TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「いぬ」*ジャン=ピエール・メルヴィル



LE DOULOS
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
原作:ピエール・ルズー
脚色:ジャン=ピエール・メルヴィル
音楽:ポール・ミスラキ
出演:ジャン・ポール・ベルモンド、セルジュ・レジアニ、ジャン・ドザイ、ミシェル・ピッコリ、モニーク・エネシー

☆☆☆☆ 1963年/フランス/109分/B&W

    ◇

 “男の友情と愛と裏切り”
 フレンチ・フィルム・ノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルが創り出す作品には、一貫してこのテーマが流れている。アラン・ドロンの『サムライ』('67)しかり、リノ・ヴァンチュラの『ギャング』('66)しかり、クールでストイックな男たちが観る者をシビレさせてくれるのがメルヴィルの映画である。

 4年間の服役中に妻を殺されたモーリス(セルジュ・レジアニ)は、宝石の故買屋を裏切り者と断定し射殺。奪った宝石類を近くの空き地に埋めた。
 翌日モーリスは親友のシリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)に金庫破りの道具を依頼し、情婦のテレーズ(モニーク・エネシー)に下調べさせておいた仕事に取りかかるが、押し入った先で警察に包囲され仲間の一人と刑事が死に、彼も一撃を受ける。窮地を逃れたモーリスだったが、バーでテレーズが自動車事故で死んだことを知り、その場で警察に参考人として連行されてしまう。モーリスは、密告者の噂があったシリアンを疑わざる得なかった。
 一方シリアンは、モーリスが空き地に埋めた宝石類を掘り出し、モーリスに殺された男の仲間ヌテッチオ(ミシェル・ピッコリ)のもとを訪れていた………。

    ◇

 原題の“Le Doulos”とは俗語で“帽子”のこと。ただし警察や暗黒街の隠語として使用すると、情報を売る“いぬ”すなわち裏切り者のことを指す。

 密告者が誰なのか、そしてなぜ? 二転三転する展開で悲劇的な終幕を迎えるミステリーは、最低限の台詞と時間軸を戻す状況説明だけに初見では少し理解しにくいところがあるが、実は単純なストーリーだ。
 まずは、フィルム・ノワールとしてのスタイルとムードを楽しめばいい。

 “選ばねばならぬ 死ぬか 嘘をつくかのどちらかを……”

 物語の前半はセルジュ・レジアニを主人公にして進行する。
 黙々と高架下を歩くセルジュ・レジアニを、ワンカットで移動撮影するスタイリッシュなオープニングにまず魅了される。控えめに被さる甘美なヴィブラフォンの音色と、その調べに導かれて奏でられるジャジーな音楽も素晴らしい。
 モノクロ映画ならではの光と影のコントラストも絶妙。天井からぶら下がる電気スタンドによるゆれる人影や、孤独感が滲む街灯の光など、暗黒街の非情な世界がダークトーンでしっかりと映し取られている。

 レジアニが逮捕されてからはジャン・ポール・ベルモンドが主人公となり、謎の行動を繰り広げていくのだが、トレンチコートとソフト帽姿のニヒルなジャン・ポール・ベルモンドは何とも格好いい。
 ベルモンドがレジアニの居場所を吐かせるために無言で女を殴るシーンは、アメリカン・ハードボイルドを意識しているのだろう。ただ、殴られる女が変に騒がないところがクールな演出。

 真相を告げられたレジアニに仲間が云う。 
「奴は感情を表に出さない男さ。奴の友情にはヤクザも刑事も関係ない。サリニャリ(死んだ刑事)とお前(モーリス)だけが、奴の友さ」
 そして、ベルモンドが女に云うラストの台詞
 「今夜は、そっちに行けない」

 男の友情と美学はかくありき傑作である。

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