TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ロング・グッドバイ」*ロバート・アルトマン



THE LONG GOODBYE
監督:ロバート・アルトマン
脚本:リー・ブラケット
原作:レイモンド・チャンドラー
出演:エリオット・グールド、スターリング・ヘイドン、マーク・ライデル
   ニーナ・バン・パラント

☆☆☆☆★  1973年/アメリカ/111分

    ◇

 ロバート・アルトマン監督が異色のハードボイルド映画として新しいマーロウ像を創造し、エリオット・グールドが人間味あふれるマーロウ役を好演したのが、この『長いお別れ』だ。

 フィリップ・マーロウは、1939年にハードボイルドの代表的作家レイモンド・チャンドラーが生み出したロサンゼルスの探偵。トレンチコートにキャメルの煙草をふかし、どんな誘惑にも屈しない誇りをもったハンサムガイ、ってのが原作のマーロウ。
 「どうしてそんなにタフなのに、優しいの?」という問いかけに
 「タフでなければ生きてはいけない。優しくなければ生きてる資格がない。」と答えるのがマーロウ。

 この映画が製作された1973年は、アメリカン・ニューシネマの真っ只中。
 60年代の後半から70年代にかけて、アメリカン・ニューシネマという風が吹き荒れた。もちろんこれはジャーナリズムがつけた名称で、理論や形態の流儀があるものではない。
 特徴のひとつは、対ハリウッド。従来のハリウッド映画はハッピーエンドはもとより、男優も女優も二枚目と美人であると決まっていた。しかしこのニューシネマはその真逆で、社会からドロップアウトした人間たち、または反体制的な人間の心情をつづることで、当時ヴェトナム戦争によってアメリカ全体を覆った暗い影と、“正しいアメリカ”だった国に対して懐疑的になっていた世相を大いに投影して創られた作品群であった。どちらかと言えばカッコ悪い男たちが登場した映画ばかりで、アンチ・ヒーローものが多かった。そしてそれは同時に容姿だけの俳優が不要になり、より個性的で存在感が強く、演技力のある俳優が求められることになった。
 さて、その70年代にハードボイルドの代表格フィリップ・マーロウを登場させたらどうなったのか。

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 冴えない探偵である。薄汚く、だらしないマーロウだった。
 我がままな飼い猫のために、深夜の3時にキャットフードを買いにスーパーに向かうマーロウなんて見たくない、というマーロウ・ファンもいただろう。しかし、この映画が出色なのはまさにそこ。タフとか非情とかには無縁なところから始まるオープニングで、この映画は70年代を代表する映画のひとつになった。
 
 親友のテリーをある事情でメキシコへ逃がしてやるマーロウ。しかしテリーに妻殺しの容疑がかかると、テリーはメキシコで自殺をしてしまう。翌日、マーロウは行方不明の作家を探し出す依頼を受けるが、その作家がテリー夫妻と顔見知りだという……。やがて、テリーが持ち逃げした金を探しにギャングたちがマーロウの家に押し掛けてくる。

 ロサンゼルスが舞台でも、華やかなハリウッド的ムードは皆無。むしろ滅びゆくハリウッドのけだるさを描きたかったのがアルトマン監督の狙いだろう。
 ジョン・ウィリアムズのジャジーな音楽も、ハリウッドの退廃と倦怠のムードを醸し出している。
 クローズアップの多用で登場人物を執拗にカメラが追い掛けるのも、この手の映画がいかに人物描写とその周辺の環境描写が重要かということだ。

 原作にない結末はショッキングだ。そしてラスト、並木道を歩くマーロウに被せて流れる「ハリウッド万歳~」と讃える陽気な音楽が、実にシニカル。

 74年度マイ・ベスト1の映画だった。



 ギャングのボス役のマークライデルは、本業が監督。ヘンリー・フォンダ&ジェーン親娘共演で描いた『黄昏』や、ベット・ミドラーがジャニス・ジョプリンを演じた『ローズ』、同じくベット・ミドラー主演の『フォー・ザ・ボーイズ』など、数々の秀作を創りだしている。

 そのマーク・ライデルの子分として、無名時代のアーノルド・シュワルツネッガーが出ているが、いかにもマッチョバカである。

 脚本のリー・ブラケットは、このあと『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』の脚本に参加した女流作家。この『ロング・グッドバイ』以前は、『三つ数えろ』『ハタリ!』『リオ・ロボ』『リオ・ブラボー』など男の映画ばかり執筆している。


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