TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「シャッター アイランド」*マーティン・スコセッシ



SHUTTER ISLAND
監督:マーティン・スコセッシ
原作:デニス・ルヘイン
脚本:レータ・カログリディス
美術:ダンテ・フェレッティ
視覚効果:ロブ・リガト
音楽監修:ロビー・ロバートソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレー、ミシェル・ウィリアムズ、マックス・フォン・シドー

☆☆☆☆ 2010年/アメリカ/138分

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 主人公が抱えるトラウマによる幻想と現実の不安と恐怖が、原作より分かり易い視覚効果によってサスペンスが生み出され、死んだ子供たちや亡くなった妻の幻影がイメージ豊かに美しく描かれることで、より心の闇が深く沈んでいく怖さを体感できるゴシックホラー・ミステリー。
 やるせない愛の物語、哀しき傑作である。

 1954年、ボストン沖18km離れた絶海の孤島“シャッターアイランド”。精神を病んだ犯罪者を収容する病院でひとりの女性患者が消えた。連邦保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)は相棒のチャック(マーク・ラファロ)と共に、失踪事件の捜査のために島にやって来た。鍵のかかった女性の部屋には「4の法則」と記された謎のメッセージが残され、ひとりの医師までもが居なくなっている。次から次へと深まる謎。いつの間にか島に閉じ込められてしまうテディたち。一体、この島で何が起こっているのか…………。

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 ◆以下ネタバレはしないけれど、連想できる言い回しがあります。


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 原作を読んでいる者にも充分に楽しめた。真相を知りながら登場人物の表情や振る舞いを見ることで、演出や効果を堪能できるのだ。

 原作は、一応は“密室”と“暗号”トリックの謎解きの楽しさがある。
 「4の法則」はもう少し長い暗号になっていて、中盤においてテディが解いていくプロセスがあるのだが、映画では暗号の真ん中の部分を一切省いてしまい、“謎”が提起されても謎解きが行われずに、単なるメッセージになってしまっている。だから当然、観客も謎の究明には参加できない。
 ただし、その抜かれた「13の法則」の謎は実に小説的で、映画で見せられても時間的流れを止めかねないので、省略した脚本は正解である。

 傑作の理由は2つ。幻想と回想の視覚的映像の美しさと、ラストシーン。

 ひらひらと舞い落ちる灰や、バラバラに乱れ飛ぶ無数の書類や、しんしんと降り落ちる雪など、視覚描写の異様なムードは素晴らしい逸品。
 テディの脳に残る妻の姿が、麗しき灰になる儚さ。その見事なまでの美しさに感動する。

 そして、原作通りのラストシーンにオリジナルの台詞をひと言付け加えることで、人間の尊厳、孤独への憐れみと理解、そして、心の解放と贖罪の痛切さが伝わってくるもので、この台詞ひとつで原作を越えたものとして評価したい。

 白昼夢に悩まされるテディのいつも眉間に皺を寄せたディカプリオの顔には辟易するが、温厚なコーリー医長のベン・キングズレーの存在感や、ネーリング医師役の名優マックス・フォン・シドーの重厚な芝居はやっぱり見応えがある。

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 さて、2009年秋に公開予定だったこの作品、延期中に大宣伝した参加型謎解きは如何なものか。
 当たり前の話として、ミステリーにおいて「どんでん返し」とか「驚愕の結末」とか前振りすること自体がアンフェアなのだ。それなのに、一般にミステリー映画への目の肥えた時代に「あなたの脳を信じてはいけない」なんて半分ネタバレしたも同然の宣伝文句を見せられ、先入観と過大評価を持った観客にどれだけの満足が与えられたのか。
 たとえば「人間の心の闇を覗いたとき、あなたの心は揺さぶられる。どうか結末は話さないでください」くらいの惹句にしてくれないか。
 これは、愛の物語なのだよ。

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