TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「赤と黒の熱情」*工藤栄一監督作品

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PASSION
監督:工藤栄一
脚本:野沢 尚
撮影:仙元誠三
音楽:埜邑紀見男
出演:陣内孝則、麻生祐未、仲村トオル、古尾谷雅人、余貴美子、室田日出男、内藤剛志、大杉漣、柳葉敏郎

☆☆★ 1992年/東映/109分


 横須賀を舞台に、記憶障害になった女と、彼女の幸せと自分の罪の償いを賭けた若いヤクザとの儚い夢物語だ。

 ヤクザの松浦楯夫(陣内孝則)は、組の資金源三億円を強奪した弟分の矢崎文治(柳葉敏郎)を組の掟によって射殺した。ふたりは幼い頃から兄弟同然の仲だったが、組の命令には逆らえなかった。
 文治のたった一人の身内となる妹の沙織(麻生祐未)は、その衝撃と組の幹部・桐島(古尾谷雅人)の罠によって麻薬漬けとなった。
 事件から6年。出所した楯夫は、弟分の研作(仲村トオル)ら仲間たちと、記憶喪失となって精神病院にいる沙織のために、たとえウソであっても“美しい過去”で励まそうと思い出づくりをはじめるのだった。
 しかしそんな幸せな暮らしのふたりの前に、かつての記憶を呼び起こす事件が起き、ふたたび彼らの生き方は狂いだすのだった……。

    ◇

 光と影の魔術師・工藤監督らしい画面構成と演出は、メインタイトル前に見られる。
 雨降る中で、麻生祐未が持つ赤いパラソルが風に吹き飛ばされるシーンは、同じ年公開の『死んでもいい』のオープニング・シーンにダブり、その後、野沢尚脚本のテレビドラマ『青い鳥』('97)の夏川結衣登場へと繋がるような印象的なショットであった。

 問題は、それ以降のストーリー展開。
 真記子(余貴美子)のバーに集まる仲間たちの描かれ方など、群像劇を得意とする工藤監督らしさが活かされず、野沢尚氏の脚本の甘さが露呈しているのかもしれない。
 かつては“街の女たち”を束ねるバーのマダムで、今はレストランなどを経営する女性実業家役の余貴美子は、6年ぶりに出所してきた陣内孝則をベッドで迎え、膝を抱え「おかえりなさい」と見上げる目つきと仕草が艶っぽく、姐ご肌が似合い、仲間の信頼にも厚く、力強さと色っぽさを兼ね備えたいい役まわりだったのに後半、何も活かされないのが惜しい。

 沙織の失われた記憶を新しい思い出づくりとして作ってやろうと、仲間たちが奔走する“足ながおじさん的夢物語”が核にあるのだから、その仲間内のウソッぱちな物語を、映画を観ている観客には劇中でのリアリティに変えてくれないことには、観ていてどんどとん白けた気持ちになってくる。

 ラストの離れ小島(松田優作の『蘇える金狼』に登場した舞台と同じ)での銃撃戦や、古尾谷雅人や内藤剛志の怪演もあるのだが、展開の甘さが気になり失望に変わった作品であった。


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