TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「夕陽に赤い俺の顔」*篠田正浩監督作品

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MURDERERS 8
監督:篠田正浩
脚本:寺山修司
音楽:山本直純
撮影:小杉正雄
劇中歌:デュークエイセス
出演:川津祐介、岩下志麻、炎加世子、渡辺文雄、内田良平、水島弘、諸角啓二郎、小坂一也、平尾昌晃、三井弘次、菅井一郎、神山繁、西村晃、柏木優子

☆☆☆ 1961年/松竹/83分

    ◇

 寺山修司のオリジナル脚本で、日本を舞台に殺し屋集団とガンマニアの青年の攻防を、ポップアート風に描いたアクション・ムーヴィーのパロディで、シャレたコメディに仕上がった快作である。


 悪徳建築会社の水田専務(菅井一郎)は、会社の不正を暴こうとする業界紙の編集長・左井(西村晃)の秘書・有坂茉那(岩下志麻)を始末するべく殺し屋を雇った。殺し屋紳士録を持った殺し屋のマネージャー大上(神山繁)は、“下町の殺し屋倶楽部”8人の中から一番腕の達つ殺し屋を選抜することにした。
 競技は、競馬場で一着になる騎手の帽子を撃ち落とした者が仕事を得ることになるはずだったが、たまたまその場にいたガンマニアの石田晴彦(川津祐介)が、見事に標的を当ててしまい、かくして素人の青年が殺しの依頼を請け負うことになった。
 面白くないのはプロの殺し屋たち。素人になめられてたまるかと、石田の殺害を考える。
 茉那は、かつて水田の悪事によって一家心中した家族の遺児で、復讐の為に不正を明るみに出そうとしていた。茉那に一目惚れした石田はその話を聞き、彼女を助けるために殺し屋たちに立ち向かう………。

    ◇

 開巻いきなり、8人の殺し屋が銘々の武器で、子供の頭の上のリンゴを的にして腕を競い合っている。最後に撃った平尾昌晃の弾で子供が倒れ、みんなに小突かれているなかで、倒れた子供がニヤリと笑うといった、かなりキツいブラック・ユーモアからはじまる。
 そして、タイトル。
 黒い画面にスポットライトの丸い輪が動く………007の定番プロローグのパロディかと思いきや、ボンド映画の第一作「007は殺しの番号」(ドクターノオ)の製作は62年だった。
 このポップな画と、ジャズ歌謡って感じのテーマソングがいいねぇ。作品全体が軽妙洒脱だ。

 ♪月が出たならお前を殺す 真っ暗闇ならKISS! KISS!  ドゥンドゥンドゥン~ 俺はお前の墓場だぜ 寂しがりやの墓場だぜ……♪

 耳に残るテーマソングが、劇中、ビッグバンド・ヴァージョンやスウィング・ヴァージョン、そしてロカビリーにまでアレンジされて、平尾昌晃らによって突然ミュージカル風に歌われる面白さ。
 殺し屋たちのパーティで、サングラス姿のデュークエイセスが落語の前座噺『寿限無(じゅげむ)』を織り込みながらスウィングする歌も必聴だ。その昔、童謡「山寺の和尚さん」を服部良一がスウィング・ジャズにアレンジして流行り、デュークエイセスが歌った曲がヒットしていたが、ちょうどこの映画はその前後だったんだろう。

 主人公となる川津祐介は、TVドラマ『ワイルド7』('72)の草波隊長や『ザ・ガードマン』('65~)の印象が強く、アクション・ドラマ『スパイキャッチャーJ3』('65)ではカッコいいお兄さんって憧れの存在だった。
 ヒロインは二十歳の岩下志麻。つんとスマした表情とキリっとした姿は、今と全然変わらない。
 しかし、この映画の見どころは個性的な“下町の殺し屋倶楽部”の面々だ。

 「殺し屋は殺すのが仕事。医者は直すのがショーバイ。因果だが、ふたつを混同したくない」と、いつも頭を悩ましているヒューマニストのドクター(水島弘)。
 フットボール(渡辺文雄)は「殺し屋も組合や株式組織にしなくてはいけない」と、近代化だ、合理化だと口にする大学出のインテリ。
 「殺しをはじめるとジャズが聞こえてきて、体がスウィングしちまうのサ」と、100人目の殺しを夢見るシスターボーイのセンチ(平尾昌晃)。
 戦時中の小銃を持ち「ガダルカナルの月は赤かった」と戦地を懐かしむ伍長(内田良平)。
 「人間より獣を殺すのはイヤ」と、北海道からヤギを連れて家出してきた紅一点の渚(炎加世子)は一目惚れを信じている。
 着流し姿で「邪を除くのが人の道。人の道は神の道」と説く、昔気質の任侠一筋な越後(三井弘次)。
 ヴェルレーヌの詩を口ずさむ無口な詩人(小坂一也)。そして、強面だが繊細な香港(諸角啓二郎)。

 ♪オレは下町 殺し屋だ オマエ山の手 殺し屋だ……♪と『船頭小唄』の替え歌を合唱したり、「フグ中毒、一家四人撃ち殺して自殺、交通事故、原爆被爆者の死………ずいぶん死にますネェ。こうアマチュアの殺しは流行ると、私たちのショーバイも上がったりだ」などと荒んだ社会を風刺する台詞など、8人衆の口から出る台詞はそのまま寺山修司の芝居的カッコ良さで、時代背景を考えたコミック的キャラクターは、社会に生息する人間たちをカリカチュアした面白さがある。

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