TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「アウトレイジ」*北野武監督作品



OUTRAGE
監督:北野武
脚本:北野武
音楽:鈴木慶一
撮影:柳島克己
編集:北野武
出演:ビートたけし、三浦友和、椎名桔平、加瀬亮、石橋蓮司、國村隼、小日向文世、北村総一朗、杉本哲太、塚本高史、中野英雄、板谷由夏

☆☆☆★ 2010年/オフィス北野、ワーナー・ブラザーズ/109分

    ◇

 坂本順治監督の『新・仁義なき戦い』('00)以来、久しく映画館では見ることのなかったヤクザ映画。北野武の最新作は、惨めで格好悪い男たちの群像劇で、寡黙だったこれまでの北野作品とは違い、ひたすらよく喋り、よく動く。
 期待以上に面白く、想像したより娯楽性のある作品だった。

 関東一円を取り仕切る広域暴力団・山王会本家会長の関内(北村総一朗)は、傘下の池元組が直系でない弱小ヤクザの村瀬組と兄弟盃を交わしていることが気に入らず、若頭の加藤(三浦友和)を通して池元(國村隼)に村瀬(石橋蓮司)を締め付けるよう命令をする。
 困った池元は配下の大友組組長・大友(ビートたけし)に、形だけでいいからとその“厄介”な仕事を任せるが、そのことが発端で、次第に池元組と山王会本家を巻き込む壮絶な権力闘争へと発展していく………。

    ◇

 正攻法で撮ったヴァイオレンスとは云え、そこは作家性の強い北野武らしく、深作欣二のようなダイナミズムや石井隆のようなロマンティシズムを一切省き、ただ暴力のみの単純さで疾走する一風変わったトーンを作り上げている。“キタノ・ブルー”ならぬ“キタノ・ノワール”と呼ぶに相応しいだろう。
 そして、その暴力描写はどれもハンパない残酷さがあるものの、暴力連鎖の虚しさを“死”と“生”の「見せ物」に転換した北野流笑いの世界が漂っている。
 
 相変わらず状況説明を省いていく展開なので、あっちについたモンとこっちについたモンの、親(組長)と子(舎弟)たちとの関係性は一切見えてこない。見えてくるのは、すべての登場人物に感情移入できない愚か者の集団。11人の男たちが「欲」につられて破滅の道を突っ走る行程には、「情」や「美学」は一切見られない。極道世界の中だけにある価値観が崩れていく様でしかない。ラストで生き残る人間ですら、破滅の道の途上にいるのであって、延々とつづくメビウスの輪の如く、彼らには愚かさしかない。

 「一人くらい生きてねえとよ、結果、わかんねぇじゃねえか」

 たけし扮する大友と大友組若頭の水野(椎名桔平)にだけは、どこか哀愁を感じさせるものがある。それは、ふたりが、それこそ『仁義なき戦い」の中に登場するような“旧態然とした半端者”として描かれているからだろう。
 姑息で、金に汚く、口先だけの池元(國村準が絶品!)の命令を配下の大友は絶対服従でやり遂げるも、その時の大友の虚しさは「義理」に縛られた哀れな男でしかない。しかし、ついにブチ切れるんだな。ここが文太さんとちがうところよ。
 組員がつぎから次へと殺されていく中で、大友は水野だけは逃げて生き延びろと促すが、もちろん水野に生き延びる術はなく、その死に様は作品中最も惨い。と同時に、最も美しい画面になっているのだから、椎名桔平は一番おいしい役を貰っている。

 強欲で金子信雄的役回りの國村準、コメディ・リリーフとして場をさらう石橋蓮司、パラノイアな中野英雄、不気味な北村総一朗など、北野映画初のネームヴァリューのある俳優陣で固めたキャスティングは効果的で、やくざ映画には絶対オファーがこないであろう小日向文世、加瀬亮、三浦友和の意表を突く演技も面白い。
 特に小日向文世は、大友と大学のボクシング部の先輩後輩にあたるマル暴刑事役で、いつも大友に「勝ったとこなんて見たことねえぞ」と見下げられながらも、後半、大友を上回る一面を現すところのしたたかさ。優しい顔だからこそ裏の顔は怖い。

 数少ない女優たちのなか、大友の情婦として唯一台詞らしいセリフのある板谷由夏に存在感があったのに(お気に入りの女優だからかもしれないが…)、若手の雄、塚本高史が少し残念な使われ方だったな。

 

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