ出来ない貫禄を漂わせている。

 非情な暗黒組織に生きる男たちを描いているなかで、サルテと彼の妹の関係が純情で、日活アクション映画などに見られるような日本人好みのエピソードが、唯一ヒロイズムかもしれない。
 そんなふたりの最後の別れのシーンや、ヴィットリオとトニーの再会シーンなども印象深く、ハリウッド流として作られた映画だけど、ラストのジャン・ギャバンとリノ・ヴァンチュラの台詞のやりとりは、フランス映画特有の余韻を残す名シーンとなっている。

 見事に宝石強奪を成功させたヴィットリオたちとサルテだったが、サルテとジャンヌの密会の発覚で思わぬ方向にドラマは動く。シシリア人の結束心と、マナレーゼ一家のなかで浮いた存在だったジャンヌの自尊心。サルテが起こした波風は、個人の存在が組織の団結力に埋もれる現実を知らしめている。
 
 撮影は、『死刑台のエレベーター』('58)『太陽がいっぱい』('60)『サムライ』('67)『仁義』('69)など、色のコントラストを鮮やかに操るフランス映画界最高の名キャメラマン、アンリ・ドカエ。
 音楽は、マカロニ・ウエスタンで名声を残したエンニオ・モリコーネが担当。いかにもモリコーネ風のスコアがオープニングから軽快に響き、アクション映画の醍醐味を楽しむことができる。

 日本公開時はフランス語のオリジナル版で上映時間123分だったが、現在市販されているDVDは英語吹替えの119分版となっている。
 フランス映画の英語吹替えには違和感があるのだが、日本語吹替えは許せてしまう矛盾。
 当時TV放送された日本語吹替えが特典されているので、今回は懐かしい野沢那智(アラン・ドロン)、森山周一郎(ジャン・ギャバン)、田口計(リノ・ヴァンチュラ)の三人を堪能していたのだった。

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