TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ギャング」*ジャン=ピエール・メルヴィル

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LE DEUXIEME SOUFFLE
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
原作:ジョゼ・ジョバンニ
脚色:ジョゼ・ジョバンニ、ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影:マルコム・コンブ
音楽:ベルナール・ジェラール
出演:リノ・ヴァンチュラ、ポール・ムーリッス、レイモン・ペルグラン、クリスティーヌ・ファブルガ、ポール・フランクール、ピエール・ジンメール、マルセル・ボジュフィ、ミシェル・コンスタンティン

☆☆☆☆ 1966年/フランス/150分/B&W

    ◇

 “拷問・おとり捜査・10億フラン白金強奪 その迫真の描写がパリ警察を激怒させた問題作!”

 当時の惹句だ。アメリカン・ハード・ボイルドや派手なアクション映画と違い、リアルなドキュメンタリー・タッチの犯罪映画である。

 終身刑の宣告を受けて服役していたギュスター・ブミンダ(リノ・ヴァンチュラ)、通称ギュが脱獄した。ギュは暗黒街のなかで、仕事の確かな仁義に厚い老練なギャングで知られていた。
 ギュの昔の情婦マヌーシュ(クリスティーヌ・ファブルガ)と、彼女が経営するレストランのバーテンで用心棒のアルバン(ミシェル・コンスタンティン)らの力を借り、南米へ逃亡するためにマルセイユに身を潜めていた。
 その地で、マルセイユの大ボス、ポール・リッチ(レイモン・ペルグラン)らが計画する500キロのプラチナ輸送車襲撃に加わることになり、その大胆不敵な計画は寸分の狂いもなく完全な成功を収めた。
 パリから捜査の応援に来た辣腕警部ブロ(ポール・ムーリッス)は、マヌーシュやギュをよく知る人物で、残された銃弾からギュが現場に居たことを示した。
 国外脱出の日を平静に待ち暮らしていたギュに、ある日、数人のギャングたちが現れた。彼らから、今度の襲撃計画が仁義を無視した仕事だと言われ、釈明のためにポールの名前を口にしたギュだったが、実は彼らは警察の人間たちで、ギュを逮捕したうえ、彼が仲間を売ったと新聞発表をする。マルセイユ警察のファルディアーノ警視(ポール・フランクール)の卑劣なやり方に激怒したギュは捨て身の覚悟で脱走をし、汚名をそそぐために野獣と化し非情な復讐をはじめる。

    ◇

 1963年の『いぬ』でジャン=ピエール・メルヴィル監督の作品が日本で初めて公開されたのだが、メルヴィル監督の名前が有名になったのは1968年公開のアラン・ドロン主演の『サムライ』だ。この『ギャング』が公開された1967年当時は、まだ一般的にジャン=ピエール・メルヴィルの名前は日本では知られていなかったと思う。「映画の友」を愛読していた映画ファンくらいにしか認知されていなかったのではないか。
 この作品を観たのは中学生の時だ。「1967年7月16日中日シネラマにて鑑賞」と記録がある。トレンチコート姿のリノ・ヴァンチュラが2丁の拳銃を構えるラストシーンで、瞬く間にヴァンチュラ・ファンになった記念的作品だ。

 自分が密告者と疑われたことに耐えられないギュは、己の名誉を汚した男を絶対に許さない。男が守り抜かねばならないものは命ではなく名誉だと、自分の命を賭してまで名誉を重んずるギュの美学が伝わってくる。
 ラスト、撃たれたギュを看取るブロ警部。ギュが最後にマヌーシュの名を呼んだことを彼女には伝えない。ポケットから出した折れた煙草。ギュの汚名を注ぐ手帳を新聞記者の前に落とし、去っていくブロ警部。
 これも男の美学のひとつである。

 原作者は、本物のギャングだったジョゼ・ジョバンニ。
 小説家・脚本家・映画監督の肩書きを持つ彼は、レジスタンス活動からギャングになり、死刑を宣告されたが恩赦を受け出所。30代半ばで執筆した体験小説『穴』がジャック・ベッケル監督により1958年に映画化され注目。そして『冒険者たち』『暗黒街のふたり』『ラ・スクムーン』『Ho!』等々、数多くの傑作を生み出したハードボイルド作家だ。2004年に80歳でその生涯を閉じた。

 10億フランのプラチナ輸送車を白昼襲撃するシーンや、警察がギャングの仲間に化ける卑劣な捜査や、拷問などのリアルな描写に本国の映倫や警察からクレームがつき、大幅にカットされての上映だったという。実際、日本公開は120分の短縮版だった。
 刑事役に本物の前科あるギャングが出演していたと云うのも話題になった。
 
 主演のリノ・ヴァンチュラは元ボクサー。ポール・ムーリッスとポール・フランクールは元シャンソン歌手。パリの下町の匂いと感傷を、リアルに感じさせる俳優たちが素晴らしい。
 情婦役のクリスティーヌ・ファブルガは、ギュを最後に見送るシーンでのまったく台詞のない表情だけの演技に、その存在感を示していた。

 原題は直訳すると《第二の息吹き》。これはギャング同士の俗語で「投獄された者が脱獄して、もう一度大きな仕事をする」ことを意味している。 


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